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【本】幸せを考えるきっかけになる本

映画にもなっていて、題名だけは知っていた
本屋さんで、たまたま見かけて
「原作を読んでみようかな」と思った本

読んでよかったと思う

『アルジャーノンに花束を〔新版〕』
ダニエル・キイス 小尾芙佐 訳 早川書房

主人公がアルジャーノンかとよくある勘違いをしていたけど、チャーリイというパン屋で働く32歳の男性が主人公

幼児なみの知能しかないチャーリイが「頭がよくなる手術」を受けて、天才になっていく
その時の状況を本人が、日記に残しながら話が進んでいく

幼児なみの知能しかなかったときには気づかなかった、周囲の自分に対する反応など、知能が高くなることで「知ってしまうこと」に興味をもった

一緒に仕事を頑張っている、仲間として歓迎されている、と思っていたことが違うことを知ってしまう

手術をしてくれた頭のいい先生たちが、自分よりも知らないことを知ってしまう

頭がよくなれば、幸せになれると思っていたのに、知らないほうが幸せだったことがたくさんあることを知ってしまう

物をたくさん持っているから幸せとか
買いたいものが買えるから幸せとか
そんなのだけが「幸せ」ではないことは知っていた

けど、知識とか体験が人に幸せだけじゃなくて、悲しみとか苦しみを運んでくることに気付かされた

チャーリイの場合、知能だけが高くなり、情緒面は同じ速さで高くなるわけではなく、体験と葛藤と思考を通して少しずつ成長していった

「知識だけがある」
「経験だけがある」

これだけではなく
「考える力がある」
が加わらないと、幸せを理解することができないのかなと思った

チャーリイがまた少しずつ知能が低下していく状況を日記を通して読んでいく
胸が苦しくなる
自分がチャーリイだったら、と重ねて考えてしまい
「本当の幸せ」について真剣に考える

多分、答えは出せない問題だけど
考えることが大切だと思う


他にもこの本のおすすめポイントは
翻訳者小尾芙佐さんの素晴らしさ

この本は全体的にチャーリイの日記を読んでいくスタイル
知能が低いチャーリイからだんだん知能が発達して、大天才になっていく状況を文章で知ることができる
知能が低いときは、小さな「っ」がなかったり、言葉も幼稚でひらがなで書かれている
それがだんだん「っ」がきちんと書かれるようになったり、漢字が増えてきたり、最終的には専門用語の難しい言葉が、ズラズラ並びだす
その、言葉の選び方や表現の仕方にプロを感じる

調べてみると小尾芙佐さんは他にも、スティーブン・キングの『IT』を翻訳されていたり、かなりの実力派な方だった
『IT』は、ハードカバーな上に、二段で文章が書かれていて、とてもじゃないけど読みきれない、と諦めた本のひとつ
今年こそ読もうと思う

本を読んで、考える機会を持てること、それもまた幸せだと思う

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