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ガンジーの[本当]の実像 ガンジーの実像 (文庫クセジュ) 単行本 – 2002/12/1 ロベール ドリエージュ (著)

ガンジーと聞けば、あの丸眼鏡、裸に近い姿が思い浮かぶ。インド独立の父。それ以上知っている人はほとんどいないのではないか。

本書には、確かに高潔な哲人、ガンジーの生身の姿が描かれてはいる。と、書いたのは理由がある。

高潔とはとても思えない、極端な性格も容赦なく書かれているからだ。子供時代に彼の偉人伝を読んだ人にとって、この本の内容は驚きの連続に違いない。

ガンジーは禁欲主義者であり、しばしば断食を政治的抵抗の手段として使った。禁欲主義者になったのは、もともと自分が信じるヒンドゥー教の教えに従ったものだが、実は自分の父親が亡くなった時に、ガンジー自身が女性とセックスしていていたことを後悔したためだという。

結婚はしたが、ある時点で妻との性交渉を一方的にやめてしまう。すごい禁欲。ところが、ところがである。

自分が寝る時には若い女性を自分の脇に寝かせて、体を温めさせていた。足も揉ませていた。

これではインドの毛沢東だ。

激しい禁欲を強いられていた弟子たちも、これにはショックを受け、ガンジーを嘲笑した(154P)

セックスはしないといっても、こんなことしていいのか。

非暴力(アヒンサー)が彼のモットーだが、宗主国の英国がインド国内で兵を募集した時には、信じがたい発言をしていた。


ガンジーは、各地を回り、イギリス軍に加わるように説いて回った。この時、彼は最も驚くべき演説をした。〃憶病者と見なされたくなかったら、武器をできるだけ上手に扱わなければならない“。この驚べき言葉を非難した友人に〃暴力を放棄するのには、まず暴力を経験してみなければならない"と珍妙な返答をした。(本書より)


もちろん後には非暴力を貫くけれど、彼の姿勢は矛盾していた。

インド内部の大きな葛藤は、増え続けるイスラム教徒とヒンドゥー教徒の摩擦が原因だが、ガンジーはあまり家庭を顧みなかった。
不幸せで、アル中で、借金を抱えた息子ハリラルは、ボンベイのイスラム寺院にてイスラム教徒に改宗した。
(本書より)

そもそも、自分の家族の中の葛藤を解決できなかったようだ。

不屈の哲人のメッキは少し剥がして、中を見た方がよさそうだ。

頑固な面もあった。手で紡いだ糸にこだわり、工業的に生産された糸からつくられた服を着ようとしなかったという。(本書より)

頑固、固陋な面が生かされ、インドの独立を勝ち取ったのは間違いないが、彼の人間的な面も知るべきだと思った。

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