垣渕 洋一

精神科医です。専門は依存症。臨床はアルコール依存症がメインで、啓発活動も行っています。…

垣渕 洋一

精神科医です。専門は依存症。臨床はアルコール依存症がメインで、啓発活動も行っています。著書、『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』がAmazonでベストセラーとなっています。 Twitter : @yoichi_med

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに

情報発信を始めた経緯 いつの間にか医師歴が30年を超えるようになり、後輩の指導や社会に向けて啓発する仕事が増えています。講義や講演のスライドを沢山作ってきましたが、せっかく作ったのに、1回講義をしてお蔵入りになっているのは勿体ないものです。  また、患者さんや家族に質問された際、言葉で伝えるより、ネットで公開されている資料を見てもらった方が良いことがあります。その場で、検索しても、すぐには出て来ず、もどかしい思いをすることがあるので、リンク集や私が作った資料をネットで公開して

    • 【読書メモ】発達障害の人が見ている世界

       【読書メモ】発達障害大全は支援者(家族を含む)にとっては必携と言える参考書ですが、当事者が自己理解のために最初に読む1冊としてはボリュームが多すぎて、消化不良になるのではと思います。  なので、最初の1冊は、「ASDとADHDの両方に触れていて、薄く、当事者の視点で書かれていて、イラストが豊富なのがいいな~」と考えて、探して見つけたのが本書です。  研究による差はありますが、ASDとADHDは併存率は、30~60%にものぼるという結果が出ています。学会で発達障害の診断に関

      • 【読書メモ】発達障害大全

         黒坂真由子さん(編集者・ライター)が、2年間かけて、精神科医や神経発達症の当事者などにインタビューした内容をもとに執筆した大作です。  2023年12月に出版され、2024年3月には第5刷が出るなど売れています。さっき、散歩がてら近所の書店に行ったら、入口入ってすぐの平台に積んでありました。  執筆のきっかけは、「2017年、小学校2年生だった息子が、文字の読み書きが苦手な学習障害であることがわかった」だそうです。   私は、精神科医として、発達障害の当事者や家族の支援

        • 【読書メモ】『お金のむこうに人がいる』

           本書は、医療経済について考える時のモヤモヤに対して、それを解消するヒントを与えてくれました。  日本の医療費が年々増加しています。  厚労省によると「令和4年度の概算医療費は46.0兆円、対前年同期比で4.0%の増加、対令和元年度比で5.5%の増加。なお、対令和元年度比の5.5%の増加は3年分の伸び率であり、1年当たりに換算すると1.8%の増加」とのこと。  それに伴い、年金と合わせ、社会保障費が国の財政や家計を圧迫しているという報道や識者の意見も多くなされいます。  財

        • 固定された記事

        マガジン

        • 読書メモ
          16本
        • 精神科研修
          4本
        • 活動記録
          11本
        • 研究報告メモ
          2本
        • 「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本
          7本
        • コラム
          1本

        記事

          取材記事 お酒との「正しい付き合い方」 NewsPicks

           NewsPicksから取材を受けた記事が5月2日、公開されました。 【保存版】パフォーマンスを上げる「健康ルーティン」85選 という特集で、「各分野で活躍する7人の医師」の1人として取材を受けました。  事前に質問を受け取って、要点を回答して返信しました。拙著(『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』)も読んでもらってからオンラインで取材を受けたので、要点を抑えた良記事となっています。  運動、睡眠、栄養、ディスプレイ作業による眼精疲労の解消など、自分にとって

          取材記事 お酒との「正しい付き合い方」 NewsPicks

          日本の内科診療所における危険な飲酒、アルコール依存症疑いの有病率に関する論文

          伴 信太郎. アルコール関連障害に関するプライマリ・ケア多施設協同研究. 日本医事新報. (通号 3945) 1999.12.04,p.37~43.   この研究は、18の診療所、1388人の外来患者さんから得たAUDITの結果を用いて危険な飲酒、アルコール依存症疑いの有病割合を調査したものです。  その結果、22%(95%信頼区間:20%–24%)の方が危険な飲酒をしているか、アルコール依存症が疑われることが明らかになりました。  また、AUDITスコアが上がるにつれ、飲

          日本の内科診療所における危険な飲酒、アルコール依存症疑いの有病率に関する論文

          取材記事:酒の飲み過ぎで「全臓器が炎症を起こす」可能性!健康診断で注視すべき数字の見方を解説

           オーシャンズというサイトで取材された酒害に関する啓発記事が公開されました。  コロナ禍で落ち込んだ外飲み需要も回復し、街中の飲み屋さんもにぎわっている中、「飲みすぎを気にする読者も多い」と取材を受けた記事が公開されました。  飲みすぎると、肝障害をきたすことは広く知られていますが、障害を起こす機序は意外に知られていません。γGTPの値を気にして、上がったら節酒・禁酒し、下がったらホッとして酒量を増やす人もいますが、これも危険な飲み方です。  近年、海外では、政府が健康を維持

          取材記事:酒の飲み過ぎで「全臓器が炎症を起こす」可能性!健康診断で注視すべき数字の見方を解説

          第7回関東甲信越アルコール関連問題学会

           2024年3月3日(日)、第7回関東甲信越アルコール関連問題学会・八王子大会に参加しました。  私は朝一番のシンポジウム1「各都県からの現状報告とトピックス」にシンポジストとして登壇するのに始まり、成増厚生病院のスタッフが教育講演やシンポジストとして登壇することもあり、さらに、プログラム終了後、理事会もあって大忙しの1日でした。   事務局の発表によると参加者は182名。会場の広さと参加人数のバランスが良く、賑わい感がありました。  当学会は、日本アルコール関連問題学会の

          第7回関東甲信越アルコール関連問題学会

          【読書メモ】依存症・トラウマ・発達障害・うつ 「眠り」とのただならぬ関係

           日々の臨床の中で、睡眠薬を処方しない日は1日もないぐらい、精神障害と「眠り」の問題は深く関わっています。  入院の前日まで、あるいは当日の朝まで飲酒していた人は、アルコールが鎮静作用の強い薬物なので、入院して断酒すると、脳が「重石がとれた状態」となって興奮してしまい、不眠がほぼ100%出現します。  入院診察時に、「お酒切ったら、眠れなくなるのが一番心配です。飲んだら直ちに倒れ込むように眠れる薬を出してください」などと話してこられる方がたくさんいます。  入院後も不眠が続く

          【読書メモ】依存症・トラウマ・発達障害・うつ 「眠り」とのただならぬ関係

          【読書メモ】酒好き医師が教える最高の飲み方

           2017年11月に出版された本書が日経BPから文庫化されました。  著者の葉石かおりさんがアルコールに関わる様々な領域の医師に取材し、エビデンスに基づいて書いた本です。  私は以下の記事の取材を受けました。  ・第3章 飲んで病気にならないためのルール   <顔が赤くなる人、ならない人は何が違う>  ・第7章 絶対NG! 危険な飲み方  <恐ろしいアルコール依存症の末路>  葉石さんの「酒ジャーナリスト、エッセイスト 一般般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事

          【読書メモ】酒好き医師が教える最高の飲み方

          【読書メモ】最後の一杯: 依存症を克服した医師の手記

           日本では、アルコール依存症の治療薬は、長らく抗酒剤だけでしたが、2013年にアカンプロサート、2019年にナルメフェンが治療薬として使えるようなったという進歩がありました。  しかし、臨床の現場では、本気で断酒しようとしても失敗を重ねてしまう人に対し、「次の一手をどうするか?」について本人も家族も治療者も、とても悩むことが少なくありません。  アルコール依存症の治療は、薬物療法にしても認知行動療法にしても、有効性が伸びる余地が大きく、より良い方法を模索する毎日です。  な

          【読書メモ】最後の一杯: 依存症を克服した医師の手記

          第6回関東甲信越アルコール関連問題学会に参加

           日本アルコール関連問題学会には各地域に地方会があり、当学会は、その1つです。   2022年12月4日(日)、筑波大学で行われた第6回学術総会に参加しました。  参加者はオンラインですが、登壇者は、選ぶことができるので、私は現地に行き、教育講演(B会場の最初のプログラム)を行いました。内容は「これまでアルコール関連問題に関心はあったが学会に参加するまではいかなかった方々(医師、看護師、保健師など医療保健福祉関係者)が聞いて、「明日から仕事で使ってみよう」と思えるような講演

          第6回関東甲信越アルコール関連問題学会に参加

          【読書メモ】_おとなの自閉スペクトラム

           Twitterで紹介されていてピンとくるものがあり購入&読了しました。11月1日に出版された出来立てホヤホヤの本です。  依存症者は、定型発達者であっても、背景に信頼障害があるため、出会った頃は強烈な不信感を向けられるのが普通です。その壁を乗り越えるのに、年単位、時には10年単位の時間がかかることもあり、しんどい想いをすることもままあります。  しかし、一度、壁を乗り越えてしまえば、強い治療的な愛着関係が形成され、支援者としての甲斐を感じる機会も多いのです。壁を超えるために

          【読書メモ】_おとなの自閉スペクトラム

          【読書メモ】_依存症者の家族にお勧めしたい本

           依存症の治療に専門性のある医療機関では、必ずと言っていいぐらい、家族教室や家族ミーティング(スタッフが司会をして、家族同士が体験をわかちあう集まり)が行われます。当センターでもコロナ禍になる前は、毎週金曜午後に行っていて、毎回、20名近い方が参加していました。コロナ禍になってからは頻度は減ったもののオンラインで続けています。  必須とも言える理由があります。私が家族教室で使っているスライドを使って解説します。  家族依存症が進行すると、家族、特に同居している家族は悶々とし

          【読書メモ】_依存症者の家族にお勧めしたい本

          【読書メモ】_CBT(認知行動療法)の基礎を学ぶ書

           最近、指導医として後輩にCBTについて教える機会があったのを機に、CBTを学ぶのに良い本を整理しておこうと思い、読書メモを公開します。  エビデンスのある精神療法といえばCBTをおいて他にはなく、依存症臨床にも応用されています。  アルコール依存症の場合、大量飲酒していた期間の記憶が乏しかったり、断酒開始期はアルコールの影響で脳が元来の性能を発揮できないので、認知面のアプローチは効果を上げにくく、行動面からのアプローチがメインとなります。  ここで問題となるのは、「断酒っ

          【読書メモ】_CBT(認知行動療法)の基礎を学ぶ書

          断酒会の全国大会に参加しました

           10月16日(日)断酒会の第59回全国大会@奈良県天理市に参加しました。全断連(全日本断酒連盟)が主催する全国大会です。  北海道から沖縄まで全国から集まった仲間達と会える年に一度の大事な機会ですが、コロナ禍で2年、中止となりました。その間、オンラインで会う機会はあったとしても、やはり対面で会って受けるパワーにはかないません。  我が家から会場まで5時間近くかかるのでので、奈良市内に前泊したかったのですが、満室のため、京都市内のホテルに泊まり、当日朝、近鉄で天理駅を目指しま

          断酒会の全国大会に参加しました