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「毒親」の定義と「親になる事」に対する恐怖 

 私は弁護士の彼と3年後結婚し、妊娠した。彼に対して暴力をふるわなくなった。
 絵理も彼も親とは今でも断絶状態だ。

「親が死なないと親の有難みは分からない」
「育てて貰った親に対して何て態度?」という世間の声が聞こえてきた。
しかし、「私は間違っていない、世間の声の言う通りにしてたらまた体調悪くなっちゃうよ」と奮い立たせる。

「世間」というワードが出たが世間の方は「毒親」の定義がよく分かっていないと思う。

 若い頃反抗期もあって、でも自分が親になったら親の苦労も分かった...みたいな。
こっちは全て親の言う通りにしないと殴られ、学校に電話をさせられ、「お前みたいな子は親の言う通りにすれば良いんだよ!」
 それは自分が大人になっても変わらず、取っ組み合いの喧嘩、職場や学校に直接押し掛けられるとなると、親と絶縁するしか生き延びる方法がなかった。

 東京新聞の紙面にある方の記事が掲載された。
そこには「私がバキバキに折ったゲーム機」として、無残に壊されたニンテンドー3DSの写真が大写しにされていた。

 内容としては、その家では子供は7時以降電化製品を使ってはいけないことになっており、週末の宿題が終わった後に時間が余った時だけゲームをしてもいいというルール。
 子供がこれを破ったことから母親が怒り、ゲーム機を破壊したのだと。
子供が意に反した行動を取ると、「約束を破った」と称して、キレて暴力を見せつけて子供を威圧する。これが虐待でなければ一体何なのだろうか?親子なら良いのか?何だその理屈は。これが子供間であるなら「いじめ」であるし、犯罪だろう。
 彼女のツイートを見るに、どういう理由かは分からないが、ツイッターでバカな息子と怒鳴り続けて、子供の日記や宿題などを破ったと書かれている。

「せっかくの誕生日。バカな息子達を怒鳴り続け、それでも言うことを聞かないので9月に家出をする決心をした、『もうママには会えなくなるけど、元気でね』と言ったら『うん』だって。おかしいだろ。その受け答え。『行かないで』とか言えないのか?」
 うっわー。「言う事聞かないのなら10万置いて一人で生活してみろ」って言って家を1週間空けた両親を思い出した。お前が勝手に出て行くんだろ。勝手に出て行けよとしか思えない。

 これは「親は子供を守るはずである=家庭は子供たちにとって、安全安心の場である」という固定概念によって、親による過剰な規律と、それに反した時の過剰な暴力が、虐待という子供に対する危機が見えづらくなっているのではないか?

 妊娠なうの絵理は思った。
めっちゃこわい。確実にこの人みたいになる。若しくはこの人以上の鬼になる。だから子供を作りたくなかった。お恥ずかしい話で「出来ちゃった」子ではあるから余計怖い。でもそれは出来た子供を堕ろす理由にはならない。

そもそも毒親とは何であろうか。

『子供に過度な暴力を振るう親』
『育児放棄をする親』
『性的な行為を子供にする親』一般的にこのようなわかりやすい形での、『子供に過度な損害を与える親』をイメージする人が多い。
 しかし私が考えるに、『子供の人生に悪影響を与える親はすべて毒親である』と思う。常に子供を監視し、子供の行為に口を挟み、自身の価値観を押し付ける親も立派な毒親である。
『親の言うことを聞いておけばよい』
『親に逆らうのか?』
『親の言うことが聞けないのであればご飯は抜き』
『親に逆らうなら勘当だ』
このように親の持つ権威を前面に押し出して、子供を威圧する親は子供の心に不安や恐怖の種を植え付けるようになる。
「でも、親ってそんなものじゃないの」という世間の声。でもそんな親が多いからといって、その行為が正当化される訳ではない!
 子供の心に不安や恐怖の種を植え付ける原因となる行為はどんな理由があれ避けるのが親として当然の行為ではないだろうか。これから自分が親になるから自分がそうなるかわかんないんだけど。

『親の言うことを聞かない子はいらない』
『あなたはブサイクだから』
『あなたは頭が悪い子供だから』
このような言葉を悪気がなくても、子供に投げかける親も問題のある親。
 親の発する言葉は、どんな言葉であれ子供の心に刻まれ人生に大きな影響を与える。私も親から(というか同級生からも)いつもこのような言葉を投げかけられてきた。
『お前は頭がデカイから体のバランスが悪い』『運動神経が鈍い』
今でも親が私に浴びせた言葉は、私の心の中で傷として残っている。
『頭が悪いから』『運動神経も悪い』
大人になっても、私の心の奥底には『自分を卑下する言葉』として刻まれている。
 多分、この言葉を子供に投げつけた当人は、 「子供がどんなに傷ついたか?」なんて考えもしないだろう。でも子供の心にはその言葉の傷はしっかり刻み込まれる。
親の役割とは一体何であろうか。

「誰がここまで育てた!」
「学校に行かせたのに恩知らずが!」
「お前らのために嫌な仕事でも我慢しているんだぞ!」
何でも「○○の為に」「○○のせい」と子供のせいにする。自分の意思ではないのか?
 子供は自分の本当の感情に蓋をしてしまい、自分の判断よりも「親が許してくれるかどうか?」ばかりを考えて生きてしまい、常に人生で生き辛さを抱えてしまう。
 ああ、なるほど。ここが自立しても、いつまで経っても「毒親から子供が解脱出来ない理由」だ。確かに子供を危険から守るために注意することも親の義務とも言えるが、過度な支配や干渉は子供から生きる力を奪う行為に繋がる。
 絵理は生涯学校の夏休みの作文やポスターは作った事がなく、自分でお稽古事も選ばせて貰えなかった。進学する高校も大学も自分の意思では選ばせて貰えなかった。

「絵理の為を思って」
「県外で就職することは許さん」
「女は大学に行かなくても良い」
「そんな誰も知らない小さな会社に就職するなんて許さない」
「あんな人との結婚は認めない」
 あの人達は、私の人生を壊そうとした。だから逃げた。
親に人生を支配された自分の悲しみを認識する度に、「親は一体何を根拠に自分の正しさを子供に押し付けるのだろうか」と私の中に強い怒りがいつも湧き上がる。
 ああ、どうしよう。そんな私は親になる。
複数回のゲシュタルトセラピーやカウンセリング、また、暴れたら近所から「うるせー!死ねー!」と叫ばれたので容易にキレて暴れなくなった。家が住めなくなるのは困る。
 というか皆病んでるんだなあって思った。普段抱いている怒りをふつふつと抱え、それでも生きていく。

 皆何かしらの毒を抱いているのではないか?
どう親から解脱するのか?薬か?ゲシュタルトセラピーやカウンセリングか?
先ず物理的に離れるのが一番。連絡も絶つ。
「親であっても最悪の場合は法的に処理する」、この覚悟が必要なこともあると思う。

決心しかない。あの人には嫌われても良い。
幸せになる意志を持つこと。
今から焦っても仕方がない。出産まで今を生きるんだ。

 ああ、分かった。これが「今を生きる」という事か。
キレる時って未来に悪い事が起きるって勝手に決めつけて「あの時ああしていればこんな事にならなかったのに」って過去の自分を責める。母もいつも私の悪い未来を想像して「今勉強しなかったらひどい未来が待ってるから」とか言ってくる。

私も母も見えない何かに怯えているだけだったのだ。

 普段人は「状況」同士で話をしていると田房永子さんの「キレる私をやめたい」という本に書いてあった。

「Aさんには嫌な上司がいて『会社を辞めたい』と言った。その相談に対してBさんは『やめないほうがいいよ。こんな就職難に大変だよ』と答える。これはAさんの「状況」への返答。Bさんは上司が嫌だから、と言っているけど別の会社を辞めたい原因があるかもしれない。
 例えば上司の期待に応えられない自分が嫌になっているかもしれない。それはAさんの心に注目してあげると分かる事があるんです。」
「心に注目する方法はゲシュタルトセラピーだと体の状態や今の気持ちを聞く事、そしてその人自身が『今』を味わう事です。」
「実際Aさんが何に悩んでいるのかとか原因が分かっても分からなくてもどっちでも良いのです。人間は誰かに『心』の部分に注目して貰ったり自分で「心」の部分に注目するだけで癒されるんです。」

 ああ、なるほど。私は周りからも「状況」に対してしか返答してもらったことがなく、彼から「状況」で回答されるとキレるんだ。
 それは昔からそうだ。「○○ちゃんが私の事を殴ってきたの」に対して、母は「知らないわよ。アンタが悪いんでしょ」と徹底的に状況に対して回答していた。
 「アンダードッグ」(体の中に住んでいる心の声、つまり本音)、「トップドッグ」(知性の声)とも言うそうです。この知性と本音のバランスが取れている時は問題ないのですが、一方の声が強いとバランスが崩れるらしい。
 「無理しないで休む時は休む」、「今を意識する(過去や未来を責めない)」、「自分を褒める」ようにすると段々自分の「心」にピントが合ってきた。
 忙しい時はごはんを作らず彼に「今日はごめん、疲れてるから自分で食べて」と言えば良かった。ごはんを作らない自分を責めない。
「毎日出社する...偉い!」「毎日掃除、洗濯、炊事、ゴミ捨てする...超偉い!」何が偉いんだよ、当たり前の事だろと思わず。そのうち自分はそんなにダメと思わなくなった。自分を責めなくなった。人に当たらなくなった。
 
 その後絵理は無事女の子を出産し、「文」(ふみ)と名付けた。

「敵か味方か
勝ちか負けかを
決めた瞬間
急に世界が
嗚呼 暗く狭まっていくの見てたでしょ
さあ 帰ろう自由へと」

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