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pmconf 2019 初日参加レポ

ORDINARY PEOPLE, EXTRAORDINARY RESULTS

INSPIRED著者のMarty Caganによる講演。正直この講演を聞けただけで来た価値があったなと思える内容だった。なんとか抜粋しつつ、短くまとめてみる。

プロダクトチームには2種類ある

・フィーチャーチーム
・プロダクトチーム

フィーチャーチーム
ロードマップを与えられ、それに沿って実装していくチーム。価値を作るのはロードマップを作る人の仕事だと思っており、顧客への責任がない。

プロダクトチーム
顧客のことを考え、課題解決のソリューションを提供する。と同時にビジネスのニーズにも答える。このチームは誰もが顧客のことを考え、課題を解決するためにできることを行っているので、顧客に対する責任がある。

もちろん我々が目指すべきはプロダクトチームで、このチームはEmpowerdである必要があるという。Empowerdには「強化された」という意味がありますが、ここでは「権限が与えられた」という訳が適切かなと思います。

Empowerd Teamsは昔から語られており、いろんな書籍も出ている。Marty Caganさんの一番お気に入りは、イスラエルのチームの物語であるSTART-UP NATION。

また、シリコンバレーでよく言われることとして、伝道師のプロダクトチームがほしいという話がある。傭兵がいれば言われたことはやってくれる。しかし、伝道師はただ動くだけでなく、なぜその仕事をするのかを理解し、そこに意味を見出し、情熱を持って働ける。その結果、傭兵より伝道師の方がより大きい成果を出せる。

Empowerd Teamsの作り方

ではどうすればEmpowerd Teams(権限が与えられたチーム)が作れるのか。それは上の人達がチームを信頼すること。既存企業でEmpowerd Teamが実現できないのは、結局の所、チームを信用・信頼できていないからだと言う。その結果、プロダクトマネージャーがプロダクトマネージャーの仕事を出来ていない。まずは信頼関係を築くことが必要。

彼らは「プロジェクト」マネージャーが必要だと思ってしまっている。しかし、製品に責任を持つ人がいないと、プロダクトは良くならない。もしあなた達の組織に、フィーチャーチームしかいないのであれば、それは本当のプロダクトマネージャーがいないということである。

プロダクトマネジメントの学習

近くにコーチがいたり、学ぶ機会がある人はかなりラッキーである。しかし、現実はその様なケースは少なく、独学や経験から学んでいくしか無い。

Amazon、Apple、Google。この3社はなぜいつもイノベーティブなのか。実はこの3社は最初の10年、ビル・キャンベルという、全く同じエグゼクティブコーチのもとで学んでいる。今まであまり表に出てきてなかったのは、彼自信が、彼に注目が集まるよりも、彼がコーチした人に注目が集まることを望んだからである。

リーダーシップの役割

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・Product Vision
 ・良いプロダクトは良いプロダクトチームから生まれる
 ・25人のチームメンバーがいて、同じ方向を向くのはかんたんなことではない
 ・その時にノーススター、北極星が大事になる
 ・伝道師として働くことが大事。魅力的なビジョンが必要
・Product Strategy
・Product Principles
 ・valueが反映される
 ・ビジネス、マーケットの原則
・Product Priorities
 ・何が重要なのかを決める
・Product Evangelism
 ・社内に対して伝道師として語れるかどうかが大事

Empowerd Teamsかどうかを図るためのテスト

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・チームには、必要なスキルの範囲をカバーする特性を備えた、有能な人材が配置されている。
・チームには解決すべき問題が割り当てられており、それらの問題を解決する最善の方法を決定することができる。
・チームは、顧客またはビジネスの問題(成果)を解決する責任がある。

Special Session

TranswerWiseという、国際送金サービスのHead or Product、Kaarel Kudduさんのセッション。1500億円の節約に貢献という途方も無い成果を出している。8年前は2人からスタートした企業がどの様に成長して生きたかの話。

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・速さと持続性を重視した最善の方法
・顧客により近い場所で意思決定を行うために、チーム内で行う
・製品計画、ロードマップ、戦略会議を決定するための会議はしない
・チームが正しい決定を下すこと、間違ったとしてもそこから学習することを信頼している

どうやってそのチームを作るか

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ここでいきなり、経営できる人を雇いましょう、と。分からなくないけど、それはもう子会社なのでは、、と思ってしまった。

LINEにおけるお金とユーザーのジレンマ

LINEではプロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーを明確に分けていないそうです。

フェーズによって一人のプロダクトマネージャーの中の人格の配分が変わる、という考え方は面白かったのですが、本当にPMというのは何でもやらないといけないんだなぁということを強く感じさせられました。

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「数字とかそれっぽい説明はいい。画面を見せろ」

という組織風土も良いなと思えました。

つまり、作ってる側の論理は置いといて、徹底的に「ユーザー目線」で触ってみる。どれだけ難しかったり、調整しにくかったり、ということはユーザーには一切関係ないんだと。

これは強く共感することがあって、ここで作り手の論理だけで進めてしまうと妥協の産物が出来てしまうんだと思います。

ジレンマはHowを2回繰り返したら同じになる

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ありがちな例として、営業と企画との意見が食い違うことがある。しかし、なぜそうしたいのか?という理由を2回繰り返すと、実は目的は同じになるという持論の話でした。

これはなかなか面白かったです。立場が違うとやりたいことの打ち手が異なり、それが二律背反に思えても、より踏み込んでいくと、意外と根本の解決したいことは同じなことが多いそうです。

PMにおけるストーリーテリング

このセッションは個人的にMarty Caganさんの次に刺さった内容でした。

freeeで担当していた「給与計算フリー」が、競争激化により機能不足が社内外から囁かれるようになった。これを打破すべく、開発を強化して足りない機能を追加していった。

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その結果、なんと事業撤退の意思決定を迫られてしまった。

その理由として、バックログの縮小均衡に陥ったとしている。

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単に足りない機能を追加しているだけでは誰のテンションも上がらず、どんどん陳腐化していってしまった。プロダクト開発に関わってる人間はみんな、何のためにやるのかを多かれ少なかれ意識するので、ただの作業になってしまったんだろうなということが想像に難くないですね。

さて、これをどう打破したかという話ですが、プロダクトビジョンを作ったそうです。そして再起動、、すると思いきや、とっくに変わらなかったと。

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ビジョンを作ったは良いが、それを浸透させることが出来ておらず、チームの行動が変わらなかったと。ではそれを浸透させるために何をすべきか、を考えた結果、ストーリーテリングが重要ということを思いつきます。

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ストーリーは話したくなるし、ストーリーは人々の記憶に残ります。

ストーリー化することで、ビジョンが周りに伝搬していきました。またバックログに意味がやどり、意思決定しやすくなったそうです。

イソップ童話のレンガ職人という話がありますが、自分の守備範囲だけに閉じるのではなく、全体として作るものがある。自分の役割はその中のここだ。とした方が、すべての作業に意味がやどるので働く側のモチベーションにも大きく影響してきます。

ストーリーを作った後は手段を問わず叫び続けることが大事と言います。なんならバズればOKくらいの精神が大事のようです。よくある方法としてTシャツやグッズを作ることがありますが、あれはビジョンを共有した後に作らないと逆に冷めてしまうことが多い印象なので諸刃の剣な気がします。

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結局の所、「自分ごとに出来るかどうか」が一番大事だなと改めて感じました。

10xのための逆説

yamottyさんがフォローアップ記事を書かれています。
https://yamotty.tokyo/post/20191112_pmconf/

ここでは、印象に残った部分を抜粋してみます。

・特定の人物の、特定のシーンの、重要なイシューを解決する
・リーンは「コストを抑えて芯を探す」手段
・B向けのフリクションポイントは、非生産的システム・複雑なオペレーション・ガバナンスであることが多い
・人が欲しがるものよりも、シーンで必ず使われるものを作れ
・グロースハックが必要なプロダクトは極めて少ない。グランドデザインの方が圧倒的に大事
・権威的な事例から導かれた定説は自身のプロダクトの成功とほぼ無関係

10xのための逆説、というタイトルだけあって、今まで定説とされてきたことを気持ちいいくらいにひっくり返してくれました。

もともと、とても頭の良い方なんだろうなーと思いつつ、ここにたどり着くまでにどれだけの施策を打ってきたんだろうと考えると気が遠くなってきました。

企業が求めるプロダクトマネージャーとその人材戦略

及川さんがモデレーターをやると、半分くらい及川さんが話すという笑

プロダクトマネージャーの適正
グッドパッチの失敗事例として、PMを社外から採ってしまったことがあった。Whatを提示できなかったのでうまくいかず。その失敗を元に、こんどは新卒をPMにするとうまく行った。

スキル以上に、会社の文脈、文化をどれだけ知っているかが大事。また、創業者との信頼関係も外すことは出来ない。

ニューズピックスでは、ミッションに共感できているかが重要という。プロダクト愛が必要。愛がないとプロダクトに魂を込めれないと。

このプロダクト愛や魂を込めるというの部分は、とても共感できます。ここを未だにうまく表現できずに苦労します。作り手が愛してないものが、他の人から愛されることは万に一つも無いと思っています。

プロダクトマネージャーのオンボーディングについて
信頼残高が無い状態でチームでうまくやるのは難しいため、分かりやすい花を持たせるPJを渡してあげて成功体験を積んでもらうのは大事。

グッドパッチの場合は、半年から1年創業者と並走し、ロードマップの優先度付けの感覚が揃ってきたらデリゲートしていくそうです。

丸山さん、
まず、短期的に何をやってもらいたいのかっていうことを伝える。先々こんなことをしてもらたい、と2段構えでミッションを伝える。それに加えてチューニング期間が必要で、だいたい3週間位は必要。
お客さまに推奨しているのは、初日のランチなど一緒に行くこと。細かいことだが、最初はとても孤独。
入った人は3ヶ月で一つの成果を上げるのを目標にしてもらう。

まとめ

pmconf初の参加でしたが、INSPIRED著者のMarty Caganさんの講演を聞けたのは本当にラッキーでした。

プロダクトマネージャーの役割は知れば知るほどに深くなっていきます。よく言われるミニCEOというのは本当に言い得て妙だなと。今日のセッションでも経営できる人を雇え、という話もありましたし。

そうなってくると、何をどう伸ばしていけばよいのか、まだ指標が明確になっていないのでそこを探しているところです。さて、2日目にヒントはあったのか。引き続き2日目も振り返ってみようと思います。

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