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パンみみ日記「喫茶店で『いつもの席』の人になる」

日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。


4月10日(水)
会社。隣の席のフワコ(天然系の教え子)に業務レクチャー。過去の資料を使って説明したかったので、自席のデスクをガサゴソ。

すると、ぼくのおやつのへそくりが出てきた。フワコがジッと見つめながらつぶやく。

「よさくさん、その袋はなんでしょうか…?」

せんべい詰め合わせである。バレてしまっては仕方がない。袋からうすしお味と梅味を取り出し、フワコにあげた。

彼女はポリポリとせんべいを頬張っていた。なぜだがわからないけど、この一連の出来事をしばらく忘れない気がする。


4月12日(金)
ふるさと納税の返礼品が届いた。大量のサバだ。

サバパーティができる

またやってしまった。昨年も大量の鮭を頼み、「ひとり暮らしで消費するレベルやない」と反省していたのだ。

だがしかし、人間は同じ過ちをする生き物である。返礼品の質より量をとってしまい、19切れものサバと対峙することになるのだ。

ぼくは何年経ったらシャインマスカットとかイクラとか「量より質」を重視できるんだろう。(と言いつつサバを美味しくいただいた)


4月13日(土)
行きつけの喫茶店へ。マスターが「いつもの席にする?」と声をかけてくれる。最近は1番奥の窓側の席が定位置になっているのだ。

まだ先客のカップが残っていたので、「どこでも大丈夫です」と伝え別の席に座る。

嬉しかった。「このお客さんは、あの席」というイメージが定着したのは初めてのことなのだ。ちょっとだけ、あそこの席を他の人に取られたくなくなってしまう。

充実した読書タイムを過ごし、席を立つ。去り際にマスターに話しかけられた。

「また明日ね!」

明日は来られない旨を伝えると「薄情なヤツだな〜」と笑みを向けられた。こんなやりとりができるお店になるなんて、はじめは想像してなかったな。



4月14日(日)
母校である大学の図書館へ。先日、卒業生でも手続きをすれば入れるということを知ってから、再び訪れる機会を狙っていたのだ。

受付で手続きをしてくれたお兄さんがぼくのことを覚えてくれており、スムーズに入館できた(関係ないけど、お兄さんが朝井リョウにとても似ている)。

日曜日にも関わらず、館内には意識の高い大学生がたくさんいた。4月という浮かれポンチシーズンに勉強してるとか何者…? あんたたちみんな将来すごい人になるよ…!

周りの若者に刺激を受けながら、文学フリマに出品するエッセイの原稿チェックを進めた。

ランチには学生時代に通ったラーメン屋へ。当時は行列ができていたけど、今日は日曜なので空いている。

懐かしい味を噛み締めながら、大学生の頃を振り返る。あの頃ってほんとお金なかったな。けど、大盛の店で友達とお腹を満たしてたな。

まさか卒業してから6年も経って、休日に母校の図書館で過ごすなんて。やっぱり人生と興味関心のアンテナはどこに行くかなんて、想像がつかない。


4月15日(月)
会社の飲み会。ぼくが幹事を務めたので、お店を取った。ただ今回はだいぶチャレンジングな店選びをしてしまった。

お店に予約の電話した時、店員さんに「実は移転することになって、閉店したんです」と言われた。しかし話しているうちに「移転前の一踏ん張りで特別に営業します!」と言われ、お店を開けてくれることになったのだ。なんだそれ。

お店に着くと、ぼくたち以外のお客さんはおらず貸切状態だった。課長の乾杯を皮切りに、みんなで瓶ビールを空けていく。(本当は閉店したので、生ビールではなく瓶ビールをお店が仕入れていた)

おかわりの注文を繰り返していると、即行で「ビール切れちゃいました…」と店員さんに言われた。そりゃそうだ。我々のために仕入れているのだから、そんなに用意しているわけがない。

(もうビール飲めないの?)という雰囲気がメンバーに漂う。流石に閉店した店を会社の飲み会で使うのは失敗だったか…。背中に汗がツーと通る感覚がする。

代わりにハイボールやチューハイで注文を進めていく。お店選びのせいで貴重な懇親の機会を損ねていないだろうか…と不安になっているうちに、コースは終盤を迎えていた。

店員さんが大きな土鍋を持って席に現れる。そしてテーブルの中央でフタを持ち上げた瞬間、みんなから歓喜の声が上がった。

見たことないほどのカニとイクラが乗った炊き込みご飯だ!

「こんなのはじめて!」という声が聞こえてくる。ビール枯渇問題を吹き返すほどのボルテージがそこにあった。

飲み会は無事に終了し、お店を後にする。同僚たちが口々に声をかけてくれた。

「イクラごはん最高だったよ。予約ありがとう」
「閉店後の居酒屋行くとか、いい経験になったわ」

寛容な人たちでよかった。閉店したのに受け入れてくれた店員さんにも感謝だ。あのごはんを、移転先にも食べに行きたい。

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