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4月30日、編集者日誌:入稿

この連休の合間3日を休んで10連休にするアイデアもあるらしいが、そんなに休んだら後が怖い。と思うのはわたしがワーカーホリックだからだろうか。年中仕事を優先していることをそう呼ぶならわたしは無事立派な仕事中毒だが、ゲーム好きがゲームをいちばんにする程度のことだ。

さて、わたしはこの中3日で、なんと一年も制作してきた書籍を入稿する。入稿とは、ぜんぶのページがきちんとできあがり、もうこれ以上直すところはない、といえる状態の原稿を印刷所に送ることをいう。印刷所に送ったあとにも直せる隙は一応あるが、今回は入稿後にいっさい直せない。あんなに毎日ひたすら見てきたが、最後に見たときでさえ誤植があり、達成感など感じている暇もなくただ不安である。

入稿【にゅう・こう】
1. 原稿を印刷所に渡すこと。
2. 原稿を執筆者から入手すること。

人は本を読んでいて誤植を見つけたら、このやろう、誤植を刷りやがって!と思うのだろうか。よくわからない。少なくともわたしはそこに人の不完全さを感じて愛おしくなる。きっとたくさんの人が毎日目を皿にして見ただろうにとやさしい気持ちになる…のに、自分がかかわった本だと汚点にしか感じられない。誤植なんてもってのほかだ。統一されていない表記、罫線のずれ、時間がなくてよくわからぬ修正を加えたおかげでわかりづらくなった説明文、かぶっているキャプションの表現…見つけてしまうともう本作りをしたくなくなるほど憂鬱になる。

というわけで、毎回そういうことがないようにギリギリまで何度も読み返す。

今回の書籍はひさしぶりに料理の本じゃない。フィクションだけどしっかりした取材に基づいているので、完全にフィクションというわけでもない。制作にあたり、わたしは制作物になる前の、つまり「フィクションがノンフィクションだったときの話」を少しだけ知っているので、読むたびによけい胸が詰まる。

まさかこんなシリアスな本に自分がかかわるとは思ってもみなかったが、わたしの人生も相当複雑だったので、この本と気持ちがリンクするところがある。お話をいただいたとき、多分そこが共鳴するはずだと思えたから、編集できたのかもしれない。

そしてその傍らで、今日は雑誌の特集記事一本とweb記事一本の入稿。書籍の仕事も好きだけど、こういう単発でできる仕事も楽しい。なんたって本は一冊作るのに、最低3ヶ月ほどはかかる。通常は7〜8ヶ月かかり、気持ち的にぐずぐずしてしまう期間もあるので、パッと作ってパッと終わる、単発の刺激はありがたい。

そんな一日。大したことしていないのだけど、明日はいよいよ入稿データが作り終わる。どうかどうか誤植の神さま、すべて拾えていますように…!



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