ヱリ

3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビ…

ヱリ

3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビールとアートが好きです。へんなものを見つけると嬉しくなります。

マガジン

  • ナガバナシ

    2000字以上の物語。複数回に分けて公開したものもここに入れてます。

  • 自己紹介みたいな

    創作以外の記事やつぶやきをまとめています。自己紹介がわりになる、かもしれないです。

  • シロクマ文芸部

    お題の言葉を冒頭一語目にして作品をつくる、シロクマ文芸部への参加記事です。

  • ザッキ

    3行から5行の雑記。印象に残った一言や風景の覚え書きなど。

  • わたしたちのLINE

    日々のLINEから抜粋。昭和生まれの私と平成生まれの妹の雑談記録です。

最近の記事

  • 固定された記事

ベルガモットのともだち【ピリカ文庫】

「自分からは誘わないのに、誘われたら絶対来る人って、何考えてるんですかね?」 羽瀬ちゃんに訊かれて、テスターの小瓶をつかみ上げた手が止まる。 定時で仕事が終わった者同士オフィスを出て、飲み会が始まるまでの時間をつぶすために駅ビルに入り、エスカレーター横の特設スペースの、白木棚に並べられたアロマオイルの香りを端から順に嗅いでいるところだった。 平然を装って指先にちからを込め、小瓶の蓋を回し開ける。 「誰のはなし? ナーコとか? 中村さんとか?」 これから合流する予定になっ

    • この世に鯖専用の日本酒があることに感動したはずなのに、この後まぁまぁの量の日本酒を飲んでしまったせいで味がイマイチ思い出せない火曜日。

      • 公園で。隣のベンチで電話している女性の声が心地よかったので耳を傾けると、ヒラヒラしたスカートが踊りやすいとのこと。アベさんはLINEもメールもできるちゃんとした方だから大丈夫とのこと。私があんぱんの袋を取り出したら、女性の膝上でお座りしてたプードルがハッとこちらを見て可愛かった。

        • ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

          すすぎの音を立てるドラム式の洗濯乾燥機の中で、元気に泳いでいるのは河童だった。 洗濯槽が右に左に回転するたびに生み出される、ねじれた水流の中をほとんど転がるようにして、河童は短い手足で気持ちよさそうに水を掻いている。ウィルキンソン炭酸のずんぐりとした1Lペットボトルほどの大きさしかないので、河童はまだ子どもなのだろう。マンションの一階部分に完備されたコインランドリーの、二台並べ置かれたうちの右側の洗濯乾燥機を指差しながら、僕は先客に声をかける。 「これだめでしょ」 ベン

        • 固定された記事

        ベルガモットのともだち【ピリカ文庫】

        • この世に鯖専用の日本酒があることに感動したはずなのに、この後まぁまぁの量の日本酒を飲んでしまったせいで味がイマイチ思い出せない火曜日。

        • 公園で。隣のベンチで電話している女性の声が心地よかったので耳を傾けると、ヒラヒラしたスカートが踊りやすいとのこと。アベさんはLINEもメールもできるちゃんとした方だから大丈夫とのこと。私があんぱんの袋を取り出したら、女性の膝上でお座りしてたプードルがハッとこちらを見て可愛かった。

        • ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

        マガジン

        • ナガバナシ
          12本
        • 自己紹介みたいな
          23本
        • シロクマ文芸部
          36本
        • ザッキ
          71本
        • わたしたちのLINE
          16本
        • コバナシ
          12本

        記事

          以下レシートの転記。 国産鶏もも唐揚用398/日清ごま香油439/割烹白だし329/シャローワンズ328 自分が30分前に買ったものなのに、記憶を辿っても食材を格納した冷蔵庫を確かめてもシャローワンズが何なのか絶望的に分からなくて、とうとうweb検索をしてしまった夕方。

          以下レシートの転記。 国産鶏もも唐揚用398/日清ごま香油439/割烹白だし329/シャローワンズ328 自分が30分前に買ったものなのに、記憶を辿っても食材を格納した冷蔵庫を確かめてもシャローワンズが何なのか絶望的に分からなくて、とうとうweb検索をしてしまった夕方。

          日帰りスパのレストランにて。ホットコーヒーを飲んでたら口寂しくなったのでガトーショコラを追加注文し、食べ終わったら本格的にお腹が空いてきたので台湾まぜそばを頼み、まぜそば食べ始めたら飲まずにいられなくて「ビールください」とか言ってしまい、完全にベンジャミンバトンな食事だった。

          日帰りスパのレストランにて。ホットコーヒーを飲んでたら口寂しくなったのでガトーショコラを追加注文し、食べ終わったら本格的にお腹が空いてきたので台湾まぜそばを頼み、まぜそば食べ始めたら飲まずにいられなくて「ビールください」とか言ってしまい、完全にベンジャミンバトンな食事だった。

          邂逅ビワレイク

          年忌を重ねるたびに薄れてゆく夫が、今年はとうとう、人のかたちをした淡い影に成り果てていた。玄関と部屋を隔てる硝子戸の前に立ち尽くす、骨格の華奢な人影は夫であるようにも見えるし、夫でないようにも見える。炬燵で寝そべっていた体をもたげると、透けたり濃くしたりを繰り返していた影が、軽く握った右手を頬にあてた。親指でメガネを上げる、見覚えのある仕草に思いがけず胸が締めつけられて 「わたし琵琶湖いく約束してるから」 突き放すように今日の予定を口走る。十五年前に死んで以来、命日に欠か

          邂逅ビワレイク

          初めて聞いたすまスパはあやしもさんゲスト回だったなぁ、と思い返しながら2年ぶりに拝聴。たのしい!当時すまスパはnoteの公式チャンネルで、ピリカさんとMarmaladeさんはnoteの運営の方で、noterさん=公式の企画を担当してるnoteの中の人、と思いながら聞いてました。笑

          初めて聞いたすまスパはあやしもさんゲスト回だったなぁ、と思い返しながら2年ぶりに拝聴。たのしい!当時すまスパはnoteの公式チャンネルで、ピリカさんとMarmaladeさんはnoteの運営の方で、noterさん=公式の企画を担当してるnoteの中の人、と思いながら聞いてました。笑

          平熱のティータイム

          「春の夢なので、三十六度がちょうど良いでしょうね」 茶師に言われて頷いたけれど、お茶のことは何も知らない。 霞がかった空色を広げる晴れた午後に、店にいる客はわたしだけだった。L字型をしたモルタルのカウンターには炉が備えられ、据え置かれた鉄釜からほのかに湯気が上がっている。そこへ音もなく柄杓が沈められると、汲み上げられた湯は白い陶器にそそがれた。みっつ並べられた湯さましの、いま湯の張られた右側の器を茶師が手に取り、真ん中に全て流し切ってから器を持ち替え、左側の器へと移してゆく

          平熱のティータイム

          金のアレ、銀のアレ

          木曜日。おいしいところを最後に食べようと思い、今川焼きの周りをぐるりと一周かじり切ったところで電話が鳴る。 「あなたが食べているのは甘夏マスカルポーネですか? それとも抹茶ティラミスですか?」 コールセンターの喧騒をまといながら柔かに訊かれ、「食べているのは小倉ですが、その今川焼きも食べたいです」正直に答えて購入の手続きをする。

          金のアレ、銀のアレ

          今日でnote1歳になりました。 いつも読んでくださる皆様、遊んでくださる皆様、ありがとうございます。 おかげさまでnoteがすごく楽しいです。

          今日でnote1歳になりました。 いつも読んでくださる皆様、遊んでくださる皆様、ありがとうございます。 おかげさまでnoteがすごく楽しいです。

          チャイムの鳴るまで【piano】

          まんまるがうつくしいから。やわらかくて儚いから。後戻りのできない形だから。揃いも揃って晴れの日に膨らみ満ちてしまって、もう飛んでゆくより他ないから。 近所の霊園のたんぽぽがいっせいに綿毛になっているのを見ながら、毎年この風景に胸がしめつけられる理由を考えていたら、すごく似たものを最近見たような気がしてきた。よい旅になりますように、と、いつもなら思わないような感想をたんぽぽに抱いて西友に行く。

          チャイムの鳴るまで【piano】

          チャイムの鳴るまで【piano】

          長男の卒業文集を半分読んだところで、あまりに文章にあてられて冊子を閉じてしまった。多様さ、無防備さ、激しさ、うつくしさ。色々言葉を巡らせてみたけど、15歳の人々の文章の何に自分が圧倒されているのか一向に言語化できない。子どもたち愛しい、みたいな感動とは違うかんじ。また明日読む。

          長男の卒業文集を半分読んだところで、あまりに文章にあてられて冊子を閉じてしまった。多様さ、無防備さ、激しさ、うつくしさ。色々言葉を巡らせてみたけど、15歳の人々の文章の何に自分が圧倒されているのか一向に言語化できない。子どもたち愛しい、みたいな感動とは違うかんじ。また明日読む。

          無病息災って言いたかった

          金曜日。バスが来るまで暇つぶしに願掛けでもしようと浜に下り、海から生え出る鳥居に近づいて見るとヒョウ柄だったので心もとない。 利益のないところで祈るのは勿体無いような気がして「ここって効果ありますか?」熱心に祈っている人たちにおずおず訊くと、俯けられていた顔が一斉に上がり「白より赤、赤より豹」全員から轟くように諭されたので慌てて目をつむり手を合わせる。 動揺したせいで健康を祈る四字熟語がどうしても思い出せず「海上生命、海上生命、海上生命」代わりに唱えて願を懸ける。

          無病息災って言いたかった

          東海道中ジンギスカン

          木曜日。新幹線の食堂車に乗っているのに、ジンギスカンの煙があまりに逞しくて窓の外の景色がまるで見えない。 富士山の前を通過する前に焼き終わりたいと思っていると「おかわりラムふたつ」正面に座っている女が勝手に追加注文をしたので「もういらんけど」慌てて断ると「富士山ならとっくに過ぎたで」と教えてくる。 立ち籠める煙の中から、女の笑っている気配がする。この女が昔からこういう性格だったことを思い出し、せめて悔しがっていることを悟られないようにしたい気持ちで「やっぱりおかわり野菜も

          東海道中ジンギスカン

          自分の人生、自分で決める女【LINE】

          次男が持ち帰ってきた家庭科のレポートを見て、省みたい気持ちになったので妹にLINEする。 <以下、わたしと妹のLINEの転記> 「絵が違うものに見えた上に、エロエロした、って感想書いてるのかと思った」 「外でLINE見るんじゃなかった」 「正解:コロコロした」 「私は『おいしいゆでたまご』が最初に飛び込んできたので事なきを得た。認知の勝利」 「さっきキリから聞いた話していい?」 「どうぞ」 「小学校の手洗い場で、底にたまった濁り水で手洗ってる友達を横目に蛇口ひ

          自分の人生、自分で決める女【LINE】