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「私はガス室の「特殊任務」をしていた」シュロモ・ヴェネツィア著 河出文庫」

戦争という極限状態では、人は理性も共感的な感性も失ってしまうのかもしれません。それにしても、アウシュヴィッツで行われたことは、あまりに非人道的なことでした。

著者のシュロモ・ヴェネツィアは、アウシュヴィッツの特殊任務についていたユダヤ系ギリシャ人です。特殊任務とは、ガス室で殺された死体を墓穴まで運び燃やす仕事です。

彼は、アウシュヴィッツに連れてこられたユダヤ人たちが選別され、ガス室に送られ、苦しんで死んでいく様を目撃するのです。ガス室では、千人以上の人たちが一度にチクロンBという青酸カリのガスによって殺されます。チクロンB投入から、10分から12分人々は断末魔の苦しみを経験するのです。

今まで僕は、ガス室では、瞬間的に死を迎えるのではないかと思っていました。でも、そうではなかったのです。恐ろしいことです。どうしてここまで残酷なことができるのだろうかと思います。

この本は、フランスの政治学者・歴史学者であるベアトリス・プラスキエによるシュロモへのインタビューをベースに構成されています。彼女の的確で淡々とした質問が、シェロモからの貴重な証言を引き出しています。



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