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欧米人、昔の日本人の名前、地名の意味と言葉の語源や歴史を探求する。本業は会計士。

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わたしたちはなぜ世界史が嫌いなのか?

私は世界史を学びたくなかった あなたは世界史が好きですか?私は高校までの世界史を敬遠していました。学校で、「授業」または「受験科目」として「世界史」を取りたいとは思わなかった、というのが正確な表現です。理由は、大量の意味のないカタカナを覚えられないと思ったからです。  カタカナ用語は音しかなく意味が不明なので覚えられず、無味乾燥な記述の事件等の名前の羅列や発生年も覚えられず、何よりその頃は世界史そのものにまったく興味がありませんでした。受験は日本史(これも事件や用語の羅列で

    • 吉良上野介は「上野国の次官」という通称

       中央官制に続き、地方官制について確認します。律令制の官職名でよく知られている人物について見てみましょう。中央官制についてはリンクで解説しており、こちらを前提としているので、まだ読んでいない方は併せて御覧ください。 地方官制 地方官は、要地である京に左京職(さきょうしき)、東市司(ひがしのいちのつかさ)、右京職、西市司が置かれ、筑前国には太宰府が置かれました。  諸国には国司、郡司が置かれ、国は大国、上国、中国、下国に格付けされました。設置された国は以下のとおりです。  

      • ジョナサンとゴディバは「神の贈り物」という名前

         よく知られた欧米の人名の中に、その語源の意味が「神の贈り物」であるものがいくつかあります。どんな名前があるか、見ていきましょう。 ジョナサンとネイサン、ジェシー まず、「ジョナサンJonathan」についてです。ジョナサンと言えば、「ジョジョの奇妙な冒険」の第一部主人公ジョナサン・ジョースターが思い起こされます。人によってはファミリーレストランチェーンのジョナサンかもしれません。あるいは「かもめのジョナサン」を思い出すでしょうか。  ジョナサンはヘブライ語の「ヨーナーター

        • 水戸黄門の「黄門」は「中納言」

           今回はこれから名前の解説を進める上で重要な官職名についてのお話です。この話は避けて通れないものの、単体では退屈な説明に終始するので、後から戻って読むことにしていったんさらっと目を通すくらいの感じで読んでいただければと思います。  官職名は格式の高い通称として使われます。 律令制下の官職名 日本は白村江の戦いの敗北を受けて部民制を廃止し、唐の制度を取り入れて中央集権国家を目指したのが飛鳥浄御原令や大宝律令です。公地公民制は、基本的にすべての土地と人民は朝廷に帰属するとした制

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        わたしたちはなぜ世界史が嫌いなのか?

          カール・ルイスは「戦で名高い男」

           カール・ルイスで知られたスーパースターの名前は、どちらの要素もゲルマン系の名前に由来します。その意味するところを見てみましょう。ヨーロッパの名前の種類にどんなものがあるのかについては、以下の記事を参照してください。 スーパースター、カール・ルイス 1980年代の陸上競技のスーパースター、「カール・ルイスCarl Lewis」はご存知でしょうか。本名はフレデリック・カールトン・ルイスで、彼は当時、多数の陸上競技で優勝をかっさらい、現在の陸上界では彼に比肩する実績を持つ人はい

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          鳥取は、古代部民の鳥取部に由来する

           今回は、朝廷に職能をもって奉仕する部民や皇室私有民、豪族私有民などから生じた庶民の氏名について見ていきたいと思います。日本国民のほとんどは部民として制度に組み込まれていたため、古代の日本人は部民としての氏名を持っていました。  なお、今回は古代の氏名ということで、リンクの記事の続きとなっています。 部民制 部民制(べみんせい)は、単に部ともいいます。部は「とも」とも読み、伴に通じています。律令制成立前の古代大和王権の制度であり、部民は以下の3つに分類されます。 ① 職業

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          八咫烏は賀茂建角身命

           よく知られている古代豪族、蘇我氏、物部氏、中臣氏、忌部氏、大伴氏、秦氏、清原氏、安倍氏、大神氏、賀茂氏の氏名の由来と氏族の起源について見てみましょう。これらの氏族には、日本神話に登場する神の後裔とするものもあります。なお、古事記の内容は把握している前提で、個別の神の解説はしません。 古代豪族 大和王権が成立したころは、朝廷は有力氏族による連合政権であり、天皇家の他にも各豪族がそれぞれの氏族を率いて政治に参加していました。  その中でも有名な蘇我氏、大伴氏、物部氏などの氏族

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          八咫烏は賀茂建角身命

          マルガリータとマルゲリータはマーガレット

           マルガリータとマルゲリータについて話題になっているので、本来それをメインに扱った記事ではないですが、関連する記事を書いていたのでアップします。  マルガリータもマルゲリータも、マーガレットという女性名の言語が違うバージョンです。その意味とバリエーションについて見てみましょう。 聖マルガレタの伝説 グレタとメーガン、メグという名前を耳にしたことがあるのではないかと思います。実はこれらはある名前から派生した同じ名前です。  グレタという名前は、女優のグレタ・ガルボや環境活動家

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          ジョヴァンニもジャネットもヨハネだった

          洗礼者ヨハネと使徒ヨハネ 「ヨハネ」という名前は、聖書に由来しています。有名どころでは洗礼者(バプテスマ)ヨハネと使徒ヨハネの2人があげられます。  洗礼者ヨハネはヨルダン川でナザレのイエス(キリスト)に洗礼を施しました。オスカー・ワイルドの戯曲「サロメSalome」の登場人物「預言者ヨカナーン」としても知られています。洗礼者ヨハネの斬首の話は各福音書に記述があり、「サロメ」はそれらを脚色して戯曲にまとめたものです。ちなみにサロメとはヨハネの首を所望した娘の名前であり、ヘブ

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          源氏と平氏は天皇家の庶流

           藤原氏、源氏、平氏は歴史の教科書では突然現れて活躍し始めますが、これらがいったい何者なのかについてはあまり説明されることがありません。特に源氏と平氏の関係について大きく誤解もあると思うので、今回は橘氏も含めてその氏名の意味と起源を説明したいと思います。  昔の日本人の名前の構造については以下の記事で説明しているので、前提として読んでおいていただければと思います。 日本の四姓 鎌倉時代が始まった1200年ころに成立した、四姓(しせい)という言葉があります。四姓とは、インドの

          源氏と平氏は天皇家の庶流

          ギネスとヘネシーはケルトの名前

          「~の子孫」を意味する接頭辞 私が、かつてカナダを旅行したときに「レイク・オハラ」という湖に行ったことがあります。オハラはO’Haraとつづられていました。その時に思いました、「何、このO’って?」。  そのときはそれ以上調べることもなく過ごしていましたが、10年以上経ってその意味がわかりました。O’(Ó)はアイルランドで「~の子孫」を意味する接頭辞であり、Mcと同様にその後固定化して姓に転じたものだったのです。 「風とともに去りぬ」はアイルランド系移民の物語 オハラといえ

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          江戸時代以前の日本人の名前の構造

          今の名前の常識は明治に作られた 「夫婦別姓の選択制を認めるべきだ」とか「いや同姓でないと家族としての絆が云々」とか、名前に対して何かと喧しい昨今ですが、そもそも現代の日本人の名前のルールはたかだか明治時代に作られたものであることはご存知でしょうか。日本人の伝統的な名前の慣習は、江戸時代以前はまったく異なったものであり、時代によっても相当異なっていました。  氏+名という現代の固定化した個人の名前というものは、明治時代に国民管理の都合上整えられた制度に過ぎず、それ以前の日本人

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          マイケルやエリザベスの「エル」は神

          エルとエロイム 西欧の名前には「エル」という響きを持つ名前があります。ダニエル、ジョエル、ラファエル、ミカエル、サムエル、イスラエル…。  この「エル」という響きを持つ名前は、旧約聖書によく出てくる、ユダヤ教及びキリスト教由来の名前です。そして、聖書の世界はメソポタミア、レバント地方あたりをベースとしているので、ヘブライ語及びその近辺の言語が名前の語源となっています。  「エル」はセム語で「神」を意味する一般名詞またはウガリット神話の主神エルのことで、複数形は「エロイム」で

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          ヨーロッパの名前の起源にはどのようなものがあるか?

          キリスト教の影響による名前 ヨーロッパの人名はバリエーションが豊富で、それをそのままカタカナで覚えようとすると種類がありすぎて混乱してしまいます。中にはそれを苦もなく覚えられる方もいますが、多くの人はそうではないでしょう。一方で語源や元の名前まで遡れば、同じ名前が形を変えて何度も出現していることが理解でき、ファーストネームのバリエーションは思っているほど多くないことに気づくでしょう。  ヨーロッパの人名について、個別の名前の興味深い話はあるものの、まずはいくつかの特定のル

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