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楽天✖️OpenAIトークセッション文字起こし


はじめに 

同時通訳の音声認識を行い、文字起こししたものです。
このトークセッションは、楽天の生成AIを自社ビジネスに適用するプランと、OpenAIの課題認識が興味深かったので、文字起こししてみました。
AIによる文字起こし、かつ1名での同時通訳ですので、発言者、固有名詞や音声認識ミスによる内容の誤りがある可能性がありますが、ご容赦ください。

重要ポイント

  • OpenAIのCOOブラッド・ライトキャップ氏は、同社がAI分野におけるグローバル企業としての拡大を目指す中で、パートナーシップをコアとして位置づけ、様々なパートナーと協力して共に成功していくことを重視している。

  • 日本法人を設立し、日本向けのモデル開発にも力を入れている。日本は新しいテクノロジーを積極的に導入し、重要なイノベーションを積み上げてきた国であり、AIが社会に真の価値を提供できると考えている。

  • OpenAIの急成長の秘訣は、AGI(汎用人工知能)というミッションを掲げ、それを社員のモチベーションやロードマップとし、研究開発やプロダクト開発の優先順位を決めていること、そしてエンジニアリングの力を理解し、システムを大規模化・スケールアップしていることにある。

  • 最高のモデルを提供することに加え、優れたインターフェイスが必要であると認識しており、複雑なタスクをサポートするためにインターフェイスの重要性が増している。

  • 中小企業やエンタープライズ向けのサービスにフォーカスしているのは、AIモデルが効果を発揮するためには人の知識を最大限に活用することが重要であり、業界の専門家のドメイン知識をAIモデルと組み合わせることができるからである。

  • AIの将来については、より複雑なタスクを解決できるようになり、批判的な思考やサブタスクの統合、具体的なアウトプットなど、ワークフロー全体に役立つようになると予想している。

  • AIはツールであり、仕事のあり方や機械・コンピューターとの関わり方を変えるが、人類は適応できると楽観視している。AIによって生産性が高まり、ソフトウェアエンジニアのような問題解決ができるようになるなど、機会や成長の余地は莫大にあると考えている。

  • AIの採用と普及を推進するためには、ビジネスの問題をAIで解決しようとするのではなく、カスタマーサポートなど重要な問題から着手し、AIテクノロジーを職場に導入する際には全員がテクノロジーにアクセスできるようにすることが大事であるとアドバイスしている。

  • AIの巨大なモデルはエネルギー消費も大きいため、サステナビリティへの配慮も必要である。AIを使って新しい方法を見つけ、サステナブルにするということもできると考えている。

  • プロダクト開発においては、新しいインターフェイスが不可欠であり、今後5年、10年後のテクノロジーの使い方は大きく変わると予想している。AIがアシスタントとなるだけでなく、同僚や先生、ドクターなど様々な役割を果たすようになり、ロボティクスとのエンゲージメントも増えていくと考えている。

トークセッション(全文)

楽天 × OpenAI:生成AIの次に来るもの - YouTube

司会:皆様、こんばんは。ジョージ・フレミガと申します。楽天グローバルPRチームの司会を務めさせていただきます。それでは、OpenAIのCOOであるブラッド・ライトキャップ氏の来日にあたり、ファイアーサイドチャットを行いたいと思います。楽天のCDO(チーフ・データ・オフィサー)との対談を通して、生成AIの次に来るものを探っていきます。ジョージさん、よろしくお願いします。

ジョージ:ありがとうございます。そして、皆さん、本日はご参加いただきありがとうございます。特にブラッドさん、そしてOpenAIの皆さん、誠にありがとうございます。また、ライブストリームにもご参加いただいております。ありがとうございます。ブラッドさん、楽天へようこそ。本日はAIについて様々な角度からお話を伺いたいと思います。まずは、ブラッドさんご自身についてお聞きしたいと思います。OpenAIのチーフ・オペレーティング・オフィサーとして、サンフランシスコや東京で何度もお会いしておりますが、ブラッドさんの影響力はCOOにとどまらないと感じています。OpenAIにおけるブラッドさんの役割について教えてください。

ブラッド:はい、もちろんです。本日は参加できて本当に嬉しく思います。また、東京オフィスも立ち上げましたので、東京において楽天の皆様と真のパートナーシップを築けていると感じています。OpenAIはまだスタートアップで若い会社です。スタートアップにおいては、必ずこうある、と決めつけず、あらゆることに挑戦する人間が必要です。OpenAIにおける私の役割は、リサーチ以外の全てです。パートナーシップ、マーケティング、ファイナンスなどを統括してきました。OpenAIがグローバル企業として拡大していく中、そして私たちのモデルが世界中に影響を与える中、OpenAIのコアはパートナーシップにあります。様々なパートナーと協力し、共に成功していくことが私の役割です。世界の様々な方々をOpenAIに招き入れ、私たちが大切にしているミッションを共有していくことが重要だと考えています。

ジョージ:おっしゃる通り、OpenAIは日本法人を立ち上げ、日本向けのモデル開発にも力を入れていらっしゃいますね。なぜ日本にフォーカスされているのでしょうか?

ブラッド:日本は私たちにとって常に魅了されている国です。日本は新しいテクノロジーを積極的に導入し、重要なテクノロジーや製造技術のイノベーションを積み上げてきた国です。AIにおいても、新しいテクノロジーであり、クリティカルなテクノロジーであり、社会に真の価値を提供する、既存のソフトウェアではできなかったようなことを実現できるAIは、日本という市場において非常に重要な役割を果たせると考えています。また、すでに200万人が毎週日本でGPTを利用しているということで、チャットGPTのユーザーが多いということもあります。ユーザーや潜在的な顧客、デベロッパーの方々の近くにオフィスを構えることで、より良いサービスを提供できると考えています。日本にオフィスを設けることは、私たちにとって非常に光栄なことです。まだまだ学ばなければならないことも多く、日本のユースケースについても深く理解したいと考えています。

ジョージ:本日はOpenAIと楽天の対談を通して、AIの未来について探っていきたいと思います。まず、OpenAIはスタートアップだとおっしゃいましたね。楽天も起業家精神やイノベーションを重視し、社会に価値を提供することを目指しています。OpenAIと楽天には多くの共通点があると感じています。さて、OpenAIは目覚ましい成長を遂げてきましたね。最初に一緒に仕事を始めた頃は、OpenAIの従業員は数百人程度だったと思いますが、今では1000人を超えています。4倍ほどの成長ですね。私が初めてOpenAIの方々と仕事をした頃に比べると、かなり成長されていますが、まだまだ比較的小さい会社ですね。なぜこんなに急ピッチに成長することができたのでしょうか?

ブラッド:本当に世界を変えるようなイノベーションを次々と打ち出していますね。昨年11月にOpenAIのデブコンに参加しましたが、そのスピード感に驚きました。その秘訣は何でしょうか?

ブラッド:いくつかありますが、1つに絞るとしたら、私たちのミッションです。AGI(汎用人工知能)というミッションを掲げ、私たちはビジネスを創業しました。AGIの恩恵を幅広く届けたいというのが私たちのコアなミッションです。これは、私たちが採用する社員のモチベーションとなっているだけでなく、私たちのロードマップにもなっています。研究開発やプロダクト開発の観点から、このミッションがあることが非常に重要です。私たちのミッションに貢献するか否かで、優先順位を決めています。つまり、ミッションにつながるものは高い優先順位となります。これが1つの秘訣だと思います。もう1つ、OpenAIは研究開発機関だと考えていますが、私たちはエンジニアリングの力を非常によく理解しています。そのため、私たちが開発するシステムはどんどん大規模化し、スケールアップしています。そのためには、システムエンジニアリング能力を持ち、私たちの研究開発を支えることが非常に重要です。

ジョージ:それは確かに重要ですね。つまり、ミッションにフォーカスし、研究とエンジニアリング能力を重視しているということですね。私たち楽天も社会にバリューをもたらすことを重視しています。これは、最新のモデルを届けるだけでなく、エンジニアリングの能力や様々なツールが必要となります。楽天では多くの加盟店を抱えています。楽天のマーチャント・オブ・ザ・イヤー(優秀店舗賞)の表彰式で、様々な中小の加盟店の方々とお話しました。20人や30人程度の社員しかいない小さな会社でも、非常にユニークなプロダクトをお客様に提供しています。物流や在庫管理など、やらなければならないことがたくさんあります。AIについて、もっと詳しい方とお話したかったのですが、とにかくやらなければならないことがたくさんあるので、すぐに使えるツールが必要だとおっしゃっていました。つまり、テクノロジーが役に立つためには、モデルだけでなく、使いやすいプラットフォームも必要だということですね。OpenAIは最高のモデルを提供する会社でしょうか?それともプラットフォームも提供しているのでしょうか?

ブラッド:まずは最高のモデルを提供することから始まります。最先端のモデルを提供できなければ、業界をリードすることはできません。しかしながら、世界中の企業とパートナーシップを築く中で、優れたインターフェイスが必要だということを理解しています。モデルがどんどん能力を増し、より複雑なタスクができるようになる中で、インターフェイスがますます重要になってきます。このモデルの役割は、様々なタスクでサポートできることです。これが狭い範囲のタスクであれば良いかもしれませんが、もっと複雑なタスク、例えば2時間や3時間かかっているようなタスクにおいて、モデルをトレーニングする場合には、フィードバックを提供し、タスクを改善していくために、インターフェイスが必要となります。

ジョージ:まさにその通りですね。私がOpenAIと関わる中で学んだのは、非常に具体的で、かつ大きなビジョンを持つことが必要だということです。楽天においては、ビジネスパートナーやお客様に具体的な価値を提供することを重視しています。ブラッドさんに伺いたいのは、その実践的なアプリケーションについてです。AIテクノロジーを、今日から使える具体的なアプリケーションについて、そして、今後近い将来に実現していくものについて教えてください。

ブラッド:今日すでに数えきれないほどのアプリケーションがあり、テクノロジーとしてもまだまだ始まったばかり、初歩的な段階です。このテクノロジーが実現できるものという意味では、まだまだ歩み始めたばかりで、今後たくさんの驚きがあると思います。コンシューマー向けからビジネス向けまで、ありとあらゆるアプリケーションがあります。例えば、楽天においては、加盟店向けの具体的なツールを提供しています。テクノロジーの力を使って、より生産性を高め、効率的に仕事ができるようにしています。そして、楽天がその能力を加盟店に提供していることは素晴らしいと思います。ビジネスの上では、本当に大変でやらなければならないことがたくさんありますが、社会において非常に重要な役割を果たしています。こういったAIの能力を、具体的なビジネスにどう適用していくのか、そしてビジネスが成長できるように役立てていくのか、ここに大きな機会があると思います。

ジョージ:楽天の加盟店について、もう少し詳しく教えてください。三谷さんは数年前に『ビジネス2.0』という本を執筆され、ヒューマン・タッチの重要性に触れています。AIの力で人のクリエイティビティを拡張し、両者を融合させていこうということですね。ブラッドさん、去年テキストを交換した時に、エンタープライズ向けにフォーカスするという話が出ていましたね。中小企業を支援したいということで、特に日本においては、アメリカとは違ってユニークなお店がたくさんあります。様々な場所を歩くと、個性的なお店があって、多様性に富んだお店が残っています。チェーンストアだけではないということですね。なぜエンタープライズ向けサービスにフォーカスするようになったのでしょうか?

ブラッド:エンタープライズはなぜ面白いか?それは、ビジネスが直面する困難を、大規模に拡大したものだからです。ビジネスのスケールが大きくなれば、課題も大きくなります。また、共通の課題があるので、そこにチャンスがあると思いました。ビジネスのプロセスをどう効率化するのか、人を採用する時にどうやって生産性を上げるのか、製品やサービスを構築する時に質をどう高めるのか、より良いサポートをどうやって提供していくのか。これは中小企業も大企業もエンタープライズも皆が直面していることです。どういった形でツールを使っていくべきか、まずは中小企業や中企業、こういった企業向けにツールを開発していたデベロッパーと連携し、テクノロジーをどう導入していくべきか考えました。そして、エンタープライズに可能性があると考えたのです。中小企業と同様にチャンスがあると。1つ気づいたことは、AIモデルが効果を発揮するためには、人の知識を最大限に活用しなければならないということです。そのため、エンタープライズサービスに注力することにしました。ドメイン知識を活用できるからです。業界の専門家が知識を持ち、AIモデルとどう組み合わせていくのかを考えています。AIモデルは様々な能力を持っているとおっしゃいましたが、私も本当に素晴らしいと思います。何年も前に、私はECサイトのスタートアップで分類の仕事をしていました。個人的にラベル付けをして学習データを構築していました。しかし、今はモデルの能力が上がり、様々なことができるようになりました。4月15日の確定申告の準備をしていたのですが、チャットGPTを税務コンサルタントとして活用しました。本当に驚いたのは、汎用モデルを開発しようと考えたことです。このマシンの数、そして計算能力も必要です。何百万ドルもかかると思いますが、どういった背景でそういった決定をされたのでしょうか?

ブラッド:やはり、ミッションに基づいています。汎用人工知能を作りたいと考えたのです。汎用知能とは何か?あるタスクに関して、学習アルゴリズムが事前の知識なしに、そのタスクデータやコンテキストの知識なしに、どう解決したらいいかを示し、指示に対してアウトプットを出せるものを目指しています。そういったところに到達したいのです。到達できれば、専門化した小さなモデルも必要になってきます。モデルが持つギャップを埋めていくということです。汎用モデルは、具体的なコンテキストを理解し、汎用モデルが持っていない問題は専門家に委ねていくべきだと考えています。例えば、ブランドの専門家や、神経科医の下にいる専門医に委ねるということです。そうすることが有益だと考えています。楽天の三谷さんから学んだことですが、イノベーションとはコネクションを作ることだとおっしゃっていました。汎用モデルができ、様々なものを繋いでいくことで、イノベーションが生まれると思います。メディカルの話をされましたが、楽天はメディカルの領域でもイノベーションを進めています。癌を解決し、AIを使って人の命を救いたいと考えています。では、次に来るのは何でしょうか?テクノロジーイノベーション、ビジネスイノベーションに関して、次に来るものは何でしょうか?

ブラッド:できる限りお答えしたいと思います。究極的には、モデルがより複雑なタスクを解決できるようになることです。現在、チャットGPTを使って基本的な問題を解決しています。テキストのサマリを作ったり、翻訳をしたり、新しいものを書く時に助けてくれたりします。しかし、これはワークフロー全体から見ると、非常に限られたタスクです。実際に私たちが毎日行っているワークフローはもっと複雑で、批判的な思考や、様々な領域でのサブタスクの統合、具体的なアウトプットなど、より複雑な問題解決が必要です。モデルの能力を改善し、ワークフロー全体に役立つようにしていく必要があります。各タスクの統合をして、新しい知識やアイデアを生み出し、複雑な問題を解決できるアシスタントのようなものを作っていく、問題解決ができるタスクではなく、問題解決できるようにする、どうしたらいいのかということを考えています。

ジョージ:素晴らしいですね。組織の機能にも似ていますね。様々な専門性や能力を持った人がチームとして集まり、全体的なアウトプットのクオリティを高めていきます。複数のエージェントが連携し、それぞれの強みを持ち寄って、知識をつなげ、より大きなタスクを達成していくということです。チームメイトに依存して仕事をしているように、今後は非常にパフォーマンスの高いAIに依存して仕事をしていくことになるでしょう。AIはどんどん賢くなり、チームメイトのような存在になっていきます。様々な個性や経験のある人がチームとして集まると、全体的なアウトプットのクオリティを保証することが重要になります。信頼性や再現性をどうやって担保しているのでしょうか?

ブラッド:モデルに関して、私たちは真剣に取り組んでいます。この分野においては、改善率は予測可能です。新しいモデルのトレーニングをし、スケールを拡大していくと、どんどん上がっていきます。これがAIの良いところです。より良い、大規模なモデルを作っていくと、ハルスレーション(誤った推論)の率も下がり、より詳細で具体的な答えを出せるようになります。なぜこういった答えをしたのかという説明もできるようになり、その他のツールを効果的に活用して、新しいデータを答えに織り込んでいく能力も改善していきます。モデルをスケールアップするだけで、そういったメリットが得られます。

ジョージ:もう1点、どうやってツールを使うかということがあります。お客様、特にエンタープライズの方々とお話ししている中で、このツールをデータベースのように扱わないということです。非常に高額で時間のかかるデータベースです。ナレッジのリトリーバルをするということです。つまり、新しい問題を指摘し、新しい情報を提供し、ベースラインの知識を活用して、合理的に考える力を活用していくということです。

ジョージ:今日、チャットGPTの新しい使い方について学びました。スタンフォード大学が新しいレポート『AIインデックス』を出しましたが、皆さんご覧になりましたか?長いレポートをまとめてと言いました。そして、具体的なテキストが欲しい、サマリではなく、重要なポイントについて具体的なテキストを出してと言いました。まだ確信が持てなかったので、上司に提出する前に、オリジナルのレポートと全く同じテキストかどうかを確認しました。チャットGPTを使ってアウトプットを検証する、自分の出した結果を検証させるというのが1つの使い方だと思います。

ブラッド:おっしゃった通り、新しい知識の検証や、正しいかどうかを判断するということですね。エンタープライズのユースケースの1つは、品質保証に使うということです。モデルを使って品質のフィルターにするということです。様々な企業が、こういった形で使っています。

ジョージ:少し、キャリアのバックグラウンドという別の視点から伺いたいと思います。ブラッドさんは経済学と歴史を専攻されていたんですね。日本においても、経済学を専攻する学生は非常に多いですが、テクニカルなバックグラウンドではありません。ブラッドさんがどうやってテックに入ったのか教えてください。

ブラッド:私がテックに入ったのは、金融危機の真っ只中、大学生だったからです。つまり、金融セクターが今後どうなるのか分からず、自分のキャリアや未来について考えた時に、どこが一番有望かを考えました。また、当時、非常にスタートアップが急速に成長していました。UberやAirbnb、Stripe、Dropboxといった企業が活躍していた時代で、こういったスタートアップに非常に興味を持ちました。毎日使うようなサービスのスタートアップが生まれているからです。ある意味、経済学的な観点からこのセクターを見ました。テクノロジーやソフトウェアというセクターの面白いところは、ゼロ・マージナル・コストで普及させることができるということです。一度ソフトウェアを開発すれば、世界中の人が無償で利用できます。そして、AIについて考えると、さらに面白いです。例えば、アシスタントのようなソフトウェアを開発し、スケールアップすれば、質を高めることができます。これはトレーニングの産物ですが、私は常にテクノロジーを経済学のレンズを通して見ていて、それを非常に面白いと感じていました。それがおそらく私のバックグラウンドです。テクノロジーは、おそらく最も破壊的な経済的成長や進化をもたらす要素です。イノベーションを押し進め、世界が繁栄し、成功するために不可欠です。そして、ソフトウェアの力は、社会に大きな恩恵をもたらすことができます。こんなに人々の生活の質に貢献できるプロダクトがあるということは、もう感謝すべきことだと思います。それにインスピレーションを受けて、この分野で働きたいと感じました。

ブラッド:素晴らしいですね。プラトンの言葉にもありますが、スキルアップすることの限界コストはゼロです。AIは、私たちが一人ひとり行う仕事をスケールアップすることを可能にし、より大きな仕事を可能にします。一方で、AIによって自分の仕事がどうなってしまうのかと心配する人もいるかもしれません。AIによって仕事が奪われるのではないか、それとも生産性を高めることができるのか。雇用の喪失に関する経済学的見方はどうでしょうか?

ブラッド:経済学的にお答えしたいと思いますが、根本的には、AIはツールです。仕事のあり方は変わります。機械やコンピューターとの関わり方、情報の処理の仕方は変わります。どれだけ生産性を高められるか、そして皆さんの能力も変わります。今までテクノロジーが得意ではなかった人でも、ソフトウェアエンジニアのように、問題解決ができるようになります。これはすごいことです。まだ、人類としては理解できていないと思いますが、この部屋にいる人全員がソフトウェアエンジニアです。今までコードを一分も読んだことがなくても、24時間アシスタントがほぼ無料で使え、大量のコードを書くことができるのです。そして、この力はどんどん拡大していきます。世界中の人がエンジニアになれる、そういう意味で、機会や成長の余地は莫大にあると思います。確かに、私たちの働き方や企業のあり方、プロダクトの作り方は変わってきます。しかし、人類は適応できると思いますし、私は非常に未来に期待しています。

ジョージ:私も同様です。新しいAIツールは、平等な競争を可能にします。誰もがソフトウェアエンジニアになれる、誰でもイノベーションを起こせる、このAIのアシスタントを使って、行動を起こすことができるのです。一方で、競争が激化するということでもあります。こういったツールを使えないと、すぐに競争に追いつけなくなってしまいます。最高のアシスタントを使って、どれだけ生産性の高い仕事ができるのかということです。楽天も、最高のツールを用いて、最高の仕事ができるような環境を用意しますので、全員が恩恵を受けられることを願っています。他に何か追加したいことはありますか?

ブラッド:今までお話してきたこと、キャリアについて、テクノロジーについて、様々なトピックをカバーしましたね。ツールやシステムの強みと弱みを学ぶこと、そして、変化のスピードにも目を向ける必要があります。ChatGPT3が何が得意で何が不得意だったのか、ChatGPT4は何ができるのか、何が得意なのか、次のモデルは何が得意になっていくのか、変化のスピードが非常に早いので、OpenAIの中でも目が回るほどのスピード感です。この変化を理解することも非常に重要です。とてもエキサイティングで、AIに関わることができて本当に嬉しく思っています。私たちは、このテクノロジーの開発により多くの人を巻き込み、より多くの人にその恩恵を届け、野心を達成していきたいと思います。ありがとうございました。

ジョージ:それでは、ここから質疑応答の時間とさせていただきます。オーディエンスの方で質問のある方はいらっしゃいますか?ブラッドさん、三谷さん、ありがとうございました。それでは、質疑応答の時間を始めます。

観客:素晴らしいお話でした。すでに多くのユースケースをご覧になっていると思いますが、AIテクノロジーに関して、最も興味深いユースケースは何でしょうか?そして、それが人々の生活をどう変えているのか、あるいは変えていくのかを教えてください。

ブラッド:多くのユースケースがあります。シンプルなものもあれば、エレガントなものもあります。私が素晴らしいと思うのは、友人が子供を産んだ時、1人目だったので、非常に緊張していました。ChatGPTを使って、どうやって親になるかを学んだのです。シンプルな話ですが、例えば、どのくらいの頻度で病院に連れて行かなければならないのか、何を買ったらいいのか、こういったシンプルな質問でも、実際にその時になるまで考えないようなことです。2人目になれば簡単ですが、1人目の子供ということで、アシスタントを使うことで、様々なことを学ぶことができました。また、マルチモーダルな統合というユースケースもあります。テキストを書いたり理解したりするだけでなく、画像、オーディオ、ビデオ、音声認識など、様々なモダリティを統合して、全く新しいものを創り出していくということです。ソフトウェアに向かって話しかけたり、コンピューターが画像を理解できるようになったり、動画をテキストコマンドで生成できるようになったりと、非常に大きな変化が起きています。企業がこういった能力をアプリケーションに入れようとしています。ゆっくりと実験的に進めていますが、うまくできているところでは、非常に素晴らしいアプリケーションが出てきています。

ジョージ:他に何かありますか?

観客:多くの業界で、AIテクノロジーの採用が進んでいますが、まだ完全には浸透していません。一部の企業では、AIを活用していますが、OpenAIのCOOの視点から、AIのグローバルな民主化という視点で、どういう戦略やビジョンを持って、AIの採用と普及を日本の産業界の中で推進していくべきでしょうか?また、どういうメッセージを日本のビジネスパーソンに伝えたいですか?特に楽天グループにいる方々の中で、AIテクノロジーをより効率的に活用していくために、どういうメッセージがありますか?

ブラッド:多くの企業と話をしていますが、いつもチームに伝えているのは、私たちの仕事は物を売るのではなく、セラピストのようなものだということです。多くの企業が、AIをどうビジネスに統合していったらいいのか、プレッシャーを感じています。どこから着手したらいいのか分からないというのが一番大変なことです。私たちもそれについて共感できます。ビジネスは複雑で、テクノロジーは全く新しいものです。それをどう統合していくのか、プレッシャーがかかる中で、非常に大変なことです。私たちは企業に対して、違うアプローチを提案しています。まずは、ビジネスの問題をAIで解決しようとするのではなく、本当に重要ないくつかから着手し、そこにフォーカスするということです。例えば、カスタマーサポート。全ての会社にカスタマーサポートの問題があります。モデルの能力で、カスタマーサポートに最も合致しているものを理解することができます。スウェーデンの金融サービス会社であるKlarnaは、ChatGPT4をカスタマーサポートに統合し、時間を節約できました。チケットに関して、5分の1の時間で対応できるようになったという例があります。非常にシンプルな実装でしたが、フォーカスして導入したということで成功したのです。また、社員に力を与えるということです。AIテクノロジーを職場に導入する際に、一部の人にだけツールへのアクセスを認めるのではなく、全員がテクノロジーにアクセスできるようにすることが大事だと考えています。裁量のあるモデルにアクセスできるようにし、そのモデルがより小さなモデルと比較してどうなのか、どういったところでうまくいくのかを理解してもらう必要があります。モデルの進歩のペースを理解してもらう、どう改善していくのか、どうやってプロンプトしていくのか、求める結果が出るのか、モデルの周りのツール、インターネットブラウザ、画像生成、データ分析など、どう活用していくのか、学習曲線がありますので、そういったところが重要だと思います。まずは、全員に裁量のあるプロダクトへのアクセスを提供し、実際にやってみて、色々と考えるということが大事だと思います。

ジョージ:なかなかそれができない会社も多いということで、多くの企業にアドバイスされているのですね。日本においても、AIをそういった形で導入していくべきだとアドバイスされているのですね。

ブラッド:1つ追加したいと思います。具体的な問題を解決するということです。OpenAIのチームと話していると、まさにそう感じます。クリアで具体的な、場合によっては狭いユースケースにまずフォーカスしていくということです。カスタマーサポートについて言及されましたが、もう1つ質問したいと思います。チャットボットはカスタマーサポートでよく使われてきましたが、今までのチャットボットは、非常に具体的なダイアローグベースでプログラミングされていました。この質問の場合はこう回答する、といった形でしたが、チャットボットはユーザーの期待に応えるものではありませんでした。私たちも古いチャットボットを使っていると、ユーザーの質問の50%ぐらいしか回答できません。しかし、ChatGPTは非常に汎用性があって、幅広くユーザーの質問に答えることができます。ただ、精度は下がってしまいます。例えば、リファンドに関するユーザーの質問は、非常に具体的な質問で、具体的な回答が必要です。この2つのアプローチはどう連携して、お客様の問題を解決できるのでしょうか?これは、私たちが一番質問を受ける、大好きなテーマです。

ブラッド:私の考え方ですが、多くの企業がOpenAIでカスタマーサポートの問題を解決したい、自動化したいと言います。これは正しいアプローチではないと思います。カスタマーサポートのあり方を変えなくてはいけません。カスタマーサポートのオートメーションを目的としないということです。人は話をします。カスタマーには様々なニーズがあります。まず、お客様が何を求めているのか、インサイトが必要です。このモデルは、非常に顧客分類が得意です。カスタマーサポートに来たメールを、非常に分かりにくいメールだったとしても、何を求めているのかをモデルはかなり正確に理解することができます。これがまず第1ステップです。ChatGPT4を使って、カスタマーからのリクエストや質問を分類するということです。次に、カスタマーサポートに来るチケットには、様々な重要度があります。アカウントがハッキングされた、リファンドが必要、非常にセンシティブな情報がある場合もあります。こういったものは人間が扱うべきです。一方、あまり重大ではないチケットもあります。プロダクトのフィードバック、ボタンの色が好きではない、ChatGPT4がもう少し速くなって欲しい、など、必ずしも人間が回答する必要はありません。一部をオートメーションすることが可能です。そして、カスタマイズされた素敵な文章を顧客に返し、顧客満足度を高めることができます。3つ目はプレイブックです。全ての企業がカスタマーサービスのプレイブックを持っています。個別の課題に対してどう対応するのかというものですが、常にアップデートするのは困難です。新しいプロダクトが出たり、対応が変わったりするので、チケットに対してどう対応したかを受けて、プレイブックを常に編集し、アップデートしなければなりません。これは人間にはかなり困難で、多くの企業が諦めてしまいます。一度プレイブックを書いたら、数年単位でしかアップデートできません。しかし、ChatGPT4を使って、今までのチケットの対応に対して、モデルで異なる対応をした場合には、新しい情報を元にアップデートさせることができます。カスタマーサポートのあり方を変える、全てをオートメーションするのではなく、一部を変えていくということです。非常に合理的だと思います。

ジョージ:楽天で今考えているのは、フライホイールのようなアプローチです。場合によってはAIが全面に立ち、場合によってはAIがアシスタントとなって、人とAIが力を合わせ、プレイブックをアップデートするというのは非常にいいと思います。他に質問はありますか?

観客:こんばんは。ブラッドさん、そしてOpenAIのチームの皆様、このような素晴らしい機会を設けてくださり、ありがとうございます。AIは多くの潜在性とチャンスをもたらすと考えています。企業や人類にとってだけでなく、サステナビリティという観点からも、当然のことだと思います。最近、GPUの確保が難しいという話も出ていますし、環境への影響という重要なテーマもあります。巨大なモデルはエネルギー消費も大きいという問題もあります。OpenAIは、生成AIのリーダーとして、この問題にどう取り組んでいかれるのでしょうか?

ブラッド:将来のシステムは、社会に負荷をかけるものとなります。サステナブルな電力を確保し、こういったものをカバーしていかなければなりません。2030年に向けて、どうやって拡大していくのか、必要な規模にどうやって上げていくのかということです。再利用することでかなりできると思いますが、新しいテクノロジーも必要かもしれません。AIを使って、新しい方法を見つける、例えば、核融合や太陽光、風力などの開発に役立てていく、AIを使ってサステナブルにするということができればと思っています。重要な問題をご指摘いただき、ありがとうございます。AIを使って問題を解決するということもできると思います。楽天モバイルにおいては、AIモデルを使って、低消費電力の時期を予測し、アンテナの電力消費を抑えたり、エネルギー消費を抑えたりしています。ただ、さらなる取り組みが必要です。ご質問ありがとうございました。他にオーディエンスからご質問はありますか?

観客:OpenAIとして、プロダクト開発の優先順位を伺いたいと思います。AIは非常に進化が早い分野ですが、具体的にどういう要素を優先して、組織の中で、また投資を考える中で検討されているのでしょうか?

ブラッド:AIがどんどん進化する中でのプロダクト開発の考え方ですね。大変重要な質問をいただきました。先ほどお話したように、AIが世界中の人のアシスタントになるという話に戻ります。そのためには、新しいインターフェイスが不可欠です。ソフトウェア上、ハードウェア上、両方のインターフェイスが必要です。今後、5年、10年後のテクノロジーの使い方は、今とは全く違うと思います。インターフェイスが変わり、物理的なアクセスポイントが使えるようになる、コンピューターの使い方も今までとは全く違うようになるでしょう。キーボードやマウス、スクリーンがあるのは、必ずしもAIの1番いい使い方ではありません。パワフルなAIがある中での最高のパソコンの使い方ではないと思います。例えば、私たちの動画モデルは非常にいい例です。空にテキストを入れて動画を生成するというのは、クリエイティブな方の使い方としては不十分です。ダイヤルやノブがあって、このシーンをこう変えたい、リアルタイムで編集したい、そういった形で動画を編集したい、これは今のテキストのインターフェイスではできません。それは私たちにとっての課題です。モデルを作るだけでなく、新しいインターフェイスを作り上げなくてはなりません。プロフェッショナルであれ、一般の人であれ、全員がクリエイティブに使えるようなインターフェイスが必要になります。おっしゃる通り、新しいテクノロジーがたくさんあり、そのためのインターフェイスもたくさん発明されていくと思います。とてもワクワクしています。

ジョージ:もう1つだけ質問を受けたいと思います。

観客:ブラッドさん、素晴らしい機会を設けてくださり、ありがとうございます。非常に幅広い質問をしたいと思います。AIの未来をどう見ているか、そして、どういった変化が私たちの生活に訪れるのでしょうか?SFのような話でも構いません。

ブラッド:2つの形でお答えしたいと思います。まず1つ目は、根本的にテクノロジーによって、機械との関係が変わると思います。例えば、今日生まれる子供は、機械は話しかけられるもの、パーソナルなものだと考えるでしょう。人間と同じような関係を持ち、指示を出せばやってくれるものと捉えるようになるでしょう。何らかのテクノロジー、タッチスクリーンのないものを与えれば、みんなタッチします。なぜ反応しないのか不思議に思うようになる、テクノロジーとの関わり方が変わっていくのです。それが比較的早く進歩していくと思います。物理的なエンゲージメント、テクノロジーとの関わり方が変わっていく、そういったところが変わっていくと、将来、全員がパーソナルなアシスタントを持つようになるでしょう。非常に有益なことをやってくれる、先生にもなる、ドクターにもなる、友達にもなる、アシスタントにもなる、同僚にもなる、退屈な作業、例えば確定申告などもやってくれる、基本的にパーソナルなものである、あらゆる場所にある、あらゆる機械ややり取りをする機会は、喋れる、何かをしてくれる、そういったものになると考えています。もう1つは、より長期的に、ロボティクスとのエンゲージメントが増えていくと思います。物理的な周囲から信号を得て、物理的な世界を理解できるようになり、言語や行動を理解するだけでなく、物理的な世界も理解できるようになってきています。そうすると、その次に来るのは何か?資格的な認知をベースに、ロボットに入れていく、ロボットが世界とどう関わっていくべきか分かるようになる、それが今後の方向性ではないかと思います。17年、18年ぐらい前に、私たちはルービックキューブをロボットにやらせようとしたのですが、その振る舞いを教えなければなりませんでした。モデルが試行錯誤して学ぶのではなく、教えなければなりませんでした。しかし、今後は、ロボットがどんどん学べるようになり、ロボットの機能が大幅に上がってくると思います。このビデオを見て、ロボットがどう動くかを学ぶこともできるのではないでしょうか。楽天トラベルや楽天市場の方もいらっしゃると思いますが、何か質問はありますか?

観客:namecoと申します。楽天トラベルにおります。ユーザーインターフェイスへの投資、人とAIのインターフェイスについて質問したいと思います。情報へのアクセス、ブラウザやインターネットを通じたアクセスというのは、随分長い間、私たちが使ってきたアクセス方法です。ただ、ブラッドさんがおっしゃったように、AIと人のインターフェイスは、完全にこれから変わっていくと思います。全く新しいフォーマット、話をする、そういったフォーマットになると思いますか?

ブラッド:なると思います。タイムラインは分かりませんが、なると思います。例えば、デバイスのインターフェイスが、リクエストに応じて毎回変わるとしたらどうでしょうか?最初はブランクのスクリーンで会話を始め、そこで必要な情報がリアルタイムで提供される、そういったことができます。技術的な理由はありません。それは、今私たちが使っているインターフェイスとは違う、インターネットのアーキテクチャーとも違います。今は、スタティックなデータがあって、リクエストを出すと提供されるというものです。しかし、あまりダイナミックな関係性ではありません。バックエンドで誰かが情報をアップデートしなければなりません。しかし、必ずしもそうでなくても、新しいインターフェイスのあり方は可能だと思います。非常に興味深い将来像が想像できます。企業も、ユーザーとのインターフェイスについて考えています。インターフェイスがスタティックなのかダイナミックなのか、情報の生成のあり方も変わるかもしれません。完全にダイナミックなものにするのか、一部をダイナミックにするのか、ブラッドさん、ありがとうございました。

ジョージ:時間の制約がありますので、本イベントは以上とさせていただきます。ブラッドさん、ありがとうございました。皆さん、たくさんのご質問をいただき、ありがとうございました。そして、OpenAIチーム、東京を訪れてくださり、日本法人の立ち上げ、おめでとうございます。これからの取り組みが楽しみです。本日参加いただきました皆様に感謝を申し上げます。AIの未来について、有意義な時間となりましたら幸いです。

【お知らせ】GPTs開発中

当社では例えばこんなGPTsアプリを作っています。

  • ネイル写真からネイルアートを評価・スコアリングし改善案画像を出力するGPTs

  • ちらかっている部屋の写真から捨てるもの、片付けるものを自動判別し、整理整頓の手順をアドバイスしてくれるGPTs

  • 飲食店舗の外観写真からお客さんの入りやすさ、バリアフリーなどを自動で評価・スコアリングし、改善後のファサード画像を出力するGPTs

などなど、140種類以上、ChatGPT Plusユーザーであれば今すぐ使っていただける便利な画像解析、画像生成中心のGPTsが満載です。
詳しくはこちらのWebサイトに一覧表がありますので、興味がある方はぜひご覧ください(詳細は画像をクリックして当社Webサイトへ)↓👇


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