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大阪〜博多600km徒歩の旅(13)広島県三原市〜東広島市

大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第13ステージ
広島県三原市〜広島県東広島市(30km)

旅をしているとき、普段よりも眠りが深くなっていると感じる。睡眠時間は短くなりがちだが、質の高い眠りになりやすい。何よりも嬉しいのは、ベッドに入ると、すぐ眠りにつけることだ。

ポジティブな疲労によって一瞬で眠れることは、幸福度と関係しているように思われる。ぼくは悩んでいるときや精神的に辛いときなど、いろいろ考えてしまって不眠症になりがちだから。

もちろん旅をしている最中も、思い悩んだりすることがまったくないわけではない。「あ〜、ちょっと失礼な言い方をしてしまったな」とか「こうすれば良かったな」とか、些細なことがいつまでも頭にチラつくことはある。けれど、身体が疲れているから、悩む余裕もなく眠ってしまう。そして起きたときには忘れていて、「よし、今日も一日頑張るぞ」という気持ちになっている。

現代って、身体が疲れづらくなった社会かもしれない。仕事はパソコンでほとんど完結するし、オフィスにさえ行かなくて良いケースも増えた。意識しないと、ほとんど身体を動かさなくなる。そのため、頭や心の疲れに偏りがちになる。ぼくはあえて身体を疲れさせた方が、バランスが取れて意外と頭や心も休まる気がする。歩く旅をしながら、そんなことを実感する。

*****

8時に宿の朝食を取った。いつもは素泊まりにして、コンビニでおにぎりを1つか2つ食べるだけ、ということが多いのだけど、今朝はエネルギーをつけたかった。今日頑張れば、広島市が射程圏内(35km以内)に入る。大事な一日だった。

幸運なことに、一昨日まで90%あった今日の降水確率が、ほぼ0%に変わっていた。青空が見える。これで随分楽になった。雨に濡れながら30km歩くことを覚悟していたから。

9時に本郷駅を出発し、東広島市の西条を目指す。

今日も基本は国道2号線沿いである。最初はゆるやかに坂を登っていった。

5km(1時間)ほど歩いたところで肩の痛みが辛くなり、耐えられなくなってきたところで5分ほど小休憩。リュックを降ろして、水を飲み、肩を動かす。それで少し痛みは緩和する。

峠を越えると、竹原市に入った。

このあたりで、ちょっとゾッとすることがあった。まともな歩道のない国道2号線の峠道を下っていると、パトカーが数台と、5,6人の警察官がいた。「何があったんだろう?」と周りを見渡すと、白い車が、脇の荒れ地で大破していた。曲がり切れずに突っ込んでしまったようだ。幸いドライバーは無事だった。

でも、この道を通るのがほんの数十分ズレていたら、巻き込まれていたかもしれない。そう思うと怖い。兵庫県の西宮神社で買った交通安全のお守りが効いたかな。

峠を下ったところのローソンで休憩し、さらに4km歩いて、「ココリコ」というお店に到着した。ここでランチを取る。

お店に入ると女性が、「あ、昨日お電話いただいた方ですか? 歩かれてきたんですよね」とすぐに気付いてくれた。

今日のルートはかなりの田舎道で、ちょうどお昼に着くあたりのエリアに、飲食店がほとんどなかった。そんななかで、唯一このココリコが、「スタート地点から15km先」というベストな位置にあった。

ただ、Google Mapsによれば、昼の営業時間が「13時半まで」となっていたから、ぼくは念のため昨日の夜、お店に電話をかけて、「お昼のラストオーダーは何時ですか?」と尋ねた。なんだか添乗員時代を思い出す。

しかし確認しておかないと怖い。というのも、歩くスピード次第では13時過ぎの到着になる可能性があったからだ。

もし13時過ぎに尋ねて、「ごめんなさい! 13時がラストオーダーなので今日はもう終わりなんです」と言われたら、心底ショックを受けるだろう。もしもこのお店を逃すと、数キロ手前か、数キロ先のお店へ行くしなかい。空腹を我慢しながら。おまけにこの一帯ではココリコがいちばん評価の高い人気店だったから、なおさら逃したくなかった。

「お昼のラストオーダーは何時ですか?」

「一応13時半なんです〜」

(あれ?)

と思った。どうして13時半までの営業なのに、ラストオーダーも13時半なのだろう?

疑問に感じたが、とにかく13時半までに入ればいいとわかったので、細かいことは聞かなかった。

そして今日、13時到着を目指して歩き、12時55分に着いた。

店の看板を見ると、「ランチは15時まで」と書いてあった。また「あれ? 昨日は13時半までって・・・」と思ったが、頭のなかで「そういうことか」とつながった。

調理する方は別にひとりいるようだったが、注文、配膳、会計は彼女がひとりでやっていて、大変そうだった。15時でお店を閉めるためにも、13時半をラストオーダーにする必要があったのだろう。そして、Google Mapsの営業時間に「15時まで」と書いてしまうと、ギリギリにやってくるお客さんも出てくるから、あえてラストオーダーの時間を記載しているのだろう。

「お待たせしました〜」

定番メニューの「ココリコランチ」はボリュームたっぷりでおいしかった。

そして14時過ぎに店を出て、残りの15kmを歩く。

途中で、素晴らしい出来事があった。15時半頃、コンビニの駐車場で、なんと京都の南山栄成さんご夫妻と会えたのだ。

前回の東海道の徒歩の旅で、京都で泊めてくださったのが南山さんだった。友人のなんちゃんが、「京都では俺の実家に泊まっていいよ。親父がおもしろがってる」と言ってくれたのがきっかけだった。

その2017年の出会いがきっかけで、南山さんはいつもぼくのチャレンジを応援してくださるようになった。そして今後のことで悩んでいて、あまり元気のなかった昨年2月に、「頑張れや」と強く励ましてくれて、その後京都での講演を依頼してくださったり、八ヶ岳の登山に誘ってくれたりした。少しずつ気持ちが上向きになってきたことで、ぼくは思い切って旅と発信の活動に踏み切ることができた。

広島観光も兼ねてとのことだが、京都から車で、応援に駆けつけてくださった。さらに今回の旅のために追加の支援金まで手渡してくださった。それだけではない。南山さんは株式会社南山建設の会長を務められていて、先日開かれた会社関係の新年会で、協力会社の方々にぼくの活動を紹介し、支援を呼びかけてくださったそうなのだ。そして数社からの支援を取り付けてくださった。本当に感謝です。

今日はここで一瞬ご挨拶したのみで別れたけど、明日、一緒に広島市を目指して歩けることになった。南山さんは100kmウルトラマラソンに何十回と出場しているランナーでもあり、ぼくよりも遥かに健脚な方だ。

ラスト8kmを歩き、17時に無事ゴールの西条駅に到着。

駅前通りの公園は子どもたちで溢れ、活気のある街だった。

駅構内の観光案内所に入り、暇そうにしていたおじさんからいろいろと話を聞いた。ここがかつて「四日市」という名の西国街道の宿場町だったこと、酒造りに適した気候と地下水の恩恵とを受けて江戸時代から酒蔵があったこと(宿場町なので需要も高かった)、さらに明治27年(1894年)の山陽鉄道の開通がきっかけで、販路が拡大することで酒造業が盛んになり、全国有数の銘譲地となったことなど。

西条は、京都の伏見、兵庫の灘と並び「日本三大酒どころ」に数えられているそうだ。駅前の「酒蔵通り」には、賀茂鶴酒造や亀齢酒造をはじめ歴史ある酒蔵が並んでいて壮観だった。

酒蔵からはたくさんの煙突が立っていて、それも独特の景観。最初「キレイ」と書かれた煙突が訳わからなくて、「何が綺麗なんだ?」と思っていたが、これは亀齢(きれい)酒造の煙突だったのだ。なるほど。

ポストも酒蔵バージョンでユニーク。正面のポンタみたいなたぬきは、東広島市の観光マスコット「のん太」くん。

駅前のルートインにチェックインし、夕食は「くろんぼ屋」にて。デミグラスソースのかかったビーフカツがおいしくて、ごはんが進んだ。

明日はいよいよ、広島市に到着する。

<今日の費用>
ドリンク 105円
プロテイン 221円
ランチ 1300円
夕食 1400円
ホテル 7040円

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引き続き、旅と発信の支援金を募っています。
よろしければ、応援よろしくお願いいたします!

昨日は南山栄成さん、株式会社松岡工務店さん、株式会社荻原工務店さん、桜会ふみ子さんからご支援いただきました!
これまでに10企業、109名の皆さまからご支援いただき、
次の目標金額まで、残り379,234円(現在79%)です。
「大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅(1月)」と「フィンランドの旅(2月)」に充てさせていただきます!

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