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こんな純粋な目をしていた頃

先日から投稿してきた人形劇について、
新たに第5シリーズを以下、記載したいと思います。


本作は、

オープニング
   ↓
メインキャラ4人のコーナー
   ↓
エンディング

という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。




今回は、エンディングをお送りしたいと思います。



<人形劇 登場人物>


・もんじゃ姫

 →本作の主人公。
  頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。


・さばみそ博士

 →頭の上にさばの味噌煮が乗った、
  語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。


・ハバネロ姉さん

 →メインキャラで唯一の突っ込み役。唐辛子の髪飾りを着けていて、
  ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。


・ブルーハワイ兄貴

 →頭の上にブルーハワイのかき氷が乗った、
  きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。



~エンディング~



ここは、地域の子供からお年寄りまで、


幅広い客層に長く愛されている楽器屋。





ギター部に入部1ヶ月で、早くも退部を決意した男子大学生は、


帰り道に突然、頭にもんじゃ焼きを乗せた小柄な女子に声をかけられ、


やむなくこの楽器屋へと足を運ぶこととなった。





たくさん並べられている楽器達を見るだけで、もう嫌な気分になる男。


しかし、もんじゃ頭の女性は、ギターのコーナーに近付くと、


「ほほぅ~」と、よく分からないが興味深そうに眺めている。





男が「ギターを買うんですか?」と聞くと、


女性は「何か、弾き語りとか出来るようになりたいな~って」と、


全くどの色にも染まっていなさそうな、実に無垢な表情で答えた。


彼女のそんな様子が、何とも羨ましく見えた男。


すると女性は、そんな無垢な表情のまま男に聞いた。





「お兄さんは、音楽好きなんですか?」





不意の質問に対し、答えに詰まる男。


さっきまでいたギター部の連中のことは、当然全く好きになれないが、


正直、今ではギターや音楽自体が嫌いになりそうだった。





「自分は何年も前から、趣味で作詞作曲をやっていて、


いつか自分で作った曲を弾き語りとかできたら良いなと思って、


大学でギター部に入ったんですが…


自分にこの道は向いてなかったですね」





初めて会う女性にも関わらず、気が付いたら本音を漏らしていた男。


そんな言葉に対し、女性の反応は意外なものだった。





「えっ、自分で作詞作曲されてるんですか?」





真ん丸な目を向けて驚く女性から、思わず目を反らしながら、


「まぁ、頭の中で考えてるだけなんですけど…」と言い淀む男。





「こないだ、あるシンガーソングライターの方のライブを観て、


 私も、こんな弾き語りをいつかしてみたいなぁとは思っても、


 さすがに自分で曲を作るのは無理かなーなんて…」と話す女性。


彼女を見て、自分にもこんな純粋な目をしていた頃があったのだろうかと、


これまで音楽の夢を見てきた日々を、男はつい思い返していた。





すると突然、女性は何かを思いついたかのように、こう言った。





「あ、そうだ。





 お兄さんが頭の中で作った曲を、


 私が弾き語りするっていうのはどうですか?」


「へっ?」





ギターを触ったことも無い女性から、いきなりの提案。


作詞作曲を始めて幾数年、初めてかけられた言葉に、


戸惑いを隠せない様子の男。





「いやでも自分、そんな音楽の才能も無いし…」


そうぼやく男に、女性はこう返した。





「私が、お兄さんの才能に初めて気付いた人になるかも」





そう笑顔を見せ、ギターの並ぶコーナーに歩いていく女性。





ギターの種類より、値札の金額ばかり気にしている彼女の姿を、


男はただ、ぼんやりと見つめながら立ち尽くしていた。





~エンディング 終わり~

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