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病院爆撃のイスラエルの「情報戦」- 言いなりで虐殺と侵攻を許可する無能なアメリカ 

ガザの病院が爆撃されて民間人500人以上が殺戮された件。どのような情報戦がマスコミとネットで繰り出され、イスラエルによる「証拠」が提示されても、イスラエルの仕業ではないと心底納得している者は少ないだろう。一報を伝えたロイターは「イスラエル軍がガザ病院空爆、少なくとも500人死亡」と書いている。カナダのトルドーは、この蛮行を即座に強い言葉で非難した。その後、イスラエルの巻き返しの情報戦が始まり、武装組織「イスラム聖戦」が放ったロケット弾の誤爆で起きた「爆発」だと反論が出る。世界が固唾をのんでアメリカの反応と判断に注目する中、エルサレムに着いたバイデンは、首脳会談の席で「イスラエル以外の勢力によるよるもの」という見方を示し、イスラエルの弁解を認めた。日本のマスコミは、この狡猾な責任転嫁を「正確な認識」として撒いている。(写真はアルジャジーラ)

私がイスラエル犯行説を採る根拠は、アメリカの情報機関(CIA)が、イスラエル側の釈明と情報工作をすぐにオーソライズしなかった点にある。CIAは軍事衛星でガザの地上と上空の刻一刻を精密に監視し分析している。その能力はイスラエルよりも上だろう。10/17 のハマスの奇襲が起き、それを未然に防止できなかった責任は、イスラエル軍だけでなくCIAにもあるだろうから、当然、現在CIAはガザについて最大最高の技術と人的資源を投入して解析し、当該空間の動きをすべて漏らさず探知・捕捉しているに違いない。そのアメリカ(国防総省)が、イスラエル軍の発表の直後にその追認と確定をしなかった。バイデンはイスラエルに出発する前、病院爆撃を受けた会見で「何が実際に起きたのか情報を収集するよう指示を出した」と言っている。日本時間の18日朝9時頃だ。

イスラエル軍報道官の否認会見の報道が出たのが、日本時間朝7時頃であり、もしイスラエル軍側の説明が正しかったのであれば、アメリカはすぐにその場でエンドースできたはずだ。ハマスと戦争する同盟国であり、イスラエルの最大の庇護者なのだから。イスラエル軍と協議し、双方のデータを照会し合い、相互検証し、現地時間17日夜7時頃のアル・アハリ病院付近上空の正確な事実関係を明らかにしただろう。本来なら、二者(米軍とイスラエル軍)の解明と判断は基本的に一致するはずだ。が、イスラエル軍は先に「イスラム聖戦」の誤射誤爆と断定した。日本時間の18日午前早朝である。その前、日本時間の午前6時過ぎのタイムスタンプのロイター記事を確認すると、イスラエル軍は「なお全ての詳細を調査中」とコメントしており、この時点でイスラエルは「イスラム聖戦」の誤射誤爆だと言っていない。この事実は重要な状況証拠だろう。同様の情報は他にもある。

アラブニュースが配信した日本時間18日午前1時10分の記事では、「イスラエル軍は、報告された爆撃についての詳細は不明だが、確認中であると述べた」とある。これも見逃せない。つまり、爆撃と殺戮が起きた後、4時間ほどは、イスラエルは事件原因の特定に至っておらず、調査中として報道発表を行っていない。おそらくこの時間帯、CIAと軍事協議していたのだろう。そして日本時間18日早朝に「結論」が出され、その1-2時間後にバイデンが「情報収集を指示」と記者の前で発言した。CIAの分析結果とイスラエルの「結論」が食い違ったから、こうした不一致で不整合な対応と声明になったと考えられる。が、すでにバイデンのイスラエル訪問は決まっていて、キャンセルもできず、首脳会談で連帯を誓い合う政治も手筈が決まっていたから、それを撤回したり、水を差す材料は入れられなかったのだ。

イスラエル主導で事が運び、イスラエルが決めたとおりの「事件説明」にアメリカが盲従する進行になった。CIAの技術調査部門としては痛恨で屈辱の事態だろうし、米情報機関の政治責任者(バーンズとサリバン)も内心は穏やかでないだろう。イスラエルの狂暴な情報戦にアメリカが唯々諾々とお墨付きを与えた図であり、アメリカの主導権や統制力はどこにもない。アメリカがイスラエルのイヌになっている。諜報においてはいわゆる「泣く子も黙る」と評されるイスラエルの諜報機関のことだから、捏造を含めた情報工作は自家薬籠中のもので、対するパレスチナやイランの側にはそれを覆す技術的証明能力はない。情報戦の戦力も全く非対称であり、軍事衛星もなければ通信傍受のシステムもない。それ以前に、イスラエルの空爆や砲撃からガザを守る防空システムすらない。そこはただの「屋根のない監獄」だ。

イスラエルのガザへの攻撃は屠殺である。人が無抵抗な飼牛群を一方的に屠殺するのと同じで、これは戦争ではない。残忍な殺戮であり大虐殺だ。ハマスが虐殺覚悟の抵抗をしている図は、高橋和夫が正しく説明したように、他に抵抗の手段がなく、追い詰められて自滅覚悟で敢行しているところの、ナチス支配下のユダヤ人ゲットーでの蜂起とか、強制収容所での死を覚悟した反乱行動と同じだ。それが本質なのに、われわれ日本人は目の前の現実に対して「非対称の戦争」を言い、悪魔化したハマスのテロのみを集中攻撃し、ひたすらイスラエル目線に徹して、地下トンネルがどうのこうのと言っている。無残に虫けらのように殺されて行くパレスチナ人の人権を言わない。そこに内在しない。同じ人間としての憐れみを覚えようとせず、不条理を感じようとしない。無視して流す。日本人だけでなく、EUも国連事務総長も同じ。

日本のテレビ報道やネット言論を聞くかぎり、日本人のほぼ全員が、イランは本心ではイスラエル・アメリカとの戦争を恐れているとか、ヒズボラの参戦はあり得ないという楽観的観測を決め込んでいる。その理由は、イスラエルの方が軍事的に圧倒的に強力で、開戦すれば彼らの惨敗の結果になるからという理解だ。報道1930の堤伸輔がその代表格である。だが、その予想は、10/7 以前にイスラエルがハマスに持っていた認識と同じではないのか。ハマスはイスラエルが想定していた以上の武力と戦術を持ち、忍耐力と戦闘意思を持っていた。ハマスが持っていた資質を、ヒズボラやイランが持っていないと何故断言できるのだろう。人は、極限まで追い詰められ、死と引き換えの反撃の勇気を出すことはある。傲慢なイスラエルはハマスを見誤っていた。同じ傲慢で不遜な視線を、われわれはイランとイスラムに送っているのではないか。

今回、何とも恥ずかしく惨めな失態を晒したのはアメリカであり、バイデンである。イスラエルの言いなり。何のリーダーシップも発揮できず、仲介者の役割も果たせず、ただ中東の戦争危機を煽る方向でしか外交できなかった。イスラエルを抑制する影響力を行使できず、事態を収束へと導く展望を示せなかった。イスラエルに侵攻と虐殺のアプルーバルを与えただけで、イランとの緊張を高め、イスラム世界全体からの失望と憎悪を買っただけだ。イスラエルに何も言えない無能で臆病なアメリカ。選挙の国内票を計算するだけのバイデン。中東の平和維持に何の関与もできず、殺戮と地獄へ向かわせるだけのアメリカ。中東イスラムの民衆から不信と軽蔑だけを受け、グローバルサウスにおける威信失墜を深くするだけのアメリカ。バイデンとネタニヤフの首脳会談は、まさにその政治を象徴的に映し出し、世界の人々に確信させた脱力の絵だった。

アメリカの力はすっかり衰えた。そう印象づけられる。指導力がない。この問題を収拾に導く知恵も胆力もない。

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