「立てよ! 薬剤師!!」プロジェクト ~ 私が記事を書く理由 ~

「立てよ! 薬剤師!!」プロジェクト ~ 私が記事を書く理由 ~


 今、薬局ではかなりの業務を機械が担っています。錠剤自動分包機、散剤自動分包機、医薬品発注システムなどがあります。私の勤める薬局の散剤自動分包機は全自動ではありませんが、世の中には既に存在しています。大病院になると注射薬の自動混注機を持っている場合もあります。「調剤」に関しては食品産業と似た部分が大いにあるので自動化の流れは当然でしょう。厚生省からは対物から対人への業務シフトの方針が掲げられています。病院では院内薬局から病棟へ、保険薬局では在宅医療への参画が進められています。では薬剤師が参画すると何がよくなるのでしょうか? 薬剤師が介入することによる効果を検証した研究はたくさんあります。幾つかご紹介します。

A pharmacist based intervention to improve the care of patients with CKD: a pragmatic, randomized, controlled trial.  PMID: 25881226

 この研究は退役軍人の方を対象に、薬剤師が医療情報、医薬品情報等で介入したことで、血圧のコントロール・末期の腎不全への移行数・死亡数に変化があるのかを調査しました。結果を表1に示します。

表1

Pharmacist participation in hospital ward teams and hospital readmission rates among people with dementia: a randomized controlled trial.  PMID: 28391409

 この研究は65歳以上の認知症患者さんを対象に、投薬歴・相互作用・臓器機能の監視で薬剤師が介入することにより薬関連の再入院を減らすことができるかを検証しました。結果を表2に示します。

表2 調査開始30~180日後の再入院数

結果は薬剤師が介入しても再入院は減らなかったというものでした。薬剤師の介入は「臨床的な効果」にはあまり影響しないようです。
では効果が上がらないなら薬剤師の意義はないのでしょうか? 最近はポリファーマシー(多剤処方)が問題視され、その解消に薬剤師の介入が期待されています。薬剤師がポリファーマシーへ介入するとどのような効果があるのでしょうか? ポリファーマシーへの薬剤師の介入を検証した研究があります。
Clinical medication review by a pharmacist of elderly people living in care homes--randomised controlled trial.  PMID: 16905764
この研究は介護施設に入居の高齢者に対する薬剤師による薬剤数調整の影響を検証しています。結果を表3に示します。

表3 薬剤数の変化

結果は活動性、精神状態に変化を与えずに薬剤数を減少させ、転倒のリスクも減少させる可能性も示唆されました。積極的な+αの効果が無くてもこのような形の貢献もあります。併用薬剤数と有害事象には相関がみられます(表4)。
表4 併用薬剤数と有害事象の関連(外来・救急/1995―2005:U.S)


 副作用のリスクが下がり、医療費も下がる可能性があるのであれば有意義な結果と言えます。ではこれが薬剤師の真価でしょうか? 
この数年で機械学習、ディープラーニングなどの技術により人工知能の発展が著しいです。膨大なデータからパターンを見出し、それをもとに予測する精度と速度は人間を超えました。先ほどのポリファーマシーにおいても処方データをもとに薬剤数からポリファーマシーを割り出し、警告を出すことは可能となります。さらに患者さんの状態や同種同効薬のデータも組み入れれば、どの薬剤を残すべきかをコストも踏まえた処方内容案も出すことも可能でしょう。データ処理に関しては人間以上のパフォーマンスを発揮する可能性があります。こうなると薬剤師の職能はほぼ機械で代替可能な気がしてきました。数十年後にはそうなることは十分あり得ます。しかし、AIが示すのは過去のデータを参考にした将来の確率です。完全な予知などはどんなにAIが発達しようとも過去に基づく限り不可能です。「外れるかもしれない」、あくまで確率です。さまざまな思想・背景を抱える患者さんが無機質なデータをうまく呑み込めるようにサポートする部分にこそ薬剤師の役割があると思います。

1. Cooney D, Moon H, Liu Y, Miller RT, Perzynski A, Watts B, Drawz PE. BMC Nephrol. 2015 Apr 16;16:56. doi: 10.1186/s12882-015-0052-2.
2. Gustafsson M, Sjölander M, Pfister B, Jonsson J, Schneede J, Lövheim H. Eur J Clin Pharmacol. 2017 Jul;73(7):827-835. doi: 10.1007/s00228-017-2249-8. Epub 2017 Apr 8.
3. Zermansky AG, Alldred DP, Petty DR, Raynor DK, Freemantle N, Eastaugh J, Bowie P. Age Ageing. 2006 Nov;35(6):586-91. Epub 2006 Aug 12.

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調剤薬局の薬剤師です! 薬というモノと人に向き合い、日々奮闘中。