見出し画像

忠海集学校計画案

2022年3月に忠海ワークショップ2022スプリングとして忠海集学校の第2弾の施工ワークショップが開催予定であるが、そこでの制作予定物及び全体計画を紹介しようと思う。

画像1

<忠海集学校計画模型写真>

私が担当しているのは校庭に面した校舎南側1階部分(旧職員室・校長室・アクセス通路)および中庭である。計画はこの忠海東小学校を再生するにあたり、どのようなストーリーを描くかというところから始まった。廃校になってからも二窓の新明祭が行われる地域住民憩いの校庭、そして新しく忠海集学校として生まれ変わる際に中心的な場所となるであろう中庭。これら2つの世界をつなぐ場所としての校舎部分。まず思い浮かんだのは、この校舎部分を舟屋に見立てるというイメージだった。

02_隠岐の舟屋 (201)

<ref. 隠岐の舟屋>

03_伊根の舟屋 (156)

<ref. 伊根の舟屋>

私がこれまで見てきたいくつかの舟屋においては、陸地側から見ると建物にぽっかりと開いた口の先に、向こう側に広がる海が切り取られていた。それはちょうど陸の世界と海の世界をつなぐトンネルのような場所である。さらに実際の舟屋の内部には漁や暮らしにまつわる道具類が所狭しと並べられ、さながら2つの世界をつなぐ「生業のトンネル」というイメージからこの忠海集学校の計画を膨らませてみることにした。

画像4

<職員室内観模型写真>

画像5

<校長室内観模型写真>

具体的には竹という地域特産の材料を用いて2つのトンネルを作る。職員室側は竹の線材としての強度と新明さんの神輿の接合技法を生かした格子状のトンネル。校長室側は竹を割くことによって得られる曲げのしなやかさを活かしたアーチ状のトンネル。それら竹という同じ材料から生み出される2つの異なるトンネルを校舎部分に挿入する。

画像6

<中庭模型写真>

そしてこれらのトンネルに導かれる中庭部分の計画は主に天井と床に集約される。

画像7

<中庭模型写真>

まずは天井部分の計画について。現状の中庭はただ校舎に囲われた空地という印象なので、この場所が小学校全体の中心となりうるような求心性をいかに付与できるかを考えた。そこで浮上したアイデアとして、すでに失われつつある漁師町としての二窓のアイデンティティを中庭のシンボルとすることだ。具体的にはかつてこの二窓地区で栄えていた打瀬網の漁網形状をモチーフとしたメッシュを中庭上空に架ける。

@打瀬網

<打瀬網>

画像8

<打瀬網模型@観音崎自然博物館>

打瀬網で言うところの魚が溜まる部分がメッシュ天井から垂れ下がり、中庭の新たな中心となる。これは校舎外の南側校庭や北側道路からも、この”溜まり”部分が認知され、より広域の中心性をもたらすことを期待している。

画像9

<校庭から中庭へのビュー>

次に床部分の計画について。新しいメッシュ天井によって生まれる中心性を、如何にして床が全方位的に受け止められるかを考えた。結果として現在整然と埋め込まれているレンガ床に対して、上記のメッシュ溜まりを中心とするような渦を描いてみることにした。渦は自作のコンクリートブロック60個の配置によって表現される。コンクリートブロックは生産過程ではじかれるB級品の陶器タイルを埋め込んだリユースブロックとし、集学校のコンセプトとの親和性も加味した。

画像10

<床パターンスタディ写真>

11_廃タイル

<常滑のタイル工場から廃タイルの提供(協力:LIXIL、アカイタイル、由松製陶所) >

こうして天井と床の操作によって新たな中心性を獲得する中庭に向かって、2つの竹のトンネルが来訪者を誘う。そしてこれら計画にまつわる構築物、什器、家具などの大部分を地域が育んできた技術・材料を活かして「自分たちで作る」というのが、本計画の重要なテーマとなっている。

画像12

<忠海集学校「竹のゲート」制作風景>

画像13

<忠海集学校「竹のゲート」制作風景>

昨年9月に忠海ワークショップ2021サマーとして、計画の一部で校庭側に飛び出した「竹のゲート」を制作したが、施工ワークショップの第2弾として2022年3月に上述の校舎内の竹の格子トンネル部分と中庭床部分を制作予定である。また次回の投稿にてワークショップ詳細についてお知らせしたい。(原田)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?