明日には退部届を出そう。
先日の投稿に引き続き、人形劇シナリオの
第5シリーズを以下、記載したいと思います。
本作は、
オープニング
↓
メインキャラ4人のコーナー
↓
エンディング
という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。
今回は、オープニングをお送りしたいと思います。
<人形劇 登場人物>
・もんじゃ姫
→本作の主人公。
頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。
・さばみそ博士
→頭の上にさばの味噌煮が乗った、
語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。
・ハバネロ姉さん
→メインキャラで唯一の突っ込み役。唐辛子の髪飾りを着けていて、
ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。
・ブルーハワイ兄貴
→頭の上にブルーハワイのかき氷が乗った、
きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。
~オープニング~
ギターケースを背負って、部の練習部屋へと向かう男子大学生。
入部して1ヶ月。
すっかり打ち解ける人間と打ち解けない人間が、
この間できれいに分かれたような感じがした。
先輩に愛され、同学年の中で中心層にいる人間と、
その輪に上手く入っていくことが出来ずに、
何となく居場所の無さを感じつつ、毎日の練習に参加する人間。
心を開いて、楽しく会話できる相手が例えいなかったとしても、
集団行動を乱さず、かつ練習も怠ってはならないという、
もうただの修行というか苦行の場と化していたのが、この部だった。
ちょっと不思議な位、彼らへの取っ掛かりが見出せなかった。
同学年の中心層にいる人間達が、あれだけ楽しく笑い合っているのに、
自分が話しかけてみると、驚く程に彼らの反応は冷ややかだった。
投げかけた話題がいけなかったのだろうか、タイミングがまずかったのか。
中にはいくら声をかけても、こちらを向こうとすらしない人間までいた。
彼は、自分に親でも殺されたのだろうか。
1ヶ月も経つと、同じ練習部屋にいても、
彼らの話に入ることはおろか、彼らが盛り上がっている話で、
一緒に自分が笑って良いのかすらも分からなくなっていた。
練習部屋に向かう途中で部員の一人とすれ違い、
「お疲れっス」と声をかけたが、チラッと自分を見たそいつは、
何も返答せずに通り過ぎて行った。
というか、何なら若干こちらを睨んでいた気もする。
練習部屋に着いて、ギターケースからギターを取り出し、
チューニングを始めると、早々に弦の一本がバチンと切れた。
まだ、さほどギターの扱いにも慣れていなかった男にとって、
弦の張り替え方を教えてくれる人の一人や二人いると有難いものの、
そんな心優しい人間がいる場所では無かった。
スマホを開き、ギターの弦の張り替え方を調べ、
出てきたサイトの動画の見よう見まねで、何とか張り替えることが出来た。
その様子を、周囲の人間達は何となくチラチラ見ているようだったが、
誰一人、男に声をかけたりする人間はいなかった。
練習が終わると、誰も聞こえないような声で
「失礼します」と言って、一目散に練習部屋を出た男。
もう居たたまれず、早く外の空気を吸いたかった。
大学に1人も友達がいないまま1ヶ月が経ったが、
部活に入ったら、多少はその状況も好転するかと思っていた。
昔から、自分で作詞作曲をするのが好きだった為、
いつかはギターの弾き語りなどが出来るようになれたらという、
ほのかな夢も抱きつつの入部だったが、その遥か手前の段階で、
もうその夢は早々に潰えてしまうような気がする。
音楽で成功する人間は、あぁいう音楽を志す人の集まりで、
それなりに愛され、関係も作れて、かつ楽器も弾ける人間なのだろう。
あの部活にいる人間、一人一人の顔を思い出すだけで気分が悪い。
何年も作詞作曲を趣味で続けてきた男だったが、
自分にはこの世界は無理かもしれないという気持ちが強まっていた。
気持ちが強まれば強まる程、背中に背負ったギターケースが、
ただの重荷にしか感じられなくなっていった。
「音楽なんて、クソ食らえ」
顧問なのか、部長なのか分からないが、明日には退部届を出そう。
講義以外の時間は、ニコニコ動画とyoutubeを見まくってやる。
そう思って歩いていると突然、「すいませーん」と声をかけられた男。
振り返るとそこには、頭にもんじゃ焼きを乗せた小柄な女子。
こんな可愛い女の子が自発的に話しかけてくれるなんて、
もう今日で人生は終わるのかもしれない。
そんな大げさなことを考えながら「はい」と返すと、
少し恥ずかしそうな表情をしながら、彼女は言った。
「…この近くで、ギターを売ってるお店を教えてくれませんか」
~オープニング 終わり~
その100円玉が、誰かの生きがいになります!