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金正恩総書記リバウンドで噂される「病名」

昨年ネットメディアに書いた原稿です。

昨年、20キロ程度のダイエットに成功し、ほっそりした姿になった北朝鮮の最高指導者、金正恩総書記にリバウンドが起きたようだ。韓国の一部メディアが報道し、韓国の情報機関である国家情報院もこれを認め、国会に報告した。

正恩氏は最近、各種会合で長時間の演説をこなしており、「健康に大きな問題はない」(国家情報院)ということだが、問題は彼の年齢だ。正恩氏はすでに38歳。40歳を過ぎ、中年に差しかかれば、糖尿病や心臓疾患の危険性も出てくる。

祖父や父も晩年に、こういった病気を抱えていた。北朝鮮は、厳しい統制が社会の隅々に行き届いており、政権は一応安定している。総書記の健康が「最大の不安定要素」となりそうだ。

正恩氏は昨年6月の公開活動で、突然やせた姿で現れた。いつも着ていた人民服がだぶだぶに見えるほどだった。国家情報院は昨年10月、正恩氏の体重が140キロから20キロ程度減ったと明らかにしていた。

北朝鮮では、国営テレビが痩せた正恩氏を心配する住民にインタビューし、放送した。正恩氏の健康問題が、テレビで取り上げられるのは異例のことだった。住民の間に、指導者の健康に対する憶測が広がらないようにという配慮だったよ
うだ。

顔が3%大きくなった


どんなダイエットの方法を取ったにせよ、減った体重を維持するには食事療法と適度な運動が欠かせないが、正恩氏はできなかったようだ。韓国のテレビ局SBSが、専門家に依頼して、昨年6月と今年8月における正恩氏の顔を分析したところ、顔の大きさが3%ほど大きくなっていたという。

 北朝鮮は9月以降、弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。今年だけでも20回以上
となる。いずれも短距離のものだが、そのタイミングから、各国は神経質になっている。
 米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」を中核とする空母打撃群と韓国海軍が合同
海上演習を行っていたうえ、ハリス米副大統領が韓国を訪れていたからだ。

絶対に核は放棄しない


 さらに見逃せないのは正恩氏が、核兵器に対する姿勢を変えたことだ。ここ数年間、核開発の目的は自主国防だと主張していたが、最近正恩氏は「北朝鮮は自由に核兵器を使用する権利がある」と主張しはじめた。

 その新方針は、9月8日の最高人民会議(国会に相当)で正式決定されている。正恩氏は「絶対に核を放棄しない」と強調し、この場で「核武力に関する法令」が採択された。

米国と韓国が、北朝鮮への核攻撃や指導部への攻撃を計画しているなどと判断した場合、いつでも核兵器の使用が可能になる。

 ここに来て北朝鮮が攻撃的になっている理由について、一部では、米韓に最大限の圧力をかけて交渉を開始し、有利な条件を引き出す狙いだとの分析も出ている。交渉前に、ハードルを目いっぱい上げておきたいのかもしれない。

国の難局でストレスか


 一方、北朝鮮では天候不順などの影響で食糧不足が続いており、新型コロナウイルスの流行が加わって、一部で餓死者が出ているとも伝えられる。正恩氏は、難局に直面し、相当なストレスを感じ、暴飲暴食を始めている可能性もある。それが、最近の挑発的なミサイル発射につながっているのかもしれない。

 近く7回目の核実験も踏み切るだろうとの観測がしきりだ。時期は10月中旬に開かれる中国共産党大会が終わった後だ。
 韓国の情報機関、国家情報院も同じ見方だ。北朝鮮が核実験をするタイミングとして、中国共産党大会終了後から、11月8日の米中間選挙までの可能性が高いとの予想を立てている。衛星写真からの情報で、核実験場の準備も終わっているという。

 韓国の世論も、北朝鮮現状に悲観している。ソウル大学統一平和研究院が9月に公開した「2022統一意識調査」によると、北朝鮮の核放棄は不可能だと回答をした人は92・5%で、2007年関連調査を始めて以来最も高かった。国民10人のうち9人以上が北朝鮮の非核化に懐疑的に考えている。北朝鮮が武力挑発を行ってくるとの回答も、昨年の56・3%から今年は60・9%に上昇した。

韓国では核武装容認論が台頭


 懸念されるのは、韓国の核武装に対する賛成意見も急増していることだ。北朝鮮がいつでも核を使うという姿勢なら、こちらも核武装すべきだという意見だろう。ソウル大の同じ調査では55・5%が肯定し、過去最高水準となった。

 北朝鮮の友好国・中国は、10月16日からの共産党大会で習近平国家主席の任期延長を決める見通しだ。異例の3期目に入り、ますます拡張主義的な姿勢を強めるだろう。
 中国は本来、北朝鮮の核実験やミサイル実験には否定的だ。中朝国境地帯に住む中国人の生活に悪影響を与えるからだ。その一方で、北朝鮮が挑発行為に出れば、米国は力をそちらに向けざるを得なくなり、中国は台湾をにらんで動きやすくなる。

 北朝鮮の核使用の法制化とミサイル実験は、南北朝鮮間の軍備競争も刺激するはずだ。
北朝鮮に警戒心を示す韓国の尹錫悦政権は、ミサイル能力、精密打撃能力などを大幅に引き上げることを計画している。来年度の韓国国防予算は、前年比4・6%増の約57兆ウォン(約5兆8700億円)に膨らんだ。そのうち5兆ウォンは、北朝鮮の核ミサイルの脅威に対応するためのものだ。

 それでなくとも、韓国の尹政権のスキャンダル続きで支持率が低迷している。支持率アップを狙い、北朝鮮の挑発に過剰な対応をしないか不安になる。

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