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【本】ゆっくりとした時間を感じられる本

Kindle Unlimitedに追加されていて読んだ本

『光のところにいてね』一穂ミチ 文藝春秋

お互いママに従うしか生きていく方法を知らない、優等生の女の子と無邪気で野性的な女の子
鉄棒しかない小さな公園で、水曜日、30分だけ遊ぶ
それは、ママにバレないように、ふたりだけの秘密になった

「光のとこにいてね」は、子どもらしい表現だと思う
待っていてほしい場所を「光」という、どこにでもあるし、影がなくなれば、消えてなくなってしまうものにしている

待っていてほしいという強い気持ちと、いつなくなるかもわからない光という場所が対照的で、切ない

最後まで、その強さと儚さが文章の中に現れる
ゆっくりとリズミカルに話が進んでいく


一穂さんの文章には、冷たい場面でもあたたかさ、スピード感のある場面でも丁寧さがある

子どもの頃の「狭い世界」で必死に生きていく姿とか、大人になって考えれば歪んでいる家族関係とか、ダークな部分も輪郭がはっきりしすぎずに語られるから、読みやすい

一気に読み終わってしまったけど、読むスピード感とは対照的に文章のスピード感がゆっくりしている
焦っている場面でも、描写が丁寧でスローモーションを見ているみたいになる
その感覚が、読み終わったあとも続いて、現実の世界もゆっくり進んでいる気になる

その不思議な感覚が印象に残る本だった

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