小説 「あの丘の上の楽園で会おう」 第一章*ペナンのジャングルを逃げ惑った美しい若き日の母
第一章 「ペナンのジャングルを逃げ惑った美しい若き日の母」
目を覚ますと、まだ日の出前だった。いつものように賑やかな鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。もうすぐ日が昇るという知らせだった。
夏子はキッチンで湯を沸かし、熱いコーヒーを淹れた。マグカップを持って、リビングを通り過ぎ、バルコニーのいつもの椅子に腰掛けた。目の前の大木が夏子を静かに見下ろしている。
大都会の真ん中の丘の上に建っているこの古いコンドミニアムには、一年半前に引っ越して来た。都会にも関わらず緑が多いこと、木