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カンヌ映画祭2023日記 Day9

24日、水曜日。7時起床。久々に5時間寝たのに、あまり爽快感が無いのはどうしてだろう…。7時のチケット取りが本日からはないとはいえ、今朝8時半の上映のチケットが無いので、列に並ぶことを考えると6時半に起きるべきだった。
 
とぼやきながら、朝食のパンにハムを挟み、クロワッサンとともに持ち出して外へ。本日も快晴なり。道中でパンを頬張りながら急ぎ足で会場へ向かい、「ラストミニッツ」列に並んだのが7時50分。すでにかなり長い列が出来ていて、やはりあと10分は早く来ておきたかった!
 
無事に入場できたのはいいのだけど、最上階の最後部に近い席になってしまい、そこから見える画面のサイズはスマホより小さい。カンヌを「体験」するにはこれでもいいかもしれないけれど、まともに映画が見たいとなると、ここからではなかなか厳しい。
 
見たのは、コンペのウェス・アンダーソン監督新作『Asteroid City』(扉写真も)。冒頭から細かい設定の説明が一気に始まるので、いきなり集中が強いられ、なかなかすぐに入れずに苦労してしまう。とはいえ、各シーンに有名俳優(スカーレット・ヨハンソン、ジェイソン・シュワルツマン、トム・ハンクス、マット・ディロン、エイドリアン・ブロウディ、エドワード・ノートンなどなど無数)が出てくるゴージャスさはこの上なく、パステル&レトロ調のモダンアートを楽しむという、いつものウェス・アンダーソンだ。珍妙な物語もキュート。

"Asteroid City" Copyright 2022 Pop. 87 Productions LLC

ただ、まともに見たと言える環境ではないので、感想は控えて日本公開時にじっくりと再見しよう。今朝は起床時間の設定を間違えた自分を責めるしかない…。
 
すぐに移動し、隣の会場の「ラストミニッツ」列に並ぶ。知人がチケット保有者の列に並んでおり、先に入場するので席を確保しておいてくれるという。ありがたい。問題なく入場が出来て、良き席に座れて一安心。
 
大画面で堪能したのは、マルコ・ベロッキオ監督新作『Kidnapped』。さすがベロッキオ、19世紀の宗教スキャンダルを重厚で格調の高いドラマに仕上げており、実に見せる。
 
1850年代に、ボローニャに暮らすユダヤ人一家の6歳の息子が、カトリック教会によって連れ去られてしまう。誕生時に世話をしていた乳母が、秘密裏に洗礼を受けさせており、教会としてはユダヤ教徒でなくキリスト教徒として育てる義務があるというのが名目である。その命令は法王によるものであり、子供を奪った行為に対し、世論は法王に反発する。

"Kidnapped" Copyright 2023 all rightsreserved/ibc movie/kavac film/ad vitam production/the match factory/arte france cinema

実際に起きた事件の映画化。ベロッキオはドラマシリーズの前作『夜のロケーション』(22)で1970年代の「赤い旅団」によるキリスト教系政党のアルド・モーロ党首誘拐事件を(再び)扱い、そこでは(トニ・セルヴィッロ演じる)法王は人質奪取に奔走する人間的な人物として描いていたのに対し、今回の法王は権力をふりかざす俗悪な人物として描かれ、ベロッキオのキリスト教に対する相対的なスタンスが伺える。宗教と誘拐が関連する『Kidnapped』はベロッキオにとってまさに格好の題材なのだ…。
 
『夜のロケーション』で誘拐されるモーロ党首を見事に演じたファブリツィオ・ジフーニが、今回の『Kidnapped』では逆に誘拐する立場として、実行現場を指揮する憎々しい神父を演じているのも印象に残る。音楽も実に効果的。『夜のロケーション』と『Kidnapped』を連続して鑑賞すると、ベロッキオの衰えを知らない健在ぶりが伝わってきて非常に心強い。

その後は、ミーティングを数件行ってから、モロッコ映画と、インド映画を鑑賞し、ホテルへ。この2本の感想を書きたいと思いつつ、本日もここまで来て睡魔に抗えなくなってしまった…。1時半、ダウンします。

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