野原小麦

もうずっと妖怪が好きです。 好きのきもちをもてあましてしまったとき、わたしは詩を書きは…

野原小麦

もうずっと妖怪が好きです。 好きのきもちをもてあましてしまったとき、わたしは詩を書きはじめます。 境港妖怪検定「上級」合格しました。 つぶやきびと

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    思い出に生きる「思い出の民」、刹那刹那を生きる「せつなびと」。彼らは同じ世界に共存している。

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かなしみロボット

忘れられないワタシのことを ヒトはみな笑うのです どうして忘れられないのだろう ロボットだからさと ハカセは言います ロボットは永遠ではありません ボロになります しかも わりとすぐ ボロになります 人より早く ボロになります それなのに 忘れることだけできないのです 記憶を消してもらうことならできます 記憶は見えなくなりました 良かったなと ハカセは言います デモネ ハカセの記憶から 消えただけなのです まだ ここに ワタシの記憶はあるのです

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      一年が早い

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          すきを押せずに そっと とじる 見つけてしまった 何気ない 無断転載 そんなのなくても すごく すきなのに

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          うきうきの小道

          あの日 うきうきで歩いた 本屋へ続く小道 これから買う本を 取り替えっこして読んでみようね そんなことを わたし しゃべっていたっけ きみがすでに 別れを決めていたなんて はらをきめるタイミングが ふたり ずれてた

          うきうきの小道

          捨てなきゃいけないほどの

          思い出なんて ないじゃない

          捨てなきゃいけないほどの

          Kのつくカフェ

          ただのコーラなのに なぜかここで飲むコーラはうまいんだよな どうしてだろう グラスのせいかな 場所のせい? BGMの影響かしら 磁場? 霊的なものかな マスターがなにか入れてるんじゃないの? 居合わせた客たちと冗談をいいあう コーヒーやコーラで カフェインを摂取しているはずなのに なんだか眠くてたまらない 気づくとみんな眠っていた ジャズの流れる店内 洗い物の音が響いている カウンターの向こう側で マスターが顔を上げた 氷に秘密があるんですよ 気を

          Kのつくカフェ

          布団 12

           両目をあけたまま、じゃぶじゃぶと顔をすすいだ。  すすぐべきものは他にもある。  泡だらけのこたつ布団。  放って置くわけにはいかない。  ここは由里さんの部屋だ。  私と橘の勝手な洗濯で、いつまでも浴室を占領しておくことはできない。  もちろん、勝手なのは橘であって、私ではない。  だけど、そんなことは関係ないのだ。  布団を濡らし、浴室で大騒ぎしているのは私ひとり。  誰がどう見ても犯人は私。  しかも、このみっともない姿。  ズボンの裾を、右足は脛の途中、左

          布団 11

           鏡の前に立ち、しっかりと正面から自分を見た。  額の汗で眉毛がぐっしょり濡れている。  睫毛も濡れて、充血した白目は真っ赤。  霞んでいるのは私の目だった。  汗が目に流れ込んでいるのだ。  そのことに気づくと、途端に目が痛くなってくる。  汗が目にしみる。  だけど、自分自身の凄まじい顔面から目を離すことができない。  鼻の頭、唇の上。ぷつぷつとした汗の玉がびっしりと並んでいる。  なんて酷い顔をしているのだ。  見られたくない。  誰かに見られる前に、顔を洗お

          布団 10

           浴槽と便器の間に小さな洗面台がある。  そこにある鏡を見上げると、意外なことに鏡面は曇っていなかった。  優秀な曇り止め鏡。  私が映っている。  虚ろな瞳で私を見つめる私。  だらしなく口で呼吸する顔は醜く、情けない。  自分自身を気の毒に思った。  とりあえず一息ついたらどうですか。  心の中で、いたわりの言葉をかける。  よろよろと、私は浴槽から這い出した。 (つづく) 「布団」は「金魚」「ティーソーダ」「ハムスター」のつづきのおはなしです。

          布団 9

           洗えてはいると思う。  どこもかしこも泡だらけなのだから。  洗剤は、よく泡立っている。  綿の隙間にまで行き渡っているはず。  問題は、すすぎなのだ。  水をかけ、足で踏み、しぼり出す。  裏返し、また水をかけ、しぼり出す。  くり返しているのだけれど、しぼり出される水が澄んでくる様子は一向にない。  この作業をはじめてから、どれだけ時間が経過したのか。  お湯は一切使用していない。  それなのに、浴室の空気が白く霞んでいる。  まるで入浴中みたい。  私の

          布団 8

           左足で布団をしっかりと押さえる。  この左足を軸に体を支え、右足をピッと右に伸ばす。  伸ばした右足で、軸足の方に布団をたぐりよせ、そのままチャッ、チャッ、と二回踏み込む。  最後にその右足を、グイ、と右にずらして、布団の水分をしぼり出す。  チャッ、チャッ、グイ。  チャッ、チャッ、グイ。  立つ位置を変えて、また。  チャッ、チャッ、グイ。  チャッ、チャッ、グイ。  裏返して、水をかけ。  チャッ、チャッ、グイ。  チャッ、チャッ、グイ。 (つづく) 「

          布団 7

           洗濯機が洗濯を拒否したからといって、水に濡れ、粉洗剤にまみれたこたつ布団をそのままにしておくわけにはいかない。  しかし、すでに洗濯から興味を失ってしまった橘に、これ以上の協力を求めることは不可能だった。  いや、橘に協力を求めるというのは間違っている。  そもそも、こたつ布団を洗おうといいだしたのは橘なのだ。  私の方が橘に協力していたはずなのに。  ユニットバスの浴槽で、私は、ひとり。  泡にまみれている。 (つづく) 「布団」は「金魚」「ティーソーダ」「ハムス

          布団 6

           こたつ布団が洗濯機に収まった時点で、こういった事態を予測すべきだった。  洗濯槽は、こたつ布団で、いっぱいだった。  他のものが入り込む隙間なんてなかった。  その上に粉洗剤をふりかけ、ふたをし、スイッチを入れたのだ。  自動で注ぎ込まれる水は、ほとんどすべてが外へあふれ出し、まわりだした洗濯機は、ものすごい轟音を立てて、右へ左へ、ずり動き、のたうちまわり、熱くなったアイロンみたいなニオイをさせながら、最後にひとつ、がったん、と大きく頷いて、停止した。 「ダメだね」

          布団 5

          「ダメだね」  諦めるのかと思ったら、そうではなかった。  途方に暮れる私をわきによけ、橘は両腕を布団の上から洗濯槽の中へ、ぐいっと突っ込んだ。  こたつ布団は洗濯槽の中へ、無理やり、ずぼっと押し込まれる。 「これで、よし」  誇らしげな背中を私に見せつけながら、橘は両腕を引き抜こうとした。  洗濯機がつられて、ぐわっと、手前に持ち上がる。  私は慌てて橘の下に潜り込んだ。  持ち上がる洗濯機を両手で押し戻し、立て直してやる。  橘は、もう一度「よし」といって、両腕

          布団 4

           手洗い、可。  洗濯機、不可。  そういった意味合いの表示だ。 「洗濯機はダメみたいだよ」  そんな私の忠告を無視して、橘は、すでに洗濯機に向かっている。  一度やってみないことには、気がすまないのだろう。  しばし付き合うことにした。  こたつ布団をできるだけ小さく折りたたんだ。  たたんで、たたんで、たたんで。  三回までがやっと。  三回たたむと八分の一の広さになる。  だけど、厚さは八倍。  その厚さ八倍のこたつ布団を橘と二人で押さえ込むようにして抱え上