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何者にもなれない俺たちのブルース

(夜と)SAMPO 2nd mini album『はだかの世界』をリリースして1週間が経った。 

今回は初の全国流通版だったが、ありがたいことに2月度のタワレコメンに選ばれたり、ラジオ局のパワープレイに選んでいただいたり…
なんと今回のリリースに際して、ラジオ・TVなどの出演が30本超(!)、関西のみならず北海道、広島、愛媛、香川、福岡、…と各地で出演をさせていただくことになった。
ここに至るまで、多大なる協力をいただいた皆様に改めて感謝申し上げます。本当に、ありがとうございます!

順風満帆そうに見える「はだかの世界」のリリース。
しかし実はその裏で、人生で1~2番目に落ち込んだ日があった。
会社員とバンドの両立に苦しむ日々もあった。
全く順調とは無縁、人生に翻弄され続ける自分の姿がそこにあった。
今日はこのアルバムができるまでの顛末を徒然なるままに綴ってみようと思う。

昨年のちょうど2月。eo music try 20/21のグランプリを獲った。
関西最大級の音楽コンテスト。それも会社員をやりながら、初ライブから半年後のライブでグランプリ。
正直、「オレ、超サイコー!!」って思ってた。ずっとあこがれていた何者かになれた気持ちで。何かよくわからんけど、勝ったって思った。

一気にバラ色になった目の前の景色。俺を突き動かすものは一体何だったのか。その頃は、自己実現欲と承認欲求だった。これを機に一気に突き抜けてやろうと。さらに大きくなりたいという気持ちで突き進んだ。

グランプリを取ってからすぐレコーディングスタジオを抑えた。2か月後に、レコーディング。曲はまだできてない。でもやれると思ったし、実際にやった。5月と6月にシングルを配信リリース。そして息をつく間もなく10月にはさらにシングルをリリース。そして年始にミニアルバムを出す告知をする。これを会社員しながらやれるんだから自分たちはすごいと思った。
思えば、この時メンバーに大きな負担を強いていたし、自分ひとりで何かできていたわけでは、ちっともない。冷静に考えて、すごいのは自分ではなくて、無茶苦茶してる俺に文句も言わずついてきてくれた、素晴らしい楽曲を仕上げてくれたメンバーだ。でも、その時の俺は思いあがっていた。

東京でのイベントの動員も増えていたのもあり、コレはいけると思った。
でも、現実はそうではなかった。大阪のイベントの動員が増えていなかったのもある。そして、時節柄どうしてもコロナで…と言い訳したくなるような情勢もあった。周りの人も「コロナやから仕方ないよな~」と口々に言ってくれた。でも心底焦っていた。

その焦りが出たのか、うまく自分を表現できなくて、弱さがポロっと出たライブをしてしまったことがあった。
今思えば愛のムチというか、そこまで言ってもらえて幸せ者だと思うのだが、いろんな人からダメ出しを受けた。曲がよくない、もっと表現を磨くべきだ…プライドとくだらない承認欲求で削られた、危なっかしい自分の気持ちの均衡が、崩れ落ちる音がした。

そのころに重なって、バンドの業務で一つ大きなミスを起こした。完全にキャパオーバーだった。自分であれこれ勝手に背負って、自爆して、情けない限りだった。

そんな時期に、仕事終わりに近所の居酒屋へ配偶者と一緒に晩酌をしに行った時のことだった。
1杯目の生ビールを飲み干した後、気づけば俺は、くたびれた居酒屋で訳も分からず泣いていた。大の大人が、大号泣していた。うつむいた先の、ボロボロの薄汚れたテーブルを睨みつけながら、そして、しょっぱいのか苦いのかわからない味を噛みしめながら。配偶者もいきなり夫に泣かれて普通は困るだろうに、何も言わずただそこにいてくれた。ありがたかった。

楽しむために続けた音楽を苦しんでいる自分が滑稽だった。
しかし、これまた俺を救ってくれたのも、音楽だった。

お守りみたいな曲がある。仕事で落ち込む日々も、死ぬほど忙しそうでくじけそうなときも、自分を鼓舞してくれる曲。
「間違いだらけの答えになれ」とその曲は叫んでいた。
歌詞の一言ひとことが俺を救ってくれた。救われるだなんて、大それた書き方だ。しかし、文字通り、俺は本当に救われたのだ。
このバンドのために曲を書いた。もうそれは、届かないラブレターなんだけれども。それでも、曲を書いた。曲が出来上がった夜、俺は涙を流した。


また、もう一つ、俺を救ってくれたものがある。
サウナだ。

笑われるだろうか。笑ってくれたっていい。俺も、ちょっと自分でもウケている。サウナて。
でも、人生最大の悩みから解き放ってくれたのは確かにサウナだった。汗を流しに流して、自分と向き合った。勝手に落ち込んでいるけど、この1年身勝手をしていたのは自分だ。周りに感謝もロクにせず、自分だけで突っ走って、自分を過信して、でも無茶苦茶他人に嫉妬して、羨望して…何者かになりたい自分の欲望を埋めることだけを考えていたのは紛れもない俺じゃないか。

そんな思考をとめもせず、ただただ受け止める。それでもいい、その通りだ。俺は無力だった。それをまずは受け容れよう。

サウナから上がり、屋上で風に吹かれた。そこにあったのは、中途半端な高さの山と、あまり流行っていない風の自動車の教習所。なんでもない、大したことのない景色だ。

ただ、それが妙に美しく思えた。

これだ。これこそが、はだかの世界だ。
思わずスマホで写真を撮った。まったくインスタ映えとは程遠い冴えない写真ですぐに削除してしまった。
でも、あの時に見た景色は一生忘れない。俺だけの景色だ。

ここには何もない 僕は何者でもない
それでも息を吸い込んで
生きるのさ 素晴らしき くだらぬ世界のために
笑い話を携えて

アルバムの表題曲「はだかの世界」落ちサビの歌詞は、これに決めた。すっと出てきた。ひねくれず、自分そのままの言葉だった。


2nd mini album『はだかの世界』はそんな自分の葛藤と、そこからの解放を描くノンフィクションの作品だ。
何者にもなれない俺たちのブルースだ。

真の自己肯定感とはなんだ?
「自分ってできるんだ!」って思うことじゃない。
「自分が何者でもないと知っていること」だと、今は思う。

でもそれは諦めではない。決して。
今でも何者かになりたいと思っている。でも、何者でもないと知っているのだ。これは大きく違う。

それがわかった自分は、人を頼る大切さを知った。メンバーに打ち明けた。できてなかったこと、気丈にふるまっているだけで大したことない人間だという事も。
「そうだったんだ」と優しい声が聞こえた。「俺は次からコレ、手伝うよ」と言ってくれたメンバーがいた。なんか、やっと自分が打ち解けられた気がした。ここまで本当に申し訳なかった。このバンドを組んで本当に良かったと思えた。ありがとう。

今週土曜日から東名阪ツアーが始まる。
タイトルは「HADAKA NO SEKAI TOUR」だ。

何者にもなれない俺たちのブルースを歌う
そして、現代を生き抜くあなたのどんな感情もPOPに昇華する
これが、今の俺のやれることだ。

これからも、もがく。絶対もがく。
会社員をやりながら、音楽もマジでやる。
メンバー全員を幸せにする。
日々を暮らしながら続けられる形を、模索する。
それを凡人の俺がやるから、カッコいいんだって思ってる。



2nd mini album 『はだかの世界』 視聴ページ

HADAKA NO SEKAI TOUR

▼名古屋編 2月12日(土)open 17:00 / start 17:30 CLUB UPSET
  ゲスト:Subway Daydream https://twitter.com/subway_daydream?s=20
                猫を堕ろす https://nkwors.com/
▼東京編 2月19日(土)open 17:00 / start 17:30 shibuya eggman
 ゲスト:ベランダ https://verandah-band.jp/
 
    Superfriends https://superfriends2.tumblr.com
▼大阪編 3月19日(土)open 17:00 / start 17:30 大阪 Live House ANIMA
  ワンマンライブ!!

[Ticket]
前売り料金 ¥3,500-(D代別途必要)
◎e+ https://eplus.jp/yorutosampo/
◎チケットぴあ 
 https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2131281
◎ローチケ 
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