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万景峰号は、どう説明されたか

北朝鮮帰国事業は、1959~1984年にかけて行われた。在日朝鮮・韓国人を中心に計約9万3千人が北朝鮮に渡った。朝鮮大学校生約200人も集団帰国している。

事業の当初から、北朝鮮は地上の楽園ではないとの声もあったが、これだけ長く続いた。

その後、1992年に万景峰92号が就航する。

この船がどういうものだったのか、「北朝鮮の真実 ー万景峰92号 北朝鮮家族訪問記」(きむやんそん著、アマゾンKindle版)に書かれている。

著者は、万景峰号に乗って親族を訪問するが、説明会が1996年4月に大阪にある総連本部の建物の一室で開かれたという。

参加したのは100人余りだった。

「全長126メーター、全幅20.5メーター、総トン数9672トンの巨大船で、エンジンは最新のディーゼルエンジンを2基備え、馬力は1万5千6百、最新装備のこれほどの大型船は、世界広しといえどもこの船しかない」

かなり自慢の船だったようだ。

しかし、筆者たちが5月3日に乗り込んだ万景峰92号の船室は「一つの船室に10人、2段ベッドが5つ左右に配置されている」という超過密だった。

乗客たちが「大体、こんな3等船室に押し込めて、17万8千円やなんて高すぎるわ。それくらいあったら、飛行機でヨーロッパ往復し、一流ホテルに5日くらい泊まれるわ」と話すシーンがある。
ただ、みなはしゃいでいる。「それぞれが孤独な異国生活で、きつい生活を送っているからでもある」

万景峰号の中では、自分の出自を隠さなくていいという気楽さや安心感があったのだろう。

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