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遊びは最高のトレーニング

Karen Pryor Academy ライブエピソード#33では、Karen London博士をゲルトスピーカーに、犬の攻撃性の修正に遊びを取り入れた画期的アイデアのお話しをききました。

カレン ロンドン博士 PhD Karen Rondon 紹介

カレン・B・ロンドン博士は、公認プロフェッショナルドッグトレーナー、公認応用動物行動学者であり、特に攻撃性などの深刻な行動問題を抱える犬との関わりを専門としています。1997年から専門的に犬と接するようになり、1対1のコンサルティング、グループクラスの指導、トレーナーや獣医、保護施設のスタッフ、一般向けの犬のしつけや犬の倫理学についてのセミナーを長年にわたって行っています。

UCLAで生物学の理学士号を、ウィスコンシン大学マディソン校で動物学の博士号を取得。新熱帯の社会性スズメバチの防御行動と、2種のスズメバチ間の営巣関連性を研究。彼女の研究および学術出版物は、同居する種間の相互作用、防御・攻撃行動、社会行動の進化、種内・種間のコミュニケーション、学習、親への投資など、多様なテーマを扱っている。

北アリゾナ大学生物科学部の非常勤教授として、ニカラグアとコスタリカで熱帯生態学と保全学のフィールドコースを楽しく教えている。また、昆虫の社会的重要性に関する新入生のクラス "Sex, Bugs, and Rock 'n' Roll "も教えている。

TheBark.comのライター、Arizona Daily Sunの動物コラムを担当し、犬のトレーニングや行動に関する6冊の本を出版しています。近著に「Treat Everyone Like a Dog: How a Dog Trainer's World View Can Improve Your Life」があります。 

遊びという行動

遊びは非常に強力な影響力を持っているが、その行動に目的がない、とロンドン博士は説明しています。たぶん遊びは生活していく中での模倣であり演習であると考えられます。若い個体は遊びを通して様々なことを学んでいきますが、そのまま、成長してからも年を重ねても、遊びは大きな原動力となる行動なのです。

遊びを強化子に

リアクティブの治療も専門にするロンドン博士は、遊びをその行動治療に取り入れています。

不快に思うものを拮抗条件付けで感情変化を狙うのが、古典的条件付けを使った典型的なるリアクティブの治療ですが、それだけでは十分に感情変化を起こせない、また起こせても効果が遅く希薄なことがあります。刺激に対して食べ物を見せても、瞬時で食べ終わり対象物に焦点を戻したり、緊張を解くことなく食べ物を口にしたり、食べ物を与えるだけで感情変化まで持っていくことが難しい場合、遊びを入れることで、瞬時にしてその場の状況を反転させようとすのか彼女の試みです。

事例1:犬を見ると自分の犬が攻撃的になる
①前方から犬が接近
②すぐに方向をかえ接近する犬から距離を取る
③同時に犬と走る
この場合、走る事が犬にとって遊びになります。飼い主と一緒に走る事を楽しめる犬なら、向かってくる犬の事は瞬時に忘れて喜んで走り出すでしょう。オモチャが好きな犬には、鳴り物おもちゃや、引っ張りっこロープを使っても構いません。遊ぶことで犬の気持ちを対象物から遠ざけ、ネガティブな感情をポジティブにすることが目的です。そもそも、攻撃的にならざるを得ない対象物に遭遇した時、犬はそこから遠ざかりたいとはずです。走ってその場から離れることは犬にとって好都合、望むところなのです。これは回を重ねると、望まない対象物を見ると「遊びが始まる」という合図になり、犬は遊ぶ事を選ぶようになります。(古典的条件付け)

事例2:来客に対して攻撃的になる
①来客が玄関ドアノックする、またはドアの外に立つ
②同時に引っ張りっこオモチャを投げ遊びだす
③これを数回繰り返すと、来客の気配と共に遊びを選ぶようになる。(来客、ノックやドアベルが遊び開始のキューになる)
④来客が入って来ても遊び続ける
これもいわゆる子連的条件付けですが、食べ物ではなので持続性が高く、犬自ら行動を起こせるところが魅力的です。

「遊び」か「食べ物」か?

それほど遊び好きではない犬もいて、必ずしも遊びが有効とは限らないかもしれません。攻撃性の治療に遊びを取り入れる前に、その犬の生活状況、経歴を確認して、遊びの価値を確認しておく必要があります。

食べ物は食る物でしかありませんが、遊びは奥深く、遊びの中に数多くの行動や思考が含まれています。ロンドン博士が遊びをそのトレーニングに取り込むことを強く奨励するのは、高度なトレーニング技術を持たない一般飼い主でも気楽に取り入れることが出来るからです。

犬のとトレーニングプログラムに迷ったら、まずは犬と遊んでみては如何でしょうか。遊びを通して学び、新しい発見をし、そこからまた新しいとレーニングのヒントが出てくるに違いありません。


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