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太ももの打撲の応急処置

「ももかん」や「チャーリーホース」とも呼ばれる、太もも前面の打撲(大腿四頭筋の筋挫傷とも言います)。

サッカーやラグビーなど、衝突・打撃を伴うスポーツにおいて発生率が高く、経験された方も多いのではないでしょうか。

今回はまず、このケガの適切な応急処置方法について述べた後、受傷後に生じる可能性のある注意すべき症状について解説していきます!

◆応急処置方法

まずはRICE処置を行いましょう!
RICE処置は以下の頭文字を取ったものです。

Rest(安静)=ケガした場所を動かさない
Ice(冷却)=患部を冷やして代謝を下げる
Compression(圧迫)=患部を圧迫して腫れを抑える
Elevation(挙上)=患部を心臓よりも高く挙げて腫れを軽減させる

RICE処置については、生体が本来持ちうる“炎症”という、外傷への適切なヒーリングプロセスを阻害してしまうという否定的な意見もあります。

しかし、過剰な血腫によりコンパートメント症候群や骨化性筋炎などの合併症が生じる恐れのある外傷(大腿部の打撲や肉離れなど)に対しては、炎症の過剰な拡大や出血を抑え、二次的な組織損傷を防ぐためにやるべきだというのが私の考えです。

RICE処置の具体的な方法は以下の通りです!

・開始時期:ケガをしてからできるだけ早く
・冷却温度:10〜15℃(氷嚢がお勧めです!)
・冷却時間:10〜20分
・冷却頻度:冷却後は1〜2時間空ける。そしてケガをしてから24〜72時間はこれを続ける
・圧迫:圧が偏らず均等になるように
・挙上:患部を心臓よりも高く挙げる

加えて大腿四頭筋打撲の処置で特異的なポイントは、膝をできるだけ曲げた状態でRICE処置を行うということです!(図1)

図1



受傷後、膝関節を120°屈曲位で固定することで、より早期のスポーツ復帰が可能になります。

大腿四頭筋がストレッチされるポジションなので痛みが出ると思いますが、可能な範囲でできるだけ120°に近い可動域で行って下さい。

また、この方法は骨化性筋炎を予防することができると考えられています。

実際には完全な予防には至らない可能性があるとも言われていますが、骨化性筋炎になるリスクを少しでも下げるために、
そして上述しましたが早期復帰のために120°を目指して膝を曲げた状態でRICE処置を行うことをお勧めします!

※より専門的な内容になりますが、膝を屈曲できれば仰向け、うつ伏せ、横向きどれでも構いません!
 大腿四頭筋のうちの一つである大腿直筋の伸張にはうつ伏せでの膝屈曲が効果的ですが、筋挫傷は中間広筋に起こりやすです。股関節肢位による影響はあまりないかと思いますので、とにかく膝をできるだけ曲げて行ってみて下さい。

◆注意すべき合併症とその症状

コンパートメント症候群
大腿部のコンパートメント症候群は非常に稀ですが、早期に気付かないと悲惨な結果となってしまう重篤なものです。
ぜひ症状を覚えてください!
・受傷後5、6時間以内に打撲当初よりも痛みが増悪し、激痛となる(通常の鎮痛薬はまったく効かない)
・皮膚に光沢を帯びるほどの強い腫れにより、神経が圧迫され知覚が鈍麻したり、痺れが出現する
・血流が阻害されるため冷感が末梢に出現する

骨化性筋炎
筋内にできた血腫が骨化してしまう現象です。骨化した血腫は完全に吸収されることは稀で、膝の屈曲制限や大腿四頭筋の筋力低下が残存してしまうことが多いです。
・受傷後1週間ほど経過し、初期症状よりも徐々に増悪する
3週間以上にわたり痛みやしこり、可動域制限が続いている

また、骨化性筋炎のリスクファクターとして以下のものが挙げられています。
・打撲後の膝屈曲制限(屈曲可動域120°以下)
・大腿四頭筋の肉離れや打撲の再発
・3日以上の治療の遅れ
・同側の膝関節水腫

ぜひ適切な応急処置と早めの治療を、そして危険な合併症が疑われる時はすぐに近隣の医療機関を受診して下さい!

文献
・Sports Physical Therapy Series⑨ 下肢のスポーツ疾患治療の科学的基礎:筋・腱・骨・骨膜 第1版
・公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト③ スポーツ外傷・障害の基礎知識第1版
・スポーツ理学療法プラクティス 急性期治療とその技法 第1版

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