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つまり力は使いよう〜『オッペンハイマー』『Fall out』考察

みなさんこんにちは!
前回の予定ではダンジョン飯第2回をお送りする予定でしたが、ちょいと面白い作品2作に出会ってしまったので今回は予定を変更して映画『オッペンハイマー』とドラマ『Fall out』についてお送りします。

『オッペンハイマー』はクリストファー・ノーラン監督の「原爆の父」と呼ばれる物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた作品です。
一方、『Fall out』は核戦争が起きてから200年後の荒廃したアメリカ大陸を舞台に立場、目的の異なる3人の登場人物の視点で描かれるブラックコメディーです。
どちらも「原子力」が重要な鍵を握ってきます。

カオスで魅せるノーラン作品

『オッペンハイマー』は『Fall out』と比較するとかなりシリアスなタッチで描かれています。私はクリストファー・ノーラン監督作品の中では『バットマンビギンズ』『インターステラー』あたりの作品が好きなのですが『インセプション』『インターステラー』『テネット』あたりのSFチックな作品が好きな方から見ると『オッペンハイマー』は少し異色な作品と捉えた方もいるかもしれません。
私から見ると今回の作品もノーラン監督のリアルさにこだわりながら新しい世界を描く姿勢はビシバシ感じました。
『オッペンハイマー』を鑑賞した時点では、恥ずかしながらロバート・オッペンハイマーという人物についてほとんど知識を持っていませんでした。映画鑑賞後のノーラン作品独特の余韻に浸りながらもうちょいオッペンハイマーという人物を知りたいと思い『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』(藤永茂 著/ちくま学芸文庫)を読んでみるとノーラン風に脚色してある部分もありましたがほとんどの部分が史実に則って描かれていることがわかりました。
それらの史実をオッペンハイマー事件の聴聞会でロバート自らが回想するカラー映像と、事件の首謀者であるストローズが公聴会で回想していくモノクロの映像とで時代を縦横無尽に回想しながら描いていきます。あらかじめロバート・オッペンハイマーという人物についての知識がなければ時代が飛び飛びに、なんなら巻き戻って描かれる今作は混乱する方もいるでしょう。しかしこの縦横無尽な時代の描き方は我々が記憶を辿る様に似ています。一つに記憶について話しているとそれに関係した全く時代の違う話がポンと出てくる。何度もそれを繰り返すうちに話の内容もカオスみが増していく…。
特に今回は一者の目線ではなく二者の目線で描かれるのでカオスみが増す増す…。正直にいうとロバート視点の回想からは神経質で不安げなオッペンハイマー像が浮かび上がるのですが、ストローズ視点の回想からはやや自信過剰で他者への配慮に欠けるオッペンハイマー像が浮かび上がります。同じ人物像であるような感じがしない…。
私の好きな『インターステラー』でも物理学や生物学などの化学的な理論を正確にストーリーの中で描き出しつつも、科学では説明がつかないような「愛じゃよ。愛。」としか言えないような描写が同じ作品の中で表現されることでいろんな方面の情報が一気に押し寄せ、鑑賞後にちょっと呆然としてしまうようなノーラン作品独特の余韻が訪れます。
要するに面白い!!ってことです。笑

皮肉な現世は笑っていくしかない

『Fall out』の原作は1997年に第1作目が発表された同名のゲームです。ドラマはゲーム内の歴史設定に則って作成されており、核シェルター「Vault(ボルト)」の起源を描くストーリーになっています。
主人公の一人ルーシーはVault生まれ、Vault育ち。父は自身が住むVault33(Vaultはナンバリングされていていっぱいあります!)の監督官で皆をまとめる立場にあります。父と、絶賛思春期の弟と共に再び地上に戻り「栄光のアメリカ」を再建する日を目指して清く正しく生きてきました。
Vault内での婚姻は他のVaultの住人と行います。しかも会うまでどんな人かは知らされない!!ひぇ…。ルーシーの結婚式が行われる日にVault32から来たのは同じVaultスーツを着た一団。しかも夫になる人結構イケメン!!…しかし彼らの正体は地上の人間でした。
夜更けに彼らはVault33の住人たちを攻撃しその最中にルーシーの父は一団に誘拐されてしまいます。父を探し、連れ戻すためにルーシーはVaultの外に旅出すのです。
『Fall out』の世界全体が皮肉な笑いに包まれています。
異常なほどに理想的な民主制を採用したVaultの生活は、治安最悪でちょっとキマるお薬を飲んで「ヒャッハーーーー!!」状態の地上の人間の生活を同時に見てしまうと滑稽なほどに優等生気取りです。
そんな異常な環境から、さらに異常な地上という環境に向かったルーシーには全く理解できない出来事しか待ち受けていませんが、一度「訳がわからない!!」と反抗してからの仕方無いので諦めて「よし、やるか!」(ルーシーの決め台詞?)となる時に流れる50年代のヴィンテージポップスとでもいうようなポップな音楽など、設定、セリフ、音楽と多方面から厳しい現状をブラックな笑いに変えていくこの感じ!!さいっっこーーーに好きです。
随所に現代の私たちに馴染みの深い道具やらちょっとセンシティブな内容のスラングなんかも登場して、それらが優等生的なVaultでも荒廃した地上でも使われているところにもふふっと笑ってしまいます。
ウェス・アンダーソン監督作品なんかが好きな方はハマるかも⁉︎

違ったかもしれない未来

この二つの作品の共通点は一見「原子力」かと思いますが、私的に言うと「力は使いよう」というテーマを扱った作品という点だと思います。ここでいう「力」は「欲望」と指します。
『オッペンハイマー』ではロバートやストローズといった欲望のエネルギーが強い人物が登場します。ロバートは自身の能力が十分に振るえる状態を望んでしました。承認欲求と言ってもいいかもしれません。ストローズはロバートとは少し感じが違いますが靴の行商人という立場から国のトップへのしあがりたい!!という承認欲求があったように思います。どちらの人物もその欲求の波に乗り「原爆の父」「アメリカ原子力委員委員長」まで上り詰めます。
ロバートにとって「原爆の父」という名前は誇らしいものではなかったように思います。しかし作中で描かれていたロスアラモス時代のロバートは研究のみにとどまらず、ロスアラモス内での様々なトラブルの解決、軍部との交渉などまでいきいきとした目をしてこなしていたように見えました。ストローズも作中で描かれる公聴会は彼を商務大臣に任命することを是とするかを問う公聴会であることから、順調に国のトップへ登り詰めようとしていたことが伺えます。結果的に商務長官代理に任命されたところで彼の昇進は止まったようです。あの手この手を使って周到に根回ししながらのしあがった彼のやり口はあまり褒められたものではないかもしれませんが彼の欲望を満たすための行動力たるや見習いたいくらいだ!!と思ってしまいました。
二人とも自分の欲求を満たすために最大限の行動力を発揮できる人間です。
その行動力を持ってすればもしかしたら大量破壊兵器の開発者でも一介の政治家でもない違うゴールがあったかもしれません。
『Fall out』では核の低温融合が可能になる指先ほどのチップ?がストーリーの鍵を握ります。様々な登場人物がそれぞれの目的でチップを狙います。
あるものは生活のエネルギー源として、あるものは軍事的利用目的で、あるものは世界を秘密裏に支配する目的で…。
元々は核戦争前の世界で将来枯渇する化石エネルギーに変わるエネルギー源として開発されたものです。結果的には戦争の道具として利用されますがこの戦争もまた商業的な理由から引き起こされたものであり、対核戦争の要所であるはずのVaultもまた戦争を引き起こす鍵を握る企業が商業的な理由で開発していたり…と要は人間の欲が渦巻きすぎて絡み合った強大なエネルギーが回り回って自分達を殺しちゃう方向に働いてしまった感じです。
本当に生活用のエネルギー源として使われていたなら全く違うとは言わないまでも少しだけ事態は好転していたかもしれません。

力は使いよう

ロバートやストローズのような異才は全ての人にはないかもしれません。低温核融合のような夢の強大なエネルギーも現状実現していません。しかしロバートもストローズ一人の人間であり、エネルギーの開発を行うのも人間です。この世界の人間である限り皆「欲望」を持っているはずです。
誰もが同じ「力の素」を日々利用しているのです。
私はまだまだこの力の使い方が未熟でよく暴走しがちです。
先日も「動き出したい」という欲求を満たそうとするものの、自分の中にある「人に認められたい」とか「自分がやりたいことだけしたい」というちょいと厄介な欲求と絡み合いすぎてクッキー100個作って人にばら撒いてみたり、無駄に仕事で完璧主義になったりと「そこじゃない!」状態になっていました。
人に指摘されたり、今回取り上げた二作品や『勝手にふるえてろ』(綿谷りさ著)や『愛がなんだ』(角田光代著)のような主人公が空回りしまくる作品を思い出すことで「ここじゃなかったわ〜」と立て直すことができました。
多分私の中の無駄なプライドのせいで人からの指摘だけだったら今も気づけていなかったかもしれません。
フィクション作品というフィルターを通して自分の状態をメタに、他人事のように見ることは核戦争を防ぐという崇高な目的にも、日々の生活をなんとかやり抜いていくことにも適しているのかも!と感じました。

今回なんか真面目でしたね!笑
次回はもう少し肩の力がいい感じに抜けたお話ができればな、と思います。
ではでは、また次回お会いしましょう!


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