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大阪〜博多600km徒歩の旅(6)岡山県備前市〜岡山市

大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第6ステージ
岡山県備前市〜岡山県岡山市(28km)

朝9時過ぎ、相生の民宿を出て、相生駅から赤穂線に乗った。

昨日のゴール地である伊部駅へ戻り、9時45分、6日目の徒歩の旅がスタートした。駅近くのローソンに立ち寄り、おにぎりを2つ食べながら歩く。風が冷たく、手が痛かった。

食べたらすぐに手袋をし、そしてオーディブルを聴くことにした。

2日前に、村上春樹『職業としての小説家』を聴き終え、昨日は中国のSF作家・劉慈欣(リュウ・ジキン)の『超新星紀元』という作品を1〜2時間聴いていた。劉慈欣は、ぼくの好きな作家である。なんと言っても彼の書いた『三体』は、ぼくの人生でいちばんおもしろかった小説とも言える。だから彼の書くものはなんであれ、信頼して読める(聴ける)。

この『超新星紀元』も、ユニークなテーマで、続きに期待感を持てる内容だった。しかしどうしても、歩きながらふと別のことを考えてしまう瞬間があるため、ときどき展開が飛んでしまう。だから続きは、今度紙の本で読みたい。

小説に関しては、一度読んだことのある作品をオーディブルで聴き直すのが良い楽しみ方かもしれない。ぼくにとっては。まだ使い始めて一週間なので、いろいろ聴いて試行錯誤を繰り返してみたい。いずれにせよ、読書体験が変わるすごいサービスだと思う。

それで今日は、まず午前中の2時間、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』を聴いていた。この作品は本でも二度読んだ。彼自身の走る習慣をテーマに据えながら、作家人生を振り返る回想録のような作品になっている。ぼくの大好きなエッセイ集であり、強い影響を受けた本でもある。

村上春樹は、70代に入った現在はどうなのか知らないけど、少なくともこの本を書いた当時までは、20年以上も継続的にランニングをしている人だった。彼の、「走って、文章を書く」というシンプルな生活に憧れて、ぼくは会社員時代、長期休暇で沖縄やハワイに滞在し、朝ランニングをして、カフェで文章を書くという擬似体験をしてみた。その時間は最高の記憶として今も残っていて、「ぼくは会社を辞めて、こういう生活を送りたい」「フリーランスになりたい」という気持ちを後押しすることになった。

一級河川の吉井川を渡り、「一日市」というかつての西国街道の宿場を通る。200年前はもう少し賑わっていたかもしれない。でも今はひっそりと佇む集落のようだった。

途中に「御休小学校」という小学校を見つけて、「まさか『おやすみ小学校』じゃないよな?」と思ってしまった。調べたら「みやす小学校」だった。この辺りの地名の読み方は結構難しいものが多い。その先に「上道駅」というJRの駅があり、その読み方は「じょうどう」ではなく「じょうとう」だった。

12時頃、約10kmを歩いて、目指していた「魚しん」というお店に到着。人気店のようで少し並んでいたが、10分くらい待って入れた。

名物の「魚しん丼」は、ものすごいボリュームだった。新鮮なお魚がたっぷり。欲しかったたんぱく質だ。名物を食べようとすると、炭水化物が多くなる。とはいえ名物も捨てがたく、悩ましいところだ。なるべく我慢せずに食事を楽しみ、できる範囲で栄養も意識したい。

午後は岡山市街まで、残り15km。相変わらず退屈な道だったから、オーディブルは捗った。午前との違いは、より交通量が増え、有名なチェーン店などが目立つようになったことだろうか。とくに東岡山のあたりで。昨日、相生でかきおこ(牡蠣のお好み焼き)を食べていると、横のテーブルに座っていた二十歳前後の地元の女の子たちから「今日何してた?」「東岡山のスシロー行ってた」という何気ない会話が聞こえた。

歩いているとスシローがあり、「ああ、東岡山のスシローってここのことか!」と、ささやかな嬉しさがあった。あの彼女は昨日、ここに来ていたんだ。それは、「馴染みのない土地の人同士の会話が、割とすぐに体感として理解できた」という喜びなのだろうか。地理を覚える楽しさというのは、土地の人との距離が縮まるところにあると感じている。

途中、いくらか集中が途切れて聴き漏らした部分もあったけど、一応4時間ほどかけて『走ることについて語るときに僕の語ること』を最後まで聴き終えた。ふと、ぼくがこの旅を続けていけば、『歩くことについて語るときに僕の語ること』というエッセイを書けるかもな、と思った。

東岡山からのラスト7.5kmがかなりキツかった。あまりにも左肩が痛過ぎて、もうこれは怪我に近いのではないかとも感じている。左の鎖骨が痛い。2〜3kmおきにリュックを降ろして小休憩しながら進んだ。肩の筋肉があればこの痛みは軽減するのだろうか。リュックの荷物はこれ以上減らせないし、どうしたらいいのかよくわからない。

百間川の風景は美しく、ここを越えるといよいよ岡山市街地が間近に迫った。

日本三大庭園のひとつ「後楽園」の脇を過ぎ、岡山城と岡山駅を結ぶ「桃太郎大通り」を通って、桃太郎の描かれた路面電車を眺めた。

そして17時10分、岡山駅に到着した。桃太郎の像の前で記念撮影。

大阪出発から6日目、ここまで計200km歩いた。自分でも驚くほどのペースだ。一応計画していた通りの行程で進んでいるが、(痛みはあるしキツいものの)こんなに順調に進めるとは思っていなかった。

だってここ何年も、15km以上を歩いた経験がなかったから。この6日間で一日平均33kmを歩き続けているが、ぶっつけ本番でよく身体が持っていると思う。意外と脚が丈夫だったことが嬉しい。

宿泊する「ホテルアベストグランデ岡山」にチェックイン。この宿が最高に良い。

運良くデラックスツインルームが5700円で取れたのだけど、部屋は広々と快適なうえ、サウナ付きの大浴場、ワークスペース、ウェルカムドリンクや朝のコーヒーサービスなど設備やサービスが充実していてかなり気に入った。おまけに岡山駅前と立地も抜群。

近くのマツキヨで、疲労回復のため、「アミノバイタル プロ」(30本入り)を購入。Amazonで買うより1000円高かったけど、薦められるまで思いつかなかったから仕方ない。事前に準備しておくんだったな、という反省。これを毎日、歩く前と歩いた後に一本ずつ飲もうと思う。

岡山のイオン、かっこいい。

いつも通っているスタバのレイナちゃん(岡山出身の店員さん)がお勧めしてくれた「ぼっけゑラーメン」へ。「ぼっけゑ」は、岡山弁で「ものすごい」を意味する言葉だそう。まず特徴として、キムチが食べ放題なのだけど、このキムチがとてもおいしい。野菜不足が続いていたぼくにはかなりありがたく、たくさんおかわりして食べた。

ラーメンはたくさん種類があったけど、初回なのでやっぱり看板メニューのぼっけゑラーメンを注文。ライスもつけた。こってり濃厚なスープでおいしかった。あと、声が大きくてずっと何かを叫んでいる店主さんもおもしろかった。それもまたこの店の名物らしい。

20時半からは、サッカー・アジアカップの初戦であるベトナム戦。しかし、テレビ放送がなくDAZNの独占配信となっている。そこで、サッカー観戦ができそうなバーを探していたところ、クラフトビールパブの「クラフトレインボー」というお店で今夜放送するという情報をXで得た。

というわけで、20時半ちょうどに「クラフトレインボー」さんに伺い、無事観戦に成功。この旅行中は夜の原稿執筆のため極力お酒を避けているのだけど、せっかくクラフトビールのお店なので、一杯だけいただいた。Mountain River Brewery(東京・久我山)の「Sun And Breeze」

肝心のサッカーは、日本が前半開始早々に先制して「このまま圧勝するかな」と思いきや、なんとベトナムに2点取られて逆転されるという波乱の展開に。しかしその後、日本は前半終盤に2点取り再逆転に成功。さらに久保が途中出場した試合終盤には追加点が生まれ、4-2で勝利。ヒヤヒヤしたけど、おもしろい試合だった。テレビ放送してほしい。

クラフトレインボーさん、ありがとうございました!サッカーとクラフトビールが好きな方はぜひ訪ねてみてください。海外からのお客さんも多いようです。

<今日の費用>
おにぎり 276円
ポカリスウェット 179円
ランチ 1925円
アミノバイタルと解熱鎮痛剤 5235円
ラーメン 920円
クラフトビール 1050円
ホテル 5700円

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