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フィンランドの旅(1)

2月20日〜28日でフィンランドを訪れた。その旅の様子を伝えたい。

まず初日、羽田空港からフィンエアー(フィンランド航空)の深夜便でヘルシンキへと向かった。以前は約9時間で着いたと記憶しているが、ウクライナ問題以降、ロシア上空を通過できなくなったため、北極ルートで13〜14時間もかかるようになってしまった。大きな痛手だ。

その代わり、ポジティブな要素もある。アラスカや北極の、白夜のような光景が見られたことだ。とても美しかった。北極海は凍っていて、ところどころにヒビが入っていた。大きな氷のブロックも見えた。

北極海上空

機内で感銘を受けたのは、食事の容器も、ナイフもフォークも、食器類を入れる袋も、すべて紙か木でできていたこと。プラスチックはひとつもない。サステナブルへの本気度が伺えた。また、ナプキンはマリメッコだった。

機内では『かもめ食堂』の小説版を読み、映画『最高の人生の見つけ方』を観た。その後に数時間寝ていたら、意外と早くヘルシンキに着いた。短く感じたのは、基本的に暗かったからだろうか。サービスが過剰ではなく、休息をなるべく妨げない感じがして心地良かった。客室乗務員の自然体な働き方にもまたサステナブルを感じた。

ヘルシンキはまだ夜中の3時だった。気温は-1℃で、思ったほど寒くはない。

これまで、乗り継ぎでは何度も訪れたヘルシンキだったけど、街には一度も降り立ったことがなかった。

海外旅行情報誌の編集者だった頃から、ヘルシンキは憧れの街のひとつだった。目抜き通りのエスプラナーディ通りを歩いてみたかった。マリメッコをはじめ、アラビアやイッタラなど北欧デザインの代表格とも言える人気ブランドで有名な国。そして20世紀を代表する建築家アルヴァ・アアルトを輩出した国でもある。

一般にベストシーズンは夏だが、冬の国を冬に訪れるのもまた良いだろう。

空港に着いて、まず現地のネットに接続する。フランスの旅に引き続き、今回もeSIMのUbigiを利用。フィンランドのみであれば3GB(15日間有効)で900円と安い。しかし、1日だけフェリーでエストニアへも行く予定だったので、ヨーロッパ全域で使用できる1500円のプランにした。それでも安い。

4時38分の600番バス(始発)で、ヘルシンキ中央駅へ向かうことにした。チケットはHSLというアプリで購入した。外に券売機もあるが、バスの中ではチケットを購入できないので要注意。アプリが便利だ。

公共交通機関は、バス、トラム、メトロで共通。同じゾーンの一定時間内であれば何に乗り換えても料金は変わらない。一回限りのシングルチケットと、24時間有効のデイチケットがある。また、たとえば3日間毎日トラムやバスを利用するなら、デイチケットを日ごとに買うよりも、最初に3日分のデイチケットを買った方が圧倒的に安くなる。ある程度観光プランを立てておくと、お得に切符を買えるだろう。今回は最初にABCゾーンのデイチケットを2日分で購入した。16.5ユーロだった。

バスは35分でヘルシンキ中央駅に着いた。まだ5時半前で外は暗い。少し歩いたところの乗り場から、トラムの4番線で宿へ向かった。

念のため、停留所にいた男性に「4番線の乗り場はここで合っていますか?」と尋ねると、「合ってるよ。ぼくもその駅の近くで降りるから一緒に行こう」と言ってくれた。彼の名はコンスタンティン。「ぼくの彼女が以前、交換留学で日本へ行ったことがあるんだ。ぼくもいつか行きたいよ」と話していた。

コンスタンティンくん

ぼくは「ユーロホステル」というヘルシンキ屈指の安宿に泊まるのだが、彼はそのすぐ近くの高級ホテルで働いているそうだ。朝食の準備係のため、こんなに朝早くから向かうようだ。

宿に荷物を預け、小休憩してから観光した。

ウスペンスキー寺院、白亜のヘルシンキ大聖堂と巡り、エスプラナーディ通りを中央駅方面に歩いた。

ウスペンスキー寺院
ヘルシンキ大聖堂

フィンランドの代表的なコーヒーチェーン「ロバーツコーヒー」や、アアルトが設計したアカデミア書店(入口の取っ手が独特だった)、その2階にあるカフェ・アアルトなどを覗いた。

アカデミア書店。2階の奥がカフェ・アアルト
アアルト設計の手すりがユニーク

2017年1月、ぼくは東京から京都まで東海道を徒歩で旅した。その際、京都でお世話になった木工作家の南山喜揮さんから、ヘルシンキ郊外に住むアスカさんをご紹介いただいた。

そして滞在初日、12時にヘルシンキ中央図書館「Oodi(オーディ)」でアスカさんとお会いし、1階のレストランでランチをした。

アスカさん

ここのレストランはビュッフェ形式でとても良かった。野菜が豊富で嬉しい。13.5ユーロ。食後にコーヒーや紅茶も飲めるし、この値段は量を考えればかなり安い方。コーヒーもおいしかった。フランスの旅ではおいしいコーヒーになかなか巡り会えず苦労したから、当たり前のようにドリップコーヒー(こちらではフィルターコーヒーと呼ぶ)を飲めるのはいいなあ。

中央図書館でのランチ

食後、アスカさんに館内を案内していただいた。この図書館は、2019年に国際図書館連盟が選ぶ「Public Library of the Year(公共図書館オブ・ザ・イヤー)」を獲得している。つまり「世界最高の図書館」なのだ。

ヘルシンキ中央図書館(Oodi)の外観

3階の端には子どもが遊ぶエリアがあり、とても贅沢な空間だった。傾斜のある建築がユニーク。

くつろげる図書館

2階には様々なスペースが用意されていた。まず驚いたのは、「ゲーム部屋」があったこと。プレステ5やスイッチなど、最新のゲームがたくさん用意されているようだった。

家庭の経済状況に依らず、誰もが等しくゲームを楽しめる社会なのである。その近くにはギターをはじめ様々な楽器があり、これらを借りて防音スタジオで演奏することもできる。

大小様々なサイズのミーティングルーム、キッチンのある部屋など、いろいろなタイプの部屋が市民に開放されていた。予約して無料で使える。

また、ミシンや3Dプリンタなども、無料もしくはかなり安く伝える。この公共図書館だけで、かなりのことがお金をかけずにできてしまう。

3Dプリンタ

トイレはジェンダーフリーになっていて、男女で分かれていなかった。

いろいろと衝撃を受けた。ヘルシンキへ行ったらぜひ訪ねてほしいスポットである。

その後、少し歩いて「カンピ礼拝堂」へ行った。市街地に、突如現れる不思議な形の礼拝堂。木で作られた内部は素晴らしく、厳粛で静かな空間だった.祈りの場にふさわしい。こんな繁華街なのに、突然無音になるなんて不思議だ。

カンピ礼拝堂

カンピセンターの4階にある無印良品は、ヨーロッパ最大の売場面積と品揃えを誇っていた。

アスカさんとはここでお別れ。たくさんのことを教えていただきありがとうございました!

カンピセンターでアスカさんとバトンタッチしてお会いしたのが、プロサッカー選手の田中亜土夢(あとむ)さん。アスカさんにご紹介いただき、幸運にも所属チームの本拠地スタジアムや有名なサウナをご案内していただけることになった。

プロサッカー選手の田中亜土夢さん

ぼくと同い年の亜土夢さんは、Jリーグ時代はアルビレックス新潟やセレッソ大阪でご活躍され、現在はフィンランド1部リーグの「HJKヘルシンキ」でプレーされている。フィンランドは今年で累計8シーズン目になる。

HJKは国内では最多優勝を誇る名門クラブで、ヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)など、欧州のカップ戦でも戦っている。昨年は長谷部誠選手の所属するフランクフルトととも対戦したそうだ。

この日はまず、本拠地スタジアム「ボルト・アレーナ」の、関係者しか入れないエリアを見学させていただけた。ロッカールーム(ホーム用&アウェイ用)、シャワールームに併設されたサウナ、フィットネスエリア、選手入場口から入るスタジアムなど、貴重なものをたくさん見られた。

ロッカールーム
ロウリュのできる立派なサウナ

なんとこのスタジアム内には、全部で4カ所のサウナがあった。さすがフィンランドだ。

ピッチでは除雪作業が行われ、これもフィンランドらしい光景だと思った。冬の間は室内練習場を多く利用するらしい。

2階にはVIP席があり、サウナに入りながら試合観戦できる場所があった。

サウナ付きのVIP席

スタジアム見学を満喫し、今度は徒歩とトラムで移動し、「コティハルユ・サウナ」へ向かった。

実は亜土夢さんは、大のサウナ好きでも知られている。以前10番だった背番号を、37番(サウナだから)にしたほどである。冗談ではなく、本当に。

今ではサウナは、彼のコンディション調整に欠かせないものになっているという。

また亜土夢さんは、サウナの国フィンランドの魅力を伝えるウェブメディア「MOI SAUNA」を立ち上げたほか、エストニアで誕生したサウナ企業「totonoü」のアスリートサウナアンバサダーも務めるなど、サッカー以外でも精力的に活動されている。なんと水墨画や油絵の展覧会も行っているそうだ。多才過ぎる。

訪れた「コティハルユ・サウナ」は、1928年開業でヘルシンキ最古の公衆サウナ。日本では味わえないサウナ室の空間と雰囲気、人々の談笑と温かさ、薪ストーブの熱波、白樺の香り(本当に素晴らしい!)、店の外の通りに出て、タオル1枚巻いての外気浴。すべてが最高だった!滞在初日にして「フィンランドで本場のサウナに入る」という念願が叶った。

コティハルユ・サウナ

かなりディープな場所なのでひとりではちょっと行く勇気がなかったが、亜土夢さんが案内してくださったおかげで満喫することができた。サウナ内でもいろんな解説をしてくださり、忘れられないサウナ体験になった。

外気浴にトライ

さらに夜は、亜土夢さんのご友人たちと夕食を共にすることができた。画家の川地さん&エリナさん、前田さんファミリーと楽しい時間を過ごせた。

亜土夢さんはじめ、お世話になった皆さま、本当にありがとうございました!

お世話になった皆さまと

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