次男の英単語帳と歯みがき粉
最近、高校2年生になった次男に、ちょっとした変化が起きた。
付箋がたくさん貼られた英単語帳を持ち歩き、ブツブツ英単語を唱えている。会話しているときも、英単語の話になる。
ゴールデンウィーク中にテニスの試合があり、「あまり結果が良くなかった」と話す彼。わたしは「まぁ、2年だから結果もだけど、試合の経過も大切なんじゃない」と伝えた。
すると彼は「結果、なんだっけ『コン⋯』なんだっけ」と言いながら英単語帳をパラパラめくる。"conclusion"という単語を見つけてスッキリした顔をする彼に、「"re"から始まる単語もあるよ。そっちのほうが、今の文脈に合っているかも」と伝えた。
"result"と"conclusion"、まったく違う意味なんだけどな……。英単語帳の日本語訳では、意味の違いがピンと来ないらしい。講釈したい気持ちを、グッと抑える。
そもそも、昨今の共通試験の傾向を見れば、英単語帳で「英語↔︎日本語」を覚えるなんて非効率極まりない。本気でやるなら、とにかく「毎日、英文を読んで文脈を取る訓練をせよ」「文脈を取るため、もしくは意見を伝えるために必要な英単語だけ調べ、覚えよ」と伝えたい。でも、そんな意見もグッと飲み込む。
最近、「人は自分で気づいたことしか、やれない」と身に沁みている。
先日、彼とランチしに出かけたときのこと。彼はあいかわらず、車中でも、食事を待っているときも、英単語帳を開いていた。食事を終えて、車を停めている場所まで歩きながら、彼はぼそりと呟いた。
「自分でやろうと思ったことは継続できる、ってわかった。人からやれって言われたことは、すぐダメになるけど。」
「えー、私、『英単語、覚えなさい』とか言ったことないやん!」
しかし、彼が言うには、英検を受験するときに「とりあえず英単語を覚えときゃいい」と、私に言われたらしい。しかも、効率的な英単語の覚えかたを、こんこんと言って聞かせたんだとか。「最初は言われたとおりにやってたけど、続かなかった」と彼は言う。
そういえば彼、いつの間にか「歯みがき粉」も使うようになっていたな。
小さいころから、「味がきらいだ」と言って、歯みがき粉を使うのを断固拒否していた。中学生になって、「そろそろ歯みがき粉を…」と思ったが、どんなに量を少なくしても、歯医者さんに説得してもらってもダメ。定期検診で虫歯が見つかったら考えよう、とこちらのほうが根負けしていた。
ところが先日、私の歯みがき粉の減りが早いことに気がついた。次男、いつの間にか、歯みがき粉を使うようになっていたのだ。「あんなに嫌がっていたのに、何がきっかけ?」と聞いても「わからない」とのつれない返事。
「わからせよう」と思ってどんなに頑張っても、効果なし。わからせることを諦めたときに、いつの間にか、わかってくれている。とくに次男は頑固者なので、そんなエピソードは数え切れない。
先を生きる者として、ときに言わなきゃいけないことはある。でも、それは1回にしよう、と決めている。人生には限りがあって、彼は彼の人生を生きているんだから、「誰のどんなアドバイスを採用するか」しかも、「いつ、採用するか」は、本人が決めることだよなぁ、と思うから。
部活のない2日間の休日、パジャマのままで、欧州サッカーの試合を観つづける次男。あたたかく見守ろうと決めた、G.W.最終日の朝でした。
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