矢田部吉彦

東京国際映画祭で作品選定ディレクターを担当していました。2021年4月よりフリーランス…

矢田部吉彦

東京国際映画祭で作品選定ディレクターを担当していました。2021年4月よりフリーランス。大抵映画のことを考えてますが、ランニングしたり、落語行ったり(自分でやったり)もします。

最近の記事

カンヌ映画祭2024予習「監督週間」編

2024年のカンヌ映画祭予習の4回目は、「監督週間」部門です。厳密に言うとカンヌの「公式部門」ではないのですが(事務局も異なる)、実質的にはカンヌの一部であって、監督週間に選ばれた作品も堂々たる「カンヌ作品」です。23年からジュリアン・レジさんが新ディレクターに就任し、今年が2年目。レジさんは23年12月に来日して「監督週間 in Tokio」の開幕に立ち会ってくれました。2年目の選定に対して並々ならぬ意欲を示していたのが印象的です。果たしてどのようなラインアップになったのか

    • カンヌ映画祭2024予習「特別上映」編

      カンヌ2024予習の3回目は、「特別上映」などの「その他の公式部門」を予習します。「公式部門=Selection Officielle」には、「コンペティション」と「ある視点」に加え、その他のサブ部門が細分化されて存在します。その他の部門の違いはなかなか分かりにくいのですが、「その他」という呼び方は完全に不適切で、超重要作が入っているので絶対にチェックが必要なのです。 「公式部門」のうち、ここでは「野外上映」と「クラシック」は割愛します(とはいえクラシックは現在とても重要な

      • カンヌ映画祭2024予習「ある視点」編

        2024年カンヌ予習ブログの2回目は、「ある視点」部門を予習します。賞がある「第2コンペ」的位置づけですが、かつてはメインコンペからこぼれた作品が入る(ように見える)ことがしばしばありました。2021年に大幅に方針が刷新され、以降は若手プッシュ部門に切り替えています。よって情報量が少ない作品も多く入りますが、それだけ楽しみな部門でもあります。 【ある視点部門】 〇『Norah』タウフィク・アルザイディ監督/サウジ・アラビア アルザイディ監督は、Internet Mo

        • カンヌ映画祭2024予習「コンペ」編

          第77回を迎えるカンヌ映画祭は、2024年5月14日に開幕し、25日まで開催されます。垂涎のラインアップが4月11日に発表され、23日に追加されました。もう追加はなさそうかなということで、果たして今年はどのような作品が選ばれたのか、部門ごとに予習していきたいと思います。 作品タイトルは原則として英題、国名は(分かる限りにおいて)監督の出身地としています。そして鑑賞前でかつ情報も少なく、記述内容に誤解があったらごめんなさい、ということでよろしくお願いします。 ということで、予

        カンヌ映画祭2024予習「監督週間」編

          新潟国際アニメーション映画祭2024日記

          昨年に引き続き、新潟国際アニメーション映画祭を訪れることにしました。2023年スタートした映画祭で、今年が第2回。昨年は観客として参加しましたが、それが縁となり、今年はコンペティション部門の選定をお手伝いし、そして会期中のQ&AのMCもいくつか担当することになりました。 なので、去年よりは「なかのひと」に近付いたので、あまり勝手なことも書けないのですが、せっかく行くので日記ブログを書いてみようと思います。 <3月15日(金)> 12時に東京駅へ。新幹線の改札に近い売店エリ

          新潟国際アニメーション映画祭2024日記

          「新潟国際アニメーション映画祭」コンペ作品紹介

          2023年に新しくスタートし、本年2回目を迎える「新潟国際アニメーション映画祭」が3月15日から始まります。もうこのタイミング(3月13日)では完全に遅いのですが、少しでもコンペの外国作品にお客さんに来てもらいたいと思い、まだ間に合うはずと念を込めてブログ書きます。 昨年、観客として参加したことがご縁となり、今年は作品選定をお手伝いすることになりました。コンペティションの作品を絞り込む作業に参加し、結果、とても魅力的なラインアップになったと誇らしい気持ちです。 しかし!昨

          「新潟国際アニメーション映画祭」コンペ作品紹介

          ベルリン映画祭2024予習ブログ

          ベルリン映画祭が2月15日に開幕です。 今年のベルリンは、例年にない緊張感の中で始まることになります。それは、ガザへの虐殺をやめないイスラエル政府に対して、ベルリン映画祭が明確に反対の姿勢を取っていないことが原因です。映画祭からの招待を辞退する作品も現れ、各所でボイコットを巡る議論が交わされています。 昨年(23年)のベルリン映画祭の開幕式には、文化大臣はじめ複数人の要人が登壇し「ベルリンは政治的な映画祭です」と声を合わせるように発言していたのが印象的でした。「親ウク

          ベルリン映画祭2024予習ブログ

          ベネチア映画祭2023予習「コンペ」編

          8月30日から、記念すべき80回目を迎えるベネチア映画祭が始まります。僕は行くことが出来ないのですが、コンペのラインアップがあまりにも豪華なので、地団駄を踏んでいます。この無念さと対峙するためにも、素晴らしいラインアップを予習するブログを書こうと思い立ちました。行けなくとも、カンヌに続き2023年はこれだけの重要作が世に送り出されているということを知るのも、重要なはずだと思う次第です。 表記について、原則として英語タイトル(英題が見つからない場合は原題)、作品の国籍は(分か

          ベネチア映画祭2023予習「コンペ」編

          カンヌ映画祭2023日記 Day12

          27日、土曜日。7時半起床。久しぶりにゆっくり寝られて気分爽快。本日の映画祭の公式上映は、コンペの再上映がほとんど。幸いなことに、僕はなんだかんだでコンペは結構見られたので、朝の上映は無く、少しのんびりしてから外へ。 9時15分にオーストラリアの知人と落ち合ってお茶して、すこし手伝うことになる仕事の話をする。 10時半から、昨夜に引き続き、一般封切りの映画館でカンヌ作品を見る作戦を敢行。今年のオープニング作品『Jeanne Du Barry』(扉写真も)が公開されてい

          カンヌ映画祭2023日記 Day12

          カンヌ映画祭2023日記 Day11

          26日、金曜日。6時半起床、7時15分に外へ。本日も天気は良さそう。昨日も結局終日晴れて、カンヌ後半は好天に恵まれた!気温は15度~23度くらいかな。 ここで、先日あまり書けなかったヴィクトル・エリセ監督新作『Close Your Eyes』の感想コメントを書いておこう。 かつて、映画の撮影中に失踪し、そのまま行方が分からなくなった俳優がいた。数十年後にテレビ番組がその事件を特集することになり、結局撮影が中止になったその映画の監督がインタビューを受ける。失踪した俳優の親

          カンヌ映画祭2023日記 Day11

          カンヌ映画祭2023日記 Day10

          25日、木曜日。6時10分起床、パソコン業務があったので1時間ほど机に向かってから、7時にシャワー、そして朝食へ。チケット予約のストレスが無いのは、やはり楽だ!7時半に外に出て、今朝は薄曇り。雨の予報もあるけど、どうだろう。 9時の上映はチケットが取れていたので、もっとゆっくり行ってもいいのだけど、早く並びたい習性を抑えきれず、8時の開場とともに入場。あてがわれたゾーンの中で最良の席を確保。あとは開映までゆっくりできるので、この時間は貴重なのだ。席でパソコンを広げ、この文

          カンヌ映画祭2023日記 Day10

          カンヌ映画祭2023日記 Day9

          24日、水曜日。7時起床。久々に5時間寝たのに、あまり爽快感が無いのはどうしてだろう…。7時のチケット取りが本日からはないとはいえ、今朝8時半の上映のチケットが無いので、列に並ぶことを考えると6時半に起きるべきだった。 とぼやきながら、朝食のパンにハムを挟み、クロワッサンとともに持ち出して外へ。本日も快晴なり。道中でパンを頬張りながら急ぎ足で会場へ向かい、「ラストミニッツ」列に並んだのが7時50分。すでにかなり長い列が出来ていて、やはりあと10分は早く来ておきたかった!

          カンヌ映画祭2023日記 Day9

          カンヌ映画祭2023日記 Day8

          23日、火曜日。昨夜は3時就寝で、ワインがまだ抜け切れていない重さを感じつつ、何とか6時に起床。3時間強の睡眠が1週間続いており、そろそろ出張の魔法も切れそう。でもまだ一応大丈夫。 7時に、最後のチケットトライ。もはや4日後の土曜日はクロージング日で、他に公式上映はほとんどないので、ダメモトで「セレモニー+クロージング上映」をトライしてみたら、当然のように取れず。まあもとより期待していないので、これは構わない。昨日カウリスマキとエリセが見られたので、もうあとは何があっても

          カンヌ映画祭2023日記 Day8

          カンヌ映画祭2023日記 Day7

          22日、月曜日。6時起床、7時にチケット予約勝負のルーティーン。4日後の、26日(金)のチケットを押さえる本日が、実質的に最後の勝負だ。結果は2勝2敗。まあ、最後に負け越さなくてよかった。本当に、この一喜一憂を考えると、来年は来るかどうか真剣に考えないとならないな…。 8時半から、コンペで、ブラジルのカリム・アイヌーズ監督新作の『Firebrand』。暴君として悪名の高いヘンリー8世の最後の妃となったキャサリン・パーの物語。ヘンリー8世と言えば、離婚したいがためにカトリッ

          カンヌ映画祭2023日記 Day7

          カンヌ映画祭2023日記 Day6

          21日、日曜日。6時起床、7時のチケット予約は2勝3敗の負け越し。3敗した上映は、「ラストミニッツ」列並びでクリアできることを願うのみ。 ところで、19日の日記で書いたことに関して、追記をしておきたい。アメリカの『The Feeling That The Time For Doing Something Has Passed』に言及した箇所で、ジョアンナ・アーナウ監督が自ら主演し、裸体を駆使して表現を行っていることに対し「インティマシー・コーディネーターの存在を不要にして

          カンヌ映画祭2023日記 Day6

          カンヌ映画祭2023日記 Day5

          20日、土曜日。6時起床、外の空はどんより色。7時のチケット予約は惨敗で、朝から気持ちもどんより。落ち込みながら、朝食へ。美味しいフランスパンで機嫌を少し取り戻し、外に出ると、やはり雨か…。 今朝も8時半の上映からスタート。コンペで、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督新作『About Dry Grasses』。小説のように映画を書くジェイラン、今回も堂々の3時間17分。現代の物語を古典小説のような風格で、激しい会話や文学調の一人称ナレーションを駆使し、ジェイラン世界を紡いでいく

          カンヌ映画祭2023日記 Day5