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忠海ワークショップ2021サマー_制作編

忠海集学校ワークショップ第1弾は2021年9月に行われた。コロナ第5波の影響により当初よりも参加者数は制限されたが、横浜国立大学、広島大学、近畿大学(広島キャンパス)からの学生の協力の元、実施された。

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ワークショップ第1弾としてまずは計画の一部分を実験的に制作することとなった。そもそもこの廃校リノベーションプロジェクトを地域や学生を巻き込んだワークショップ形式にしようと考えたのは、この忠海町の二窓(ふたまど)エリアで400年前から行われている伝統の火祭り「二窓の新明祭(通称:新明さん)」の影響が大きい。

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<毎年新明さんのフィナーレでお神輿を燃やす>

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<ロープによる神輿接合部>

神明さんのお神輿は毎年燃やすので、毎年神輿を新しく作る必要がある。なので地域の人々は自分たちでお金を出し合い、自分たちで山へ材料を調達し、そしてその材料を加工し、自分たちの手で組み上げる。そうした「自分たちで作る」地域文化や技術をプロジェクトに組み込むことで、プロセスの段階からその地域性を活かした場所づくりができるのではと考えた。

具体的には神輿で用いる材料である竹とロープによる接合方法を活用した竹の構築物を小学校に挿入していくというものである。私含め学生も竹の扱いに関しては全くの素人なので、新明さんの神輿づくりに携わっている地域の方にアドバイスをいただきながら、ワークショップ第1弾としてまずは計画の一部分を実験的に制作することにした。

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<忠海集学校外観イメージ>

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<忠海集学校模型写真>

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<現地スタディ模型>

忠海集学校ワークショップ第1弾は2021年9月に行われた。コロナ第5波の影響により当初よりも参加者数は制限されたが、横浜国立大学、広島大学、近畿大学(広島キャンパス)からの学生の協力の元、実施された。

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<リングローさんの協力により、小学校内にテントを張りバブル方式での施工合宿>

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<竹の搬入>

まずは事前に三原の山から伐採された無垢の竹を必要な寸法にカットしてゆく。竹の径は70~90mmとバラつきはあったが、ロープでの接合のおかげである程度の差異は許容される。また中は空洞なので手持ちのノコギリでも比較的スイスイとカットが進む。

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<竹のカット>

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<ふぞろいな竹たち>

カットの次はこの制作のクリティカルな作業となる竹同士の接合である。この部分は神輿の技法に乗っとって、基本的にビスや釘は用いず、ロープによって接合される。お神輿で主に用いられる結び方は男結びという手法で、この男結び自体はそれほど特殊なものではないが、それでも結び方を完全に理解するには何度も繰り返して練習する必要がある。

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<結び作業―叩き子と絞め子の協働作業:横浜国立大学「栖の工房」のメンバー>

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<男結びトレーニング>

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<男結び>

1か所結ぶのにロープを叩き子と絞め子の最低2人は必要で、はじめは1か所結ぶのに2,30分を要していたが、地元二窓の新本さん、山崎さん、北嵐さんのご協力・ご指導のもと、何度も結び作業を繰り返すうちにみるみるスピードアップしていった。特に北嵐さんは神輿を作る実働部隊としてバリバリ活動されているので、スピード・精度共に圧倒される。また祭りの時に作る実物の神輿と併せて、子供たちのためにミニチュアの模型を作る文化があり、そちらのミニチュア版の再現精度もすさまじい。

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<北嵐さん制作のミニチュア神輿>

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<コンテクスト模型写真_S=1:30>

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<北嵐昭吏さん>

作業手順としては中庭で格子状の面のパーツを作り、それが4枚できたところで設置場所の校舎エントランスへと運び、面同士を等間隔に接合していく。また並行して竹の土台用のコンクリートブロックを16個制作する。上下異径の円をつないだ台形型の円錐形状を作り出すため、横浜国大のCNCルーターでカットした変形型枠を事前準備した。町の伝統にささやかな現代技術を持ち込みたかったのだ。竹を含めこれら部材寸法に関する構造的アドバイスは佐藤淳さんにお願いした。

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<中庭ピロティ部分での作業風景>

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<土台用コンクリートブロック打設風景>

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<コンクリートブロックたち>

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<竹とコンクリートの接合確認>

徐々にパーツとして組み上げてきたものが形になってきた。続きは次回の完成編につづく。(原田)


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