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アスレティックトレーナー直伝!アイシングの方法

 スポーツ中にもしケガが起こってしまった場合、直後の処置が復帰までの経過を左右すると言っても過言ではありません。
 真っ先に行う応急処置として、アイシングを思い浮かべる方も多いと思います。

 応急処置として効果的なアイシングですが、正しく行わないと凍傷や神経損傷になってしまうリスクもあります。
 今回は安全かつ効果的にアイシングを行うための方法について解説させて頂きました!
 ぜひご参考にして頂ければ幸いです。

なぜアイシングをするの?

 まず、アイシングには主に以下のような効果があります。

  • 損傷を免れた組織の代謝を低下させることで、炎症が過剰に拡大して患部周囲が低酸素状態となるのを防ぎ、組織の二次的損傷を防ぐ

  • 痛みを伝える神経の伝導速度を低下させることで疼痛閾値を上げる(痛みを感じにくくする

 一番の目的は、ケガをした場所周囲の組織の代謝を低下させることです。
 患部周囲はケガをした直後、血管損傷や組織修復のために代謝が活発になります。しかしこちらは、損傷を免れた周りの組織の低酸素状態を引き起こし、かえって損傷が拡大してしまう原因となります。
 細胞を傷つけずに代謝レベルを低下できる温度は10〜15°Cです。アイシングもこの温度で行うことをお勧めします!

 他にもアイシングには痛みや腫れの軽減、筋緊張の軽減などの効果があります。

※温熱療法(ホットパックなど)にも痛みを軽減する作用はありますが、炎症時に生じる発痛物質であるヒスタミンやブラジキニンに関しては温めると逆に増加してしまいます。なので炎症期に関しては冷却にした方が良いでしょう。

アイシングの具体的な方法

①タイミング:ケガをしてからできるだけ早く

②温度:皮膚温が10〜15°Cになるように

③冷やす時間:10〜20分

④冷やす頻度:10〜20分のアイシングをした後は、1〜2時間のインターバルをおくようにしましょう。また、ケガをしてから24〜72時間はアイシングを継続するようにしてください。

※実際の現場でアイシング時の皮膚温を測定することは難しいです。なので感覚を頼りにしながら冷却時間を判断することが大切です!
 アイシングを開始すると、初めのうちは痛みを感じますが、時間の経過とともに感覚がなくなってきます。
 ここまできたら、20分経過していなくても冷却を中断してインターバルをおきましょう。

 ①10〜20分経過する
 ②感覚がなくなる

 このどちらかが先に訪れたらインターバルに入ってください!

 また、アイシングに用いる冷却物に関してですが、こちらはキューブアイスと水を混ぜたウェットアイスが、筋肉の冷却や皮膚温低下と冷却終了後の低温持続の観点から最も優れていると報告されています。
 上記のものを氷嚢に入れて使うのが良いと思います。
 もし氷嚢がなく、ビニール袋でアイスパックを作る場合には十分に空気を抜き、平らになるようにしてください(皮膚全体に密着しやすくするため)!

※「冷却物の温度は低ければ低い方が良いんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし10℃未満の冷刺激は神経を刺激してしまい、かえって炎症を引き起こす物質を放出させてしまいます。結果として神経由来の炎症が生じてしまうので、10〜15℃にて行うことをお勧め致します!

注意点

  • くるぶしや肘頭など、皮膚の直下に骨がある部位は凹凸が強くなるため、部分的に冷却が強くなりやすいです。これをできるだけ避けるために、氷嚢やアイスパックを全体的にしっかり密着させるようにしましょう。

  • 肘の内側や膝の後面、下腿の外側など、神経が表層を走る部位は神経損傷のリスクが高いので特に冷却中の感覚や冷却時間に注意を払いましょう。アイシングが過剰にならないようにして下さい!

  • アイシングに圧迫を併用する場合は、アイシング単独よりも皮膚温の低下が大きくなります。①と同様に、感覚や設定時間により注意をしてください。

  • 皮膚温と比べ、筋温は戻りにくいです。筋温が低いと筋力など、パフォーマンスに関わる要素は低下します。30分冷却をすると、リウォーミングには2時間以上かかると言われています。練習や試合の前にアイシングをする場合は、直前に長時間行わないようご注意ください。


 スポーツ復帰に関するシステマティックレビューでは、急性外傷後にアイシングをすると早期に復帰が可能であると示されています!

 近年、アイシングは治癒を助けるどころか遅らせてしまうとの意見をよく耳にします。
 こちらに関しては、太ももの打撲の応急処置の記事に私の意見を記載させて頂きました。

 過剰な血腫や浮腫が問題になりやすい外傷(大腿部の打撲や肉離れ、足関節の捻挫など)に対しては、炎症の過剰な拡大や出血を抑え、二次的な組織損傷を防ぐためにやるべきだというのが私の考えです。

 後遺症をできるだけ残さずできるだけ早期に復帰するためにも、適切にアイシングを活用してみてください!

文献
・スポーツ理学療法プラクティス 急性期治療とその技法 第1版
・EBM物理療法 原著第4版

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