見出し画像

彼女に振られたので山暮らししようかと思う。#10

ヨッシャマンと武術


山暮らしをするために必要なものは何だろうか?
もちろんお金は必要だ。
山を買うにしろ借りるにしろそれは必要で(ただでくれる人がいない限り)、お金がないことには山暮らしという前提そのものが成り立たない。
あとは何だろう?
勇気?
変なやつ扱いされても気にしない鈍感さ?
なんとかなるだろうという楽天さ?
危機管理能力?
無垢な瞳?
まぁ色々あるだろうが、みんなもっと現実的に考えた方がいい。
一番必要なのは、
「強靭な肉体と精神」である。
そんな感じがする。
車でゴミ出しに行くようななまりきった肉体と、いつまでもメソメソと彼女とのLINEを見返すような軟弱な精神ではダメだということだ。間違いなく。

そんなわけで、武術を習い始めた。
昔から古武術には興味があったのだが、近くでやっている所がなかったので合気道をやってみることにした。
始めてすぐに私は後悔した。
なぜもっと早くから始めなかったのだろう、と。
それくらい面白い。
週に一回のコースを二回にし、練習時間が足りないと、練習用の合気道サークルまで作ってしまった。どこに出しても恥ずかしくないくらいのはまりっぷりである。

勢いは止まらない。
合気道は、相手がいてこその武術である。
1人でも追及できるものとして、ヨガも始めた。
友人の知り合いに、頭のおかし……コホン、面白そうなヨガの先生がいたのでクラスに通わせてもらうようになった。
時代遅れの頑固親父の思考くらいに固い私の体も、少しずつ柔軟性を取り戻す兆しくらいは見え始めた。先は長い。

ここで終わらないのが人生の面白いところ。
チャンネル登録している、お気に入りのYouTubeを観ていたら、ゲストに中国武術の元世界チャンピオン(日本人なのに!)が出てきた。
すごい人がいるなぁ。中国武術も奥が深くて面白そうだなぁと思っていたら、なんとその先生の道場が隣の市にあることが判明した。
「うそだろ!」
ふつーに声を出してスマホに突っ込んだ。
しかも、その稽古日は今までなら彼女とデートしていた日。要するにがら空きなのだ。
武術の神様が手招きしているとしか思えない。
私は、即入会した。

と、いうような経緯で
私の日々の時間は、その多くが鍛練に当てられることとなったのである。
山暮らしのための身体作りという名目でスタートしたものではあったが、今では山暮らしをしながらも続けていきたいと思っている。
いっそ山に道場を作ってしまうか。
しかし、山で武術の鍛練などしていたら
私は仙人にでもなってしまうのではないだろうか。
それもまたよし、か。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?