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褥瘡の創洗浄に関する論文が受理されました!!

こんにちは。yoshiです。

私の論文がJournal of Wound Careという雑誌にようやく受理されました。

この雑誌は私が初めて英語論文を投稿し掲載していただいた雑誌です。今回もこの雑誌に受理していただけたことを大変嬉しく思っています。

この論文は、
「浅い褥瘡(真皮までの損傷;d2以下の褥瘡)を保有する利用者に対して、訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーションの際に理学療法士も褥瘡の創洗浄することによって褥瘡治癒期間が短縮し、医療経済学的にも効果がある」
ということを検証した論文になります。

詳細は論文が掲載されたときに読んでいただければと思います。

この研究は論文作成・受理されるまでにとても苦労したので、本日はその経験を少し綴りたいと思います。

私が病院で勤務していた頃、褥瘡患者をよく担当していました。
「褥瘡は写真でみるだけではなく、もっと創部を観て、評価したほうがいい!」
と思っていたので、褥瘡回診やドレッシング材の交換時である創洗浄によく同行していました。

そんな中、突然、医師と看護師に一緒に創の洗浄をすることを頼まれました。
初めはビックリしたのですが、医師の説明では、
「もともと理学療法士は褥瘡患者を大きな浴槽に入れてリハビリをしていたから、創部を洗浄することは大丈夫!」ということでした。

その後調べてみると、確かに理学療法士はもともとハバードタンク(水治療法)を使用して、脊髄損傷患者の理学療法を実施しており、褥瘡保有者に対しては、ハバードタンク内で創部の洗浄を実施していたようです。

こういう事実があったため、特に気にすることなく、医師の許可もあったので病棟での創洗浄を看護師と一緒に実施するようになりました。

創洗浄をする中で気付いた点が多々ありました。
・写真では白く浸軟しているようにみえても、実は堅い壊死組織だった
・よく観ると創部に段差があった。これはズレ??
・ポケットの中は壊死組織が多い
などなど、多くの発見がありました。

やっぱりもっと褥瘡を観た方がいいと実感した私は、理学療法士がもっと褥瘡を観れる機会を増やさなければと思うようになってきました。

そこで考えたのが、
「理学療法士が物理療法として、創を洗浄(水治療法)する。」
ということです。

この話を初めて公の舞台(学術大会のシンポジウム)で発言した時は、
「えっ?それは大丈夫?」
「それは処置だから、看護師の仕事じゃない?」
など、いろいろと言われました(確か、2014年の横浜学会です)。

ただ、私達の世代はハバードタンクを知りませんし、理学療法士がハバードタンク内で創を洗浄していたことを知らないのでそういう発想になるのだと思いました。

私は理学療法士が水治療法として創の洗浄に加わることが当たり前になってほしいし、それで結果的に褥瘡患者が救われるのでは?と思っていたので、研究として結果を残せないかずっと考えていました。

その中で考えたのが今回の研究です。

少し解説します。

在宅褥瘡患者に対して訪問看護師は、深い褥瘡(D3以上)の場合は特別訪問看護指示書によって医療保険の適応となり頻回訪問することが可能となります。

しかし、浅い褥瘡(d2以下)の場合は介護保険の単位枠内で訪問する必要があり、訪問看護師が頻回に訪問するのが困難な場合が多いです。
なので創部を洗浄する頻度が少なく、褥瘡治癒期間が長引いていると感じました。

ただ、浅くても褥瘡ができる状態ということは、自力体位変換が困難な中重度(介護度3~5)の方が多く、訪問看護師とは別に週1~2回の訪問リハビリテーション(訪問看護ステーションから)を併用している方が多かったのです。

そこに目を付けた私は、訪問リハビリテーション(訪問看護ステーションから)のプログラムの中で家族と一緒に理学療法士が創洗浄をすれば、創洗浄の頻度が増え褥瘡の治癒期間が短縮するのではないかと考えました。

ここで考えたメリットは2つです。
・一つは褥瘡の治癒期間が短縮する
・もう一つは早期治癒することによりリハビリテーションを進めやすい
結果は思っていた通りでした。

訪問看護師のみの訪問(週2回)で洗浄した群と訪問看護師(週2回)+理学療法士(週1~2)で洗浄した群では、後者の方が有意に治癒期間が短かったわけです。

しかも、治癒した後は積極的な離床が進みやすくなりました。

私はこの内容を論文にまとめることにしました。

その中で私の尊敬する形成外科の先生から、医療経済学的な効果を検証するようにアドバイスをもらいました。

内容は、治癒期間が短縮したことで、「医療経済学的な効果があるのでは?」ということでした。

そのため、単純に治癒までの介護保険料を計算してみました。

すると、単純にリハビリテーション専門職の訪問回数が増えているので、そのまま計算すると介護保険料は増えていました(当たり前ですよね!笑)。

それを報告すると、発生半年前と発生後半年を比較するように言われました。

この期間の介護保険料に変化があれば、医療経済学的な効果も実証できるということです。

結果はご指摘の通りでした。

これで3つ目のメリット、「医療経済学的な効果」が加わり、論文の質は一気に上がりました。

この論文はもともと、日本語の論文で投稿する予定でしたが、医療経済学的な効果が実証できたこともあり、英文誌に投稿することになりました。

実はここからも試練の連続でした!笑

背伸びをして、海外の老年医学会の雑誌に投稿したのですが、Major Revision(大幅修正)からのReject(掲載拒否)

次も別の国の老年医学会の雑誌に投稿しましたが、Editor Kick(査読にすら回らず即座に掲載拒否)となりました。

そして、最後に投稿したのが、今回受理していただいたJournal of Wound Careでした。

1回目も2回目の掲載拒否の理由は明確です。

「N数(症例数)が少なすぎる。」ということです。

今後、これらのことをしっかりと検証していくにはやはり大規模な研究が必要のようです。

ですので、今後は多施設共同研究を実施していきたいと思っています。

在宅褥瘡患者の褥瘡が早く治癒し、制限のない生活に戻るためには、在宅に関わるケアスタッフ(医療・介護職)のオーバーラップは必要だと思っています。

そのため、リハビリテーション専門職も積極的に創洗浄に関わっていただきたいと願っています。

長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。

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