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アイってなんだ? ~IADL(手段的日常生活動作)のはなし



先のお風呂のフタの話を書いていたときに気づき、本文に無理くり伏線を入れておいたのだ。自分の備忘を兼ねて。

ADLに対してのIADLの違いについて、である。
この言葉、介護系の座学話ではよく出てくるのよね。

このように、お風呂のフタは本当に侮れない。なので、現地調査の際には、身体動作確認だけでなく、生活動作の確認も必要である、といつも心してかかるようにしているのであった。

たぶんこれがADL(日常生活動作)だけでなくIADL(インスツルメンタルADL:手段的日常生活動作)もね、というやつですね。

こう書いた

さりとて、知ったような風に書いたはいいが、IADL(Instrumental Activities of Daily Living)ってわかりにくくありません?そもそも、まず老眼には半角の「I」の字が読みにくいのだ(noteが使っているゴシックフォントの弱点でもあるが)。
ええ、内容は漠然とは理解しているんですけどね。そのお風呂の話で内容は合っているという自信はある。立つ、座る、みたいな身体の動作そのものでなく、生活の一場面全体を通しての動作、みたいな意味だ。

なお基本的知識としてADL(前にBasicを入れて、BADLと呼ぶこともあるんですね)の定義はこちらを参照していただきたく。

介護関連の学習に立ち入るとき、必ず出てくる概念にICF(国際生活機能分類:International Classification of Functioning, Disability and Health、2001)というものがある。
これは一言でいうと、人々の生きることの全体像を表すための表記ルール、言い換えると共通言語である。

いきなりこう言うと漠然としているのでよく分からない。当然である。それにはそれ以前の概念を見て、比較する必要がある。

以前は、障害者の身体能力を表すルールとして、ICIDH(国際障害分類: International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps、1980)が存在した。その分類が障害者の身体動作や社会的な不利など、いわば障害により出来ないことに限定されていたICIDHに対して、ICFはそれに留まらず、その人の残存機能と、周辺の環境や個人差も含めた結果としての出来ることに注目している
なのでICFは障害者に限定して使われる概念ではなく、人それぞれの、健康を中心とした生活全体の記述ルールとして活用される方向となった。ユニバーサルデザインの概念と近しいものがありますね。


勘のいい人はお気づきであろう。

これ、その視界が広くなるところがADLとIADLの関係に似ているのだ。なので、本来はIADLにも思い切って違う略語を当てるべきだったというのが自分の意見である。
ICFだって、ICFDHと略せたところ、DHをバッサリ斬って別概念というところを強調したのだから。

ただ、それに習ってIAとでも略そうかと思ったら、Instrumental Activities~になる。これ、googleさんに直訳させてみると

「楽器活動」

と仰る。これでは意味がバンド結成に向かってしまう。Instrumental、またしても手強い英単語である。ならば、この単語を掘って、またしてもスッキリな理解に近づいてみようと思うのだ。


そもそも、我々の世代がインストゥルメンタル、と言われたら最初に思いつくのはボーカルなしの曲のことではないだろうか。インストとか略されがちであるが、器楽である。

このサンプルが適切なのかはわかりませんが、こういうの。
布袋さん、アメリカでこの曲を演奏したら自分の曲だって信じてもらえなかったらしく、自分の中で好感度が爆上がりました。

また英語学習を真面目にした方なら、ああ楽器ね。くらいの認識になるだろうか。

遊んでいないで、とりあえず名詞形から掘ってみましょうかね。

instrument【名詞】

1,道具、器具、機器、計器◆可算
2,楽器
3,手段
4,法律文書
5,〔法律文書としての〕証券、(約束)手形
6,証書◆契約書など法律的効果を伴う文書
7,《言語学》〔格文法の〕道具格

英辞郎 on the WEB https://eow.alc.co.jp/search?q=instrument

なんとなく、わかるようなわからないような。音楽を奏でる手段として楽器と訳されていることくらいはわかる。なにかその先の目的に対して、そのステップ、手段として存在するナニカ、という意味合いなのだろうね。法律文書や証書類もそう捉えられるし。

さらにラテン語まで遡る。

語源解説

「中に(in-)組み立て(struo)たこと(-mentum)、複雑な道具」がこの単語のコアの語源。

古期フランス語 instrument(道具)⇒ ラテン語 instrumentum(道具)⇒ ラテン語 instruo(組み立てる)+-mentum(行為の結果)⇒ ラテン語 in-(~の中に)+struo(組み立てる)⇒ 印欧祖語 sterh-(広げる)が語源。

英語 construct(建設する)と同じ語源をもつ。

語源英和辞典 https://gogen-ejd.info/instrument/#google_vignette

なるほど。
struoが組み立てる、の意。接頭詞inがついて中に組み立て、そこに過去の接尾詞がついている。中に組み立てたこと、転じて複雑な道具。
結構簡単じゃないことをやっている感じがありますね。建設する、コンストラクトと同じ語源となるのも面白い。

日本語でこの単語の意味をきっちりと捉えられないことで、モヤモヤする感じがつきまとうのは致し方ないが(でなければ明治時代のように相応しい新しい日本語の単語を開発する必要がある)、
生活全般の複雑な物事を組み立てるための動作、というこの言葉のニュアンスは自分なりには腑に落ちた。落ちたことにしよう。

とりあえず、介護系に必須の言葉についての自分の興味に沿った記録を残すことで、せっかくなら皆様のお役にたてばと思って書き記してみるのだった。

・・・ことし後期の授業で、学生に説明するときもココのリンクを貼ればいいや、という下心もあってのことですが。

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