「生きづらさはどこから」ショートショート

わたしはツイッターで、メンタルヘルスに関連する情報を投稿している。

うつ病など精神疾患にかかると途端に生きづらくなる。

脳のエネルギーが枯渇して、働きたいのに心と身体が言うことを聞かなくなる。そういうれっきとした病気なのだ。

なのに周りからは「甘ったれるな」「気合いが足りないだけだ」などと言われて怠け者扱いされる。こうして家族、友人、そして社会からも孤立していく。

そんな自身のうつ病になった経験から、同じ境遇に苦しむ人に向けて少しでも役に立ちたいという思いでツイッターでの情報発信をはじめた。

そんなある日のこと。こういうツイートを投稿した。

GoToキャンペーンでお得に行けることだし、旅行に挑戦してみるのも悪くないと思います！
旅先でしんどくならないコツとして
・疲れる前にこまめに休憩を取る
・高くても指定席を。体力の消耗が抑えられるし、必ず座れることで安心感が違います。
ぜひやってみてください！

ある程度、規則正しい生活が送れるくらいに回復したら、この機会に外出に挑戦してみるのも全然ありだと思う。

さっそくリプライがきた。

「しんどいのに旅行なんていけるわけがないでしょう？？」

「うつ病アカウントでしょう？なんで元気なツイートするんですか」

自分としては本心で言ったつもりだけど、ちょっとまずかったかな…？ フォロワーさんを不快にさせてしまったことは申し訳ない。

もう少し、今しんどい人にも寄り添った内容にしよう。

ほんの10分くらいだけでも、散歩は効果的ですよ。でもうつにいいことだからって「○○しなきゃ」と自分を追い込む必要はありません。
今日も一日、ぼちぼち、ゆるっと過ごしましょう😄

ツイートポチッ

・・・

「年金も不支給で傷病手当金も満了で、もう他に頼る術がありません。"ゆるっと"なんて、できるわけがないでしょう。ふざけないでください」

うーん…病状も人それぞれだし、いろんな受け取り方があるから、なかなか言葉選びは難しい。

どうしたら見る人を嫌な気にさせないツイートができるだろう…？

おはようございます☀ 今日も一日よろしくお願いします！

これなら当たり障りなく、嫌な気分にはならないだろう。うん。投稿ポチッと。


・・・

「朝起きたくても起きられずに苦しんでいる人への配慮が欠けていると思います」

「夜は不安感に襲われて眠れず、ようやく寝付けたかと思えば夕方になってて、また夜を迎える…あなたはそんな経験ないでしょう？たかだか病歴1年で、いったい何がわかるんですか」

わたしはツイッターを辞めた。

※この物語はフィクションです。