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フランスの旅(13)パリで起きた最悪のミス

フランスの夜明けは遅く、朝7時半でまだ外は真っ暗。でも一応外に出て、そんな時間のモン・サン・ミッシェルも眺めてきた。運が良いと幻想的な光景を見られるけど、今日は普通だった。

夜明け前のモン・サン・ミッシェル

ホテルで簡単な朝食を取り、10時発のレンヌ行きのバスに乗るため、チェックアウトしてバス停へ向かう。少しだけ不安だったのは、事前にネットで切符を買えなかったこと。

サイトから購入できるはずなのだが、不正利用防止のためクレジットカードの本人認証が厳しくなっており、SMSに届くパスワードを打たないと決済が降りない仕組みになっている。しかし、ぼくのスマホが格安SIMだからなのか、原因はよくわからないけど海外ではSMSが届かない。そのためフランス滞在中はネットで何かを購入することができず、非常に不便だった。

ただしフランス国鉄の切符は、スマホでApple Payが使えたため、幸いそれで買えた。また、クレジットカードもスーパーや美術館などでは普通に使える。ネットで決済する場合は注意してほしい。ぼくはエポスカード(VISA)も楽天カード(Master)もダメだった。

そんなわけで、ドライバーから直接切符を買ったのだけど、カードは不可で、現金のみだった。フランスでは基本的にカードのみで事足りるけど、いざというときのために少し現金を持っておく必要がある。ひとまず無事乗れて良かった。

※あとで教えてもらったのだが、海外に行く際は、事前にカード会社に連絡しておくとネット決済ができるようになるらしい。

バスでレンヌへ

バスは1時間10分でレンヌ駅に到着。

女性のドライバーは、「まもなく到着します」とも「レンヌに到着しました」とも「お忘れ物のないようにお降りください」とも一言も発することなく、バスを停車させるとともに、乗客そっちのけでダッシュでどこかへ走り去っていった。乗客たちは降りるだけだからいいのだけど、ぼくは呆気に取られながらその様子を見ていた。バスを降りて、気になってドライバーが去っていった方を見に行ったら、バスから100メートルほど離れたところで、知人と思われる人物に何かプレゼントを渡して談笑していた。やはり日本とは、働く人の感覚が全然違う、と思った。

そして、到着直前に信号待ちのたびにドライバーがメッセンジャーで誰かとやりとりしていたのは、これだったのかと思った。「そろそろ着くわよ」って打ってたんだろうな。乗客に言ってくれよ。

何はともあれ、レンヌだ。ここはノルマンディー地方ではなく、ブルターニュ地方の中心都市。帰りのパリ行きの電車は16時35分発だから、5時間ほど観光できる。

近代的なレンヌ駅舎

スーツケースが邪魔なので、どこかに預けたかった。レンヌ駅でコインロッカーを探すも、「駅にはない」と言われてしまう。こんな大きな駅なのに、ロッカーがないなんて。もしかしたらテロ対策なのだろうか。安全かもしれないが不便である。

駅の人は、ホテルの「ibis」なら預かってくれるかも、と言っていた。宿泊者でもないのにスーツケースを預かってくれるなんてことがあるだろうか?と半信半疑だったが、望みはそれしかないので駅の裏手にあるibisに向かった。

「宿泊はしないんですけど、ここで荷物を預かっていただくことはできますか?」

「この『Nannybag』のサイトにアクセスして、予約すれば預けられるわよ。1個あたり6ユーロ」

なるほど、そういう仕組みか。日本にも存在する、荷物預かりのシェアリングエコノミーだ。スマホで予約して、無事預けることができた。

1kmほど離れている街の中心部まで歩く。「Boulangerie」はパン屋さんのことだけど、その前に決まって「Artisans」という言葉がつく。以前ティエリさんに意味を尋ねたところ、「工場とかではなく、ここで作ってるということだよ」と言われた。

パン屋さんには大抵「Artisans」の文字がある

旧証券取引所の建物が立派だった。

旧証券取引所

その近くのスタバには、窓ガラスにいくつもヒビが入っていた。ちょっと物騒だ。

窓にたくさんのヒビがあるスタバ

さらに進むと、市役所と劇場が向かい合わせに建っていた。

市役所
劇場

そしてレンヌにもユニクロがあった。

ユニクロ

行列のできるラーメン屋さんがあった。その名も「RAMEN YA」。日本よりはもちろん高いけど、パリよりは安価(多分)。

人気のラーメン屋

醤油ラーメンが約1600円。メニュー表にある「JIGOKU」が気になる。辛いのかな。でも油そばや白坦々麺まであり、良さげなお店。「AJITAMAGO」や「KAEDAMA」の文字も。

日本人がやっているのだろうか。割と本格的

お昼は、どうしても山盛りのムール貝が食べたかったので、提供しているお店を探し求めた。そして「L’Abri du Marché」に辿り着いた。なんとムール貝のメニューだけで14種類もあり、期待できた。そして実際に出てきたムール貝の白ワイン蒸しは、期待値を上回った。

念願の山盛りムール貝

なんという量だろう。つけ合わせのポテトと自家製のディップも抜群においしかった。今回の旅でいちばん感動した料理だった。値段も12.9ユーロと安い。

食後、近くの大聖堂を見学。これも黄金に輝く素晴らしい内部空間だった。丸天井が見事。

レンヌ大聖堂
円天井が美しい

かわいらしい街並みを満喫し、スタバで少し作業してから駅へ向かう。

紅葉が綺麗
街はクリスマスムード
木骨組みの家々がかわいらしい

スーツケースを受け取り、高速鉄道に乗車。

高速鉄道でパリへ戻る

フランスの長距離鉄道は、同じ日の同じルートでも、乗る電車によって料金がかなり変わるので注意が必要。ぼくが乗った電車はこの日でいちばん安い51ユーロ(8910円)だったけど、その前や後の電車は88ユーロ(14256円)だった。もし東京から京都への新幹線が、「10時発だと2万円で、15時発だと1万2000円」みたいな感じだったらマジかよとなるけど、それがフランスでは普通に起こっている。

レンヌからパリへは、わずか1時間半で到着した。これにて、5泊6日のノルマンディー地方を巡る旅(あるいは印象派を巡る旅)は無事終了。パリに戻ってこられてひと安心。

19時前、パリ・モンパルナス駅からNation駅へ移動し、最後に2泊する「The People Paris Nation」に到着。しかしここで、またもやハプニングが起こってしまうのだった。

チェックインしようとしたら、「予約が入ってないわよ」と言われてしまう。

そんなはずはない。Agodaで予約したはずだ。「もしやまたホテルを間違えてしまったか?」と一瞬焦ってアプリを開くと、やっぱりこのホテルで正しかった。

「ちゃんと予約してるよ、ほら」と画面を見せた。すると、

「・・・あなたそれ、2024年で予約してるわよ

ガーン‼ 😱😱😱

動揺していると、こういうことに慣れているのか、スタッフは冷静だった。

「Agodaのサイトから、予約した日程を変更してみて。そしたら泊まれるよ」

「わかった。やってみる」

しかし希望を持ったのも束の間、ぼくが予約したプランは、「キャンセルや日程変更は不可」となっていたのだ。終わった。。。2泊分、既に支払い済みなのに、もう一度支払わなくてはいけないのか・・・。

「ダメでした。日程変更できませんでした」

「じゃあ、Agodaに電話で問い合わせてみて。彼らがOKだったら、そのままうちに泊まれるから」

でも、日程変更は不可となっているから、AgodaはNOと言うだろうなとぼくは諦め半分だった。そもそも、ぼくのスマホは電話が使えない。

けど、「ホテルの電話を使っていいよ」と言ってくれたので、ダメもとで電話してみることに。日本語のカスタマーサポートの番号を見つけ、電話をかけてみた。

しかし、サポートの営業時間は日本時間の24時まで。時差の関係で既に営業は終わっていた。

「現在、営業時間外です」のアナウンスに、「ああ、本当に終わった」と思った。

「英語でのご案内をご希望の方は、『1』を、押してください」

(ん? 英語でのご案内?)

一瞬、迷った。相手の英語を聞き取れるだろうか、伝えたいことを表情やボディランゲージなしで言えるだろうか、という不安に襲われたからだ。

でも覚悟を決めて、1を押した。

するとインド人だかわからないが、ひどく訛りのある英語が聞こえてきた。ぼくは片言の英語でなんとか状況を伝えた。

「間違えて来年の日付で2泊予約してしまったんですが、本当は今日から2泊したいんです。変更できませんか?」

「あなたの要望はわかりました。このあと、ホテルのスタッフと話します」と言っているのは理解できたが、この電話で直接スタッフに繋げばいいのか、一旦切る必要があるのか、それが聞き取れずわからなかった。

ミスったら怖いので、「Agodaの担当者があなたと話したがっている」と言って、ホテルのスタッフに受話器を渡した。

そしたら何やら会話が始まって、一言二言で電話を切った。

「彼らは確認してから、折り返しホテルに電話をかけてくるみたいだ。6階にラウンジがあるから、君はそこで休んで、20分後にまた来て」

なるほど、一旦切る必要があったのか、と思いながら、ぼくはエレベーターのボタンを押した。

やがてさっきのスタッフがぼくのところに来てくれた。

「日程の変更ができた。君は追加料金なしでここに泊まれる」

「Oh…I’m so sorry. Thank you so much.」

「いいんだよ。よくあることさ」

本当に良かった。ぼくの情けないミスだったが、もはやすべてのハプニングが成長のために与えられた機会だと感じるようになってきた。英語での電話交渉という貴重な経験ができた。

それにしても、「お国柄+ぼくの落ち度」で、毎日何かしらハプニングが起きてしまう。自分がこんなにもドジだったとは、とちょっとショックを受けている。しかし文章のネタには困らないから、これも才能と思いたい。

宿の屋上テラスからエッフェル塔が見えた

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