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韓国とベトナムの接近は、皮肉にも北朝鮮をさらに閉鎖的にする

6月末に尹錫悦大統領がベトナムを訪問した。

この両国の関係を考える時、韓国のベトナム戦争参戦を抜いて考える訳にはいかない。韓国軍はベトナムで虐殺を行ったとされる。韓国兵が、現地の女性との間に子どもを産み、現地に残してきた問題もある。

しかし、現在韓国は名実共にベトナム経済パートナーとなっている。さらに、北朝鮮への対応を考える上でも、ベトナムとの関係は重要だ。報道の中に出てきた数字を整理してまとめておく。

韓国貿易協会(KOTRA)によると、両国の貿易規模は修交以来175倍、相互投資は145倍増えた。貿易は昨年基準で807億ドル、相互投資は25億ドルで急増した。

ベトナムは貿易相手国の3位に

韓国にとってベトナムは中国、米国に続く3位の貿易国になった。

昨年韓国が最も多い貿易黒字を出した国はベトナムだった。金額では342億5000万ドルになる。同期間、米国(280億ドル)・インド(100億ドル)・中国(12億ドル)などを大きく上回った。

ベトナムが韓国の最大貿易黒字国に上がったのは1992年、韓国とベトナムが修交して以来初めてだ。

YTNより

韓国はベトナムの4大貿易国であり、最大の海外直接投資先となった。サムスン電子をはじめとする数多くの韓国企業がベトナムに工場を建て、多くの雇用を創出した。

ベトナムが存在感を増しているのは、米国と中国の貿易摩擦が激しくなり、中国内の生産施設をベトナムに移すグローバル企業が増えていることが影響している。

特にコロナ発生以後、中国で生産支障を受けた企業の脱中国の動きがスピードを増している。米アップルは昨年中国にあったiPad生産ラインの一部をベトナムに移した。

投資しやすい環境

ベトナム政府の外国人投資誘致のための努力も、注目すべき点だ。法人税減免、デジタルインフラ拡充、主要国との自由貿易協定(FTA)拡大などだ。

現在ベトナム進出韓国企業だけで9000を超える。「累積外国人直接投資(FDI)」1位も韓国だ。

KOTRAによると、2021年基準でベトナム国内総生産(GDP)の40%以上、輸出額の70%以上を外国人投資企業が占めた。政治・社会的に安定した環境と若い世代の比重が高いダイナミックな雰囲気もベトナムの強みだ。

政府は昨年末、自由・平和・繁栄を3大ビジョンとして提示した「インド・太平洋戦略」を公式化した。

文在寅政府の「新南方政策」に比べて広い範囲で経済・安保的協力を強化する内容を盛り込んだ。

爆発的に拡大する人的交流

韓国、ベトナム間の相互訪問者は2400倍に増えたと尹錫悦大統領が言及している。

韓国への観光客の中でベトナム人のカード使用額が最も多い、結婚移民でもベトナム人が増えている。韓流ドラマを好むのもベトナムだ。

韓国に滞在するベトナム人は23万人余りで外国人のうち24万人の中国の次に多い。韓国に定着した脱北民3万人余りと比べると、ほぼ10倍近く大きい規模になる。ベトナムに滞在する韓国人も100万人を超える。

一方北朝鮮との関係も重要になっている。

韓国とベトナムが修交30周年を迎えた中で、ベトナムの改革開放を通じた飛躍的な発展により、北朝鮮との経済格差が9~15倍以上広がった。

韓国式復興の道選んだベトナム

世界銀行によると、ベトナムは韓国と国交を持った1992年の1人当たり国民総生産(GDP)は、139ドルで、当時北朝鮮の4分の1に過ぎなかった。

しかし、昨年は3千700ドルに達し、1千ドルと推定される北朝鮮よりもむしろ4倍多く、逆転した。

全体のGDP規模で見てもベトナムは昨年3千620億ドルで、韓国銀行が昨年推定した北朝鮮の実質GDP233億ドルと比較して15倍の格差がある。

米国中央情報局(CIA)と世界銀行などが確認できないとし、数年目のウェブサイトに掲載する400億ドルと比較しても9倍の格差がある。

韓国は戦争で廃墟となったが、その危機から抜け出して台湾と共に1950年代以降、経済発展の最大の成功事例となったため、ベトナムが見本にしている。

過去ベトナムと戦争を行い、長く敵対国だった米国は、韓国より3年遅れた1995年にベトナムと公式修交した。

ベトナムは米国との国交回復を踏まえ、アジア太平洋経済協力体(APEC)への加入を後押しした。

以後貿易協定締結を通じて関税障壁をなくし、2006年には世界貿易機関(WTO)に加入し、世界最速の経済成長国となった。

北朝鮮はベトナムを模範としない

北朝鮮労働党39号室の高位管理出身で、ワシントンで北朝鮮経済専門家として活動する李ジョンホ氏は、VOAに対し、韓国に対する平壌の恐怖が外部から考えるよりもはるかに多いと指摘した。

「韓国と経済協力が進み、支援が入ってくると(住民が)韓国社会に憧れるようになりますが、これを北朝鮮は最も恐れています。実は金正日総書記時代も、韓国の商品を全てブロックしていました。今でもブロックしています。金正恩総書記は今後も市場の開放には応じないと思います」と語った。

米国、韓国と積極的に交流し、経済発展を実現したベトナムの現状は、北朝鮮をさらに閉鎖的にさせるということだろう。

参考 YTN 韓国日報、VOA

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