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「傷病ベーシックインカム」国民の声 ~ショートショート

20XX年、日本にもベーシックインカム制度が導入された。日本にも、とあるのは、既に先進国ではかなり普及が進んでいるからだ。

対象は全国民ではなく、怪我や病気で働けなくなった人に限られることになった。
医師の診断書を提出さえすれば、特に審査もなく誰でも国からお金を貰うことができる。

期間の定めはなく、復職もしくは再就職が決まるまで、毎月生活保護と同程度の保障が受けられる。

制度の導入にあたり「一生働かないニートを量産することになり、日本の労働力人口が地の底まで下がる」と猛反発があったが、世界と足並みを揃える形で強行で法案が可決された。

ベーシックインカムで半永久的に臨時収入が得られる人が出てくることについて、国民はいったいどう考えているのだろう。今回2人に話を聞くことにした。


1人目は、現在ベーシックインカムを利用しているというAさん。


――ベーシックインカム受給の経緯は

「はい。私はうつ病と診断されてから、休職や退職を繰り返してきました。お金の不安から、焦って仕事復帰して、また体調を崩して休む…の繰り返しでした。現在は無職です。

このベーシックインカムでは、次の仕事が決まるまでずっと貰えるということで、じっくり腰を据えて自分のタイミングで再就職活動ができるので、これはありがたいなぁということで受給することにしました」

――失業給付や傷病手当金等の制度もあるが

「失業給付は、前の会社を半年で辞めていて雇用保険を納めていないので貰えませんでした。傷病手当金は過去の発症で満期まで貰ったし、同じ病気では2回目以降貰うことができません」

――「もうこのまま働かなくていいや」とは思わなかったか

「最初はそう思いましたよ(笑)。 でも不思議なことに、ずーっと休み飽きたってくらい休んでると『そろそろ働きたいな』って思えてくるようになるんですよ。2年くらい療養という名のニート状態でしたが、主治医からも大丈夫でしょうとOKをもらって、仕事探しを始めました。結局やっぱり人間って、働いて社会に貢献したくなる生き物なんですよね 」

――最後に、今回のベーシックインカム制度についての感想をお聞かせください

「いやほんとにありがたいの一言ですよ、ニートが増えて国力が減るなんて言う人もいますけど…。昔令和の時代に働き方改革なんていわれましたけど、全然変わってないどころか3大疾病に正式に精神疾患が増えて4大疾病になったくらいですから。ベーシックインカムでしっかり保障して、焦って休職退職何度も繰り返す人の数が減少したら、結果的に全体的な日本の生産性というか労働力は、上がると私は思います」


続いて2人目は、ベーシックインカム反対派のBさんに話を伺った。


――今回の制度導入についてどう思うか

「いやもうなんでベーシックインカムなんてふざけたことやるんですか。意味わかんない。生活保護でもそうだったのに、余計税金でメシ食うだけの奴ばっかりになるよ。真面目に汗水垂らして働いてるのがアホみたい」

――率直なご意見ですね

「忖度ばっかりのテレビのコメンテーターとはわけが違うんだよ。俺らみたいな下っぱのサラリーマンが結局は一番強いんだ」

――もしBさんが万一働けない状況になっても、ベーシックインカムには頼らず生きていくのか

「いや、そりゃ欲しいよ(笑) 前澤さんのお年玉企画何年連続応募してると思ってるんだ」

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