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【新規事業向け】社内決裁は段取りが十割

こんにちは!
株式会社プロフィナンスの木村 義弘です!

20年近くの経験とノウハウを濃縮した「魂の事業計画講座」(全体像見出しはこちら)を連載しています!

さて、前回記事では「事業計画を活かす!意外に知らないPDCAの進め方」と、事業計画の活用方法について触れましたが、今回は資金について考えたいと思います。
資金については、「スタートアップ向け」、「大手企業の新規事業様向け」、2つの記事に分けて、お伝えできればと思います!

本記事は、大手企業内の新規事業様向けとなります!
スタートアップ側はこちら


本記事でわかること

まずは、本記事を通じて読者の方が何を得られるのかご提示します。

【本記事でわかること】
1. 新規事業決裁を進めるには?
2. 決裁を進める上でのポイント

新規事業承認でまず大事なこと

新規事業で社内決裁・承認を得るためにまず押さえておきたいこと、当たり前ですが「投資判断基準を知ること」です。

自社が通常どのような基準で投資判断を行っているのか、まず社内で確認してください。
この基準次第で、事業計画をつくるスコープも変わってきます。

代表的な投資基準

代表的な投資基準でいうと、
①回収期間ベース
②価値ベース
③収益率ベース
です。
MBAでファイナンス講師をしている立場からは「伸びしろだなぁ」と強く思いますが、インタビューベースでまだまだ90%くらいの日本企業は①の回収期間、特に「3年単黒、5年累損解消」(=3年で単年度/単月で営業利益ベースで黒字化させ、5年で過去の累積損失、つまり投資元本+初期の赤字分を取り返す利益を出す)が「南無阿弥陀仏」レベルで浸透している印象です。

一方、将来の事業計画に基づいて、DCF・NPVで評価する方法や、同じく将来の事業計画に基づいてIRRを算出して、会社としてのハードルレートを超えるかどうかで考えるという企業も商社や大手のインフラ企業等、大規模な投資をすることが前提となる企業では当たり前のように採用されていたりします。
*DCF、NPVやIRR等については、ファイナンス論点になりますので詳述は別記事に委ねさせてください。そのうち私自身が記事を書くかも…

投資基準による事業計画の作成スコープ

結論から言うと、
✓ 回収期間ベースではPLのみでよい(かもしれない)
✓ 価値ベース・収益率ベースでは、PLに加えてBSやCFも作成する必要あり
 


回収期間ベースだと、最初の投資額とそれを賄うに足る利益(営業利益ベース)が分かればよいので、損益計算書(PL)ベースの計画があれば十分といえるでしょう。

一方、価値ベース、IRRベースですと、PLだけでなく、キャッシュの動きにも注目する必要や追加の設備投資も必要なので、キャッシュフロー(CF)や貸借対照表(BS)の計画(少なくともキャッシュフローだけでも)必要となります。

企業によっては、PLのベースを作れば、財務部門や経営企画部門の方がBS、CFの部分をサポートしてくださるかもしれません。
いずれにしても「来週、決裁の場だ!」というときに、
「あれ、うちの投資基準を考慮したら、PLだけじゃダメじゃない?」と気づいてしまうと手遅れ…となりかねないので早めに確認しておいていただけるとよいかと思います。

決裁を得るには段取りが十割

これを踏まえた上で事業計画を作成します。事業計画作成で必要なことについては、今までの記事で大切なポイントを語ってきたのでそちらをご覧いただければと思います。なので本記事では、新規事業に関して意思決定者から承認・決裁を得るために大切なポイントを語りたいと思います。

決めては見出しの通り「段取り」です。
そもそも、「いつ決裁のタイミングなの?」というと、1ヶ月に1回だったりしますので、意思決定の会議体、会議体の開催時期・頻度等を押さえておく必要があります。そのスケジュール感も含めて段取りが大切です。

新規事業決裁における不都合な真実

さて、事業会社が投資判断を仰ぎ、決裁承認を得るために「こう進めれば大丈夫!」という必勝法…
最初に告白させてください。

そんな必勝法はありません!

スタートアップの資金調達であれば相手にするのは「プロの投資家」です。相手がプロならば、投資判断時の目線について、一定のセオリーを持っていらっしゃいます。
投資家さんの目線についてはスタートアップ側の記事で言及しています。

一方、大手企業の投資判断をする方々はそんなセオリーを持っていません。トレーニングも受けていません。
お叱り覚悟で書きますが、大手企業で投資判断に携わる方は既存事業を進める上ではプロかもしれませんが、「新規事業」また「その投資判断」については残念ながらプロとは限りません
素人といっても差し支えないでしょう。そして、自分が素人であることを認められない方がほとんどです。

結果何が起きるか。
「自分が気になるところ」に目が行く(そして発言したくなる)
ことになります。

マーケティングバックグラウンドの方は、マーケティングの細かいところにツッコミを。経理の人は事業計画における会計科目の取り扱いに関する細かいツッコミを…と思い思いに「自分がわかる / 強いところ」にツッコミを入れたがります。

意思決定者・決裁者の皆様のバックグラウンドの濃淡は、企業ごとに様々ですので、
決裁・承認を得る必勝法はないと言わざるを得ません。

これを踏まえて。
承認を得ていくには、段取りが大切と申しましたが、具体的な方向性として2つご提示できます。

  1. 健全な事前の根回し

  2. 論点のフォーカス

一つひとつ見ていきましょう。

健全な根回しはグローバル共通

表題の通りの結論です(笑)。
というと、読者からお叱りを受けるかもしれません。

日本では「根回し」というと古くから行われていた取り組みであり、会議場というオープンな場で正しい議論を交わすことが正しい、という至極真っ当な考え方からするとむしろ「根回しなんて…」と逆にネガティブに思われるかもしれません。
実際に、新規事業に取り組むような熱意を持つ人こそ、「公明正大にオープンに議論することが正しい。別途の根回しなんて言語道断」と極端に思われている方もいらっしゃいます。

それは一見正論でありますが、「正論がかならずしもまかりとおるとは限らない」のも世の常です。そして正論は常に「言われた方はちょっとムカつく」(俗に言う、認知的不協和)のです笑。

考えてみてください。
決裁のための資料を何ページくらいお出しになられますか?残念ながら少なくても20ページ、多ければ100ページ以上あるのではないでしょうか?
意思決定の議場では、あなたの上申した事業提案だけがすべてではありません。そして何時間もこの議論を続けることができるわけではありません。
たかだか数十分で100ページの内容を理解して意思決定せよっていうのは、
意思決定する側の人間からすると、それこそ無理な話ではないでしょうか?

これを理解した上で、私たちができること、それこそ「健全な根回し」です!
要は事前のブリーフィングです。
忙しい決裁者。30分、いえ15分でも個別でお話する時間を取ってもらいましょう。

そんな根回しなんて日本だけの慣習だ!と批判したくなる気持ちはあるかもしれませんが、私自身の海外経験を踏まえて申し上げると、むしろこういう根回しはグローバル共通で存在する、ということです。

たとえば、Google出身の方が以下の書籍でこのように語っています。

グーグルはポジティブな根回しをよくやるのです。
(中略)
会議の最終的な意思決定者の価値観や判断基準を知ることを、絶対に忘れてはいけません。

ピョートル・フェリクス・グジバチ著『がんばらない働き方』(青春出版社、2019年1月)

事前に、「これどう思う?」というコミュニケーションによって、意思決定者が何を考えているかがわかります。また上記の引用の続きにも書かれていますが、意思決定者側が「心の準備」をできるわけです。

また、予め話しておけばその方が気になるポイントを引き出すこともできます。「良いご示唆を得ました!ありがとうございます!その点を押さえて、決裁の場にお持ちしますのでどうぞよろしくお願いします!」というだけで印象が変わりますし、その方がご指摘した部分が、あとで修正されていたら「よしよし、私が言った通りにしてきたな」とそれだけでも好印象です。むしろ「この部分は私のおかげ」と思ってもらえればしめたものです。

人間心理として、そもそも「よくわからないヤツからの提案」はネガティブに捉えられます。みなさんが新規事業担当で初めて事業を提案していくとき、意思決定の場で、あなたのことをよく知っている人ばかりでしょうか?
はじめましての人の新規事業の提案と、一度でも話したことがある人の提案、どちらをポジティブに聞くでしょうか?人間の心情としては後者の方がポジティブに受け止めるのではないでしょうか?(心理学ではザイアンスの法則といったりするようです)

この文脈でもう一点。
新規事業の投資の決裁を得た後は何が待っているか。
それは「実際に売る」というフェーズがあります。

社内の人間を味方につけれないのに、どうして外部のお客様に「おカネを払ってもらえるようにできるのか」。

いやー、そんな面倒臭いことなんかやってられるかよ!
だから大企業はダメなんだよ、って思われるかもしれません。

正論のあなたにはこう返しておきましょう。

じゃ、あなたが偉くなって変えればいいだけでしょ
(ほら、ちょっとムカついたでしょ?正論言われる側はムカつくんです。)

そういう面倒くさいことがあるおかげで一定の安定性を企業として維持しながら、新規事業に対して(やろうと思えば)最初から大きな金額の投資を動かせるわけです。

こういう面倒なことに嫌気がさして自分でゼロからスタートアップとして立ち上げるのもよいですが、それはそれであなたが想像しなかった苦難が待っています。もちろんスタートアップ側の私としては全力で歓迎いたします!

そう思って、社内の面倒なプロセスを「楽しむ」くらいの気持ちで取り組んでいただければと思います。

論点をフォーカスさせるサマリーの準備

いざ作成した数値の計画ですが、長ったらしい表計算シートを意思決定の場に出しても嫌がられるだけです。
また細かすぎると、重箱系の方から、「法定福利費を設定していないのは何故かね?」と突っ込まれたりします。
もちろん、事業計画上はそういう変数もちゃんと設定しておくに越したことはありませんが、できれば論点をフォーカスしたいものです。

事業計画は「コミュニケーションツール」の側面があることを以前の記事で語りました。相手に伝わりやすいよう、もしくは伝えやすいようになっていますでしょうか?

ここで一つおすすめの方法があります。
私が大手企業の新規事業、スタートアップに関わらず事業計画のご支援するとき、かならず最後に作成していたのが「サマリーシート」です。

縦長なのか複数シートにまたがるのかはさておき、無数に変数を設定していると思います。
その中で自身が考える大切な変数、つまりKPIは何か、その結果としてKGIとなる売上高や顧客数、その他従業員数やキャッシュフロー等の指標を一つのシートにまとめて事業計画自体を俯瞰し、議論を深めたりシミュレーションをしたりします。

抜き出した変数について、その変数の値や根拠等を記載して、ここで編集もできるようにします。その結果として売上高や顧客数の推移等を同時に眺めることができるようにします。

私自身が長い事業計画作成および支援に携わる中で、結果議論や意思決定においては論点絞ってやるよね、ということで考えてきたものです。

ちなみに…
当社プロダクトであるVividir(ビビディア)では、このサマリー部分は実装済みです!

Vividirのサマリーシート(入力値はダミー)



今回の記事では、「大手企業の新規事業においてどのように決裁を得るか」について記しました。
残念ながらショートカットがあるわけではありません。大手企業特有の組織の力学を理解して、しっかりと進めていくことが王道です。

また本記事は、「大手企業の新規事業向け」に語りましたが、スタートアップの資金調達については別の記事で触れさせていただきました。一部重複する部分もございますが、ご興味ある方はそちらの記事もご覧いただければと思います

今回ご紹介したような根回しをしっかりしていく上では、コミュニケーションに時間をかける必要がありますので、できれば表計算での事業計画作成はカンタンに迅速に済ませたいですよね…
我々が開発・提供しているプロダクトVividir(ビビディア)は、そんな皆様の味方です!
事業計画を作成するのもカンタンです!通常の10分の1以下のスピードで作成できます!
さらに実績を取り込み、仮説検証をシームレスに実行できる、決裁後の成長にまで貢献できます!
そして、本文で触れた「サマリー」機能もあるので、議論・意思決定に大きく寄与することでしょう!

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では、次の連載記事まで、ごきげんよう!




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