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映画「生きろ 島田叡 -戦中最後の沖縄県知事-」

太平洋戦争末期の1945年1月末。米軍の空襲ですでに那覇は壊滅的、行政も機能していなかった沖縄に知事として赴任した島田叡。敗戦までの期間、1人でも県民を守るため壕を移動しながら尽力し消息を絶った彼の足跡を辿るドキュメント。

島田さんの存在は以前沖縄平和祈念公園を訪れた際に知りましたが、具体的に何をどうした人か深くは知りませんでした。映画で見れてよかった。佐古さんありがとうございます。玉砕を美とする風潮の中、生き残ることを軍や県民に言い続けたってのは戦時下の軍国では難しいことだったはず。島田さんの映像が残っていない中、数多くの証言が集まったことも彼の民主的な態度、行い、人柄によるものなのでしょう。

県民のために疎開を進めたり、食料を確保したり、壕に逃したりと数々の施策も生な証言で聞けて良かったですが、元沖縄県知事の大田昌秀さん(2017年逝去)が語っていた部分がとても大切な一節に感じた「島田さんが戦時下で遂行出来た事と出来なかった事がある、それを分析して見直すべきだ」と。この一節は現代の感染症や災害時におけるリーダー論・縦割り・地方自治にも通ずる問題。島田さんを悲劇の英雄として扱うだけじゃなく、9万4000の民間人が犠牲になってしまった事実論を交えて映画化したのは優れた視点だった。佐古さんが報道畑の方だからこそかもしれないですね。

貴重な証言をしてくれた沖縄戦経験者や家族や元知事たちは当然ご高齢。大田さんはじめすでに亡くなられた方も多いんです。ある意味ギリギリ間に合ったドキュメンタリーと言える。沖縄戦だけじゃなく、戦時を過ごした方が減ってしまうのは平和の証でもあるけど語り継ぐことの必要性を感じます。この作品は語り部として機能する貴重なフィルム。TBSさん制作だし、毎年6月23日にTV放送するのはどうじゃろう。なぜ6月23日なのか。そこから日本人に思い返してもらうためにも。


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