僕はもう一度「光の戦士」になれた。「ファイナルファンタジー3」クリア後の雑感。

 という訳でクリアしてきたよ「ファイナルファンタジー3 ピクセルリマスター版
 メチャクチャ面白かった。プレイ時間は最後のセーブデータで19時間42分。実に20時間ほどに及ぶ冒険。
 最終レベルは56。じっくりめに遊んだから相場よりは少し高めなのかな。

 雑感、書いていこう。
 あと前回の記事がこっち。


物語の縦軸。



 前回の記事でも書いたんだけど幼心にうっすら記憶に残っていたタイトルで、例えばジンとミスリルの指輪とか、ドラゴンの巣での絶対に勝てないバハムートや同じく絶対に勝てないネプト竜。
 オーエンの塔とデッシュとの別れとか、弱点属性変更バリアチェンジを操るハイン、海に沈んだ大陸に水の巫女エリア、四人のおじいさんと下水道のデリラ婆さん、それに浮遊草の靴。ゴールドルの金ピカの館、サロニアの怪鳥ガルーダと竜騎士伝説、古代遺跡に眠る巨大戦艦インビシビル、暗黒剣で突破する暗黒の洞窟。ドーガとウネ、禁断の地エウレカに眠る最強のチカラ、魔王ザンデと暗闇の雲……ってもう殆ど全部か……? いや、要所要所は覚えてるんだけど、「全編を通しての縦軸の物語」に関してはうろ覚えだったのがよく分かった。

 これ、単純な勧善懲悪の物語じゃなかったんだね。
 主人公たちが「光の四戦士」って呼ばれているだけあって、パッと見、わかりやすく光の戦士たちが闇の勢力をやっつけて大勝利! ワッショイ! な感じじゃあなくって、グルガン族の予言者たちも言ってたけど作中世界には「光と闇のバランスが崩れる事で世界が無になってしまう」って大前提がある。
 だからゲーム内では闇のチカラが氾濫するから光の戦士たちが頑張るだけであって、前史では光のチカラが氾濫した際には闇の戦士たちが立ち上がってそれを食い止めたって経緯があったし、闇の世界でダーククリスタルを守る闇の四戦士のチカラを借りて初めて最終ボス・暗闇の雲に打ち勝つ事ができるって仕組み。

 ある意味で中庸こそが肝心なんだね、みたいな読後感がある物語だった。

 たぶん90年代のゲームやファンタジーの世界だと、やっぱり悪役、闇の勢力みたいなのは正義、光の戦士である主人公たちに最後は倒されて~って話作りが多かったと思う(別に資料はない)んだけれど、だからこそ「光のチカラだけでは倒せない」最終ボスの存在と、それに対抗するために闇の四戦士のチカラも借りて皆で抗う姿が面白い。
 (実際、最終ダンジョンの闇の世界に行っても4つのダーククリスタルを回って闇の四戦士のチカラを借りずにまっすぐにラスボスに行くと為す術もなくボコボコにされてゲームオーバーになるよ
 

ゲームバランスについて。


 当然、現代の遊び方に沿って作られたリメイク版という側面もあって、随分遊びやすかったような気はする。私はもうファミコン版なんてキチンと覚えてないし、DSリメイク版はまた別の味わいがある……と聞いているんだけれど、現代でFF3を遊ぶ! ってなったら良い選択肢になり得るんじゃないかな……なんて思える。
 私の最終パーティは賢者、魔剣士、忍者、魔界幻士と、ファミコン版なら忍者、忍者、賢者、賢者で固めるのが基本的には最適解だったろう編成からは若干、逸脱した感じではあったんだけれど、それでも十分楽しめた。
 いや、物理職なら最終的に忍者一択って言って良い程の性能だったんだけれど……それは後のジョブ雑感で書こ。

 各種パラメータはレベルに依存するからジョブチェンジで各ジョブごとの補正がかかる仕組みみたいなんだけれど、HPに関してはレベルアップ時の体力で上昇量が変わるらしいので、「レベリングをする時は体力の高めのジョブでやるのが良い」って聞いてからはバイキング空手家空手家空手家の編成でしばらく「ひきつける」と「けり(×3)」で遊んだりね。
 なるべく全部のジョブを使って遊びたいな~って思ってたんだけれど、最終的に風水師と幻術師の2つはほぼ使わなかった気がする。それに竜騎士もほぼガルーダ戦のみのスポット参戦……あ、いや、魔導師ハイン戦を強引に突破したから学者も使わなかったか。
 ビジュアルは好きだったんだけどな学者。

 だから何も知らない状態で遊んだ人よりかはHP面ではラクできたのかも知れないけれど、それでもそこまでムチャなバランスとは感じられなかったかな。何よりスマホのゲームだから中断セーブも出来たし、回復の泉なんかも用意されている。最終ダンジョンのクリスタルタワー~闇の世界だとMPの枯渇が気になってくるんだけれど、たまに現れるグリーンドラゴンなんかが落とすエリクサーを集めておけばそれまでのゲーム内で入手した数と合わせて使っていけば何とか……って思えるバランス。
 後は闇の世界で一つでもダーククリスタルを開放すればダーククリスタルのチカラでHP・MP・ステータス・戦闘不能が回復して貰えるからだいぶラク。まぁ、その分ボスもちょっと強いんだけど。


残るジョブ雑感。


えーと。土のクリスタルからか。


・導師
 ネコミミフードの可愛い白魔道師の上位互換。
 まぁクルルだよクルル。
 白魔道師の枠をそのまま引き継ぐ形で編成されるよね。
 パーティがピンチに陥ってない時は地味にエアロとかエアロガとか撃ったり、アイテムとして使うと攻撃魔法の効果が得られるタイプの杖をぶんぶん振ってブレイク撃ったりして過ごしてた。

・魔人
 カボチャズボンが特徴的な黒魔導師の上位互換。
 でもマジで全く使ってない。ごめんね。
 空手家のけりとか、魔剣士のぜんぎりとか、ピクセルリマスター版はファミコン版と違って有用な全体攻撃方法も充実してるからか、相対的に魔法系ジョブの価値は下がっちゃってるかな……? ってのは思わなくもない。
 あと攻撃魔法って括りで行くなら後述の魔界幻士に任せてたし、最終盤は全魔法が使える賢者も登場するしで、純粋な黒魔法オンリーの存在ってど~しても影が薄くなっちゃったかなぁ……と。

・魔界幻士
 お前にふさわしいソイルは決まった!(今度こそ!)
 正確には召喚魔法の効果が白or黒で、幻術師はこのどちらかが出るんだけれど魔界幻士は灰(合体)で一番強い効果が一択で出る……って仕様なのと、召喚魔法次第では白や黒にも有用なものがあるらしいので、「幻術師の純粋な上位互換」って呼び方もヘンなのかも知れないけどね。
 まぁでもバクチ要素は求めてなかったし。
 どうも召喚魔法は熟練度で威力の伸び幅が大きめに取られているらしく、熟練度10程度の賢者の放つバハムル(バハムート)と熟練度70前後の魔界幻士のそれでは威力が全然違うんだよな。だから最終パーティはもう熟練度上げるの面倒だしなって事で魔界幻士で続投して貰ったんだけど。

 HPは低めらしいんだけどMPが高めで、全体攻撃の召喚魔法をガシガシ撃っていくだけで敵のHPをガシガシ削っていけるのはこれぞFFの召喚魔法だよな~って気分に浸れて嬉しい。

・忍者
 全ての武器を使いこなす最強の物理職。
 だからナイトじゃないけど騎士剣(って分類は正確には本作にはない)のエクスカリバーもラグナロクもブンブン振り回して戦えちゃう。
 でも最強の武器は禁断の地エウレカで買える手裏剣を使った「なげる」。
 「なげる」が実質手裏剣専用のコマンドなのがちょっともったいない気はするけど、これでFF5みたいに火遁の術とか投げられるようになったらますます最強アタッカーになってしまうからこれで良いよ。
 手裏剣より更に強い風魔手裏剣はFF4からだったっけね。
 パラメータ的にも同レベルの魔剣士にちからで20くらい引き離してたのでたぶん圧倒的に強い。んだけど、確か最終盤の敵は闇属性に耐性があるとかそんな理由で正宗&円月輪の魔剣士に対してエクスカリバー&ラグナロクの忍者がどっこいどっこいのダメージしか出せてなかった気がする。
 あとは入手が終盤なんで熟練度の差が大きかったかな。

・賢者
 全ての魔法を使いこなす最強の魔法職。
 「賢き者」なんてドスが利いてないんだよナって感じはするけど、まぁ普通に最強職の一角。だってケアルガもアレイズもメテオもバハムルも使えるし。でも今作は魔法Lvごとの使用回数制……いわゆるウィザードリィとか、FFなら1みたいな仕様……なので、同じレベル帯にあるメテオとバハムルは使用回数が共有されちゃってるのが地味に残念。
 とはいえやっぱり全魔法が使えるってのは純粋にムチャクチャ強い。たぶん二人組み込んで回復魔法の全体がけとかし続けてたらそれだけでラクラク進められてんじゃないのって思うんで、忍者と同様一人ずつに絞ったくらい。バランスブレイカーとまでは思わないけど、こりゃちょっと強すぎるだろうなって思ったし。
 それでも前述の忍者と同じく入手が終盤なんで、熟練度の差から魔界幻士の放つ召喚魔法の方がダメージは圧倒的に出てたね。やり込み次第では十分賢者が逆転してたんだろうけど。



魔王と化した男、ザンデ。

 ラスボスの暗闇の雲は魔王ザンデが闇のチカラを氾濫させた事で現れた、世界を無に帰す最強の混沌! みたいな存在なんだけれど、このザンデって男、割と不遇な悪役な気がしてたりもする。

 だって初回で敗けイベントとかないし。
 「波動砲」とかいう超ハデかつカッコイイ技も撃ってこないし。

 影の薄さで言えばFF1のカオスよりちょっと濃い、くらいなんじゃないかな彼。ゲームのラスボスはさっきから書いてる暗闇の雲だし。いや、暗闇の雲も属する「ポッと出のラスボス」ってカテゴリで言えば4のゼロムスとか5のネオエクスデスとかもそうなんだけれど、こう……「魔王ザンデ」って名前の割には結構影が薄い気がしてならない……だって魔王だぜ……?


 さすがにドラクエ5のゲマみたいな超存在感出せって言われても中々難しいし、あれのお陰でその上役に当たるイブールとかは死ぬほど影が薄いし、なんならラスボスのミルドラースなんかも不遇な存在な気がしてるんだけれど、それでも今作におけるザンデって4のゴルベーザとか、5のエクスデスみたいな立ち位置(だよね?)って考えると…………やっぱり、なぁ? って。

 一応、序盤の浮遊大陸にあるオーエンの塔でメデューサが言及してたり、水のクリスタルの時も「ザンデ様の命令で~」ってクラーケンが襲ってきたり、道中で名前は出てくるし、兄姉弟子にあたるドーガとウネからもコメントはあるので次第に存在感は出てくるんだけれど、いまいちパッとしない感じは否めない。
 姿が見れるのは終盤のクリスタルタワーだし、印象的な台詞がないってのも大きいかな。せいぜい魔竜の呪いで四戦士を罠にかけてやったぞ! ファファファ 死ねい! とかその程度でしょ。
 やっぱりゲームの中盤で一度対決とかしないとダメなのかも知れない。
 ゴルベーザみたいに黒竜も呼べばバッチリですとも。

 と、ここまではゲーム内での影の薄さから不遇っぷりを書いたんだけれど、落ち着いて考えるとちょっと作劇的にも可哀想な役回りでもあって。
 ザンデは元々はドーガやウネと同門。
 いにしえの偉大なる大魔道師ノアの弟子として魔法の研鑽をしていたらしいんだけれど、ノアが引退するタイミングだったかに弟子に分け与えたものが微妙だった。
 ドーガには「強大な魔力」。
 ウネには「夢の世界」。
 そしてザンデには「人間としての命」……。


 ……いや人間としての命って言われましても……! ってなったのがザンデがグレて魔王を志した原点オリジンみたいに描かれているんだけれど、でもなんかドーガもウネも「人間としての命こそが最も尊いものだったのだ」「ザンデにはそれが分からなかったみたいだね……」みたいな論調だから書いてて私も不思議でならねえ。
 パッと見でやっぱり凄いじゃない。強大な魔力! 夢の世界! って。
 それに比べていきなり人間としての命だからな。

 いや、そりゃ現代日本人の私からすりゃ人間としての命がかけがえのない尊いものって事くらいは分かるんだけれど、でもバシバシ魔法を撃ったりしてる世界観でいきなり命とかお出しされましても「えっ 寿命あるの!?」みたいにならなかったのかなーって。


 まぁそんなこんなで結果としてザンデは土のクリスタルのチカラで大地震を起こして人々を石化させて大陸を海の底に沈め、自分はクリスタルタワーに籠もりながら浮遊大陸も沈めるべく動力機関のオーエンの塔にメデューサを差し向けたり、闇のチカラを氾濫させてこの世をメチャクチャにしてやろうとする魔王と化した訳なんだけれど。
 だったら大魔道師ノアもザンデに「人間としての命というのはこういう理由でとても尊いものだから、大事にするんだぞ」みたいなフォローが一言あっても良かったんじゃねーの。くらいに思わんでもない。

 いや、まぁ、その尊さは自分で気づかないと意味がないタイプのものだったのかも知れないけれど、それでもせめて「いつかその意味が分かる日が来るのだ……!!」とか、そういう感じの何か……フォローを……なんで「命」に説明がないんだよ。教えはどうなってんだ教えは! ってなる。なった。私はな。




 ところで物語と言えば、村の四人のやんちゃ盛りの悪ガキ四人組に背負わせるには重たい話だったよなーとか。そういう。
 でも当時のファミコンのゲームってやっぱりメイン客層は(いや、これは今もか?)子どもたちだろうし、そういう冒険譚に憧れを持ってもらうにはそのくらいの年齢のキャラクターたちを主人公にした方が良かったのかなーとも思う。
 なんにせよ、今年37歳を迎えるおじさんが昔を懐かしみながら、ノスタルジィを拾い集めるように遊ぶにはとても充実したゲームだった。
 やっぱりこのゲームが好きだよ私は。
 30年経とうが色褪せない名作であると心からそう思えるよ。


 最後にファミコン版の「悠久の風」のリンクでも貼って終わろう。
 これを聴く時、やっぱり私はクリスタルやジョブチェンジに胸を踊らせた、子どもの、……光の戦士だった頃に戻れるような気がしてるから。

 


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