2022年5月25日

首相経験者に与えられる特権のほとんどをゲルハルト・シュレーダー氏が剥奪された。ロシアのウクライナ侵略にもかかわらず西側にも問題があったなどと述べ、盟友プーチン大統領に対し距離を置かなかったためだ。これまで公費で賄われてきた事務所とその職員、公用車などを利用できなくなった。SPの警護は引き続きつくが、暗殺されるリスクがあることを考慮すればこれは必要な措置だろう。

愛想をつかしたシュレーダー事務所の職員4人は全員、すでに3月の時点で彼の下を去っていた。60年近く所属する社会民主党(SPD)の中からも除名要求が出ている。

20日になって露国営石油大手ロスネフチの監査役会長から退くことが明らかにされたが、これは国内外の強い圧力を受けてのことだろう。欧州議会はシュレーダー氏を制裁リストに載せるよう欧州委員会に要請している。

シュレーダー氏は首相として大きな功績を挙げた。ドイツの経済力を復活させた構造改革「アゲンダ2010」は最大の成果だ。前任者たちが実現できなかった極めて難しいプロジェクトであり、フランスなど他の国の政治家も同様の措置を実現できていない。

シュレーダー氏はしかし、改革の返り血を浴びた。SPDの重要な支持基盤である社会的弱者に改革のしわ寄せが出たためだ。2005年の選挙で敗れ政界を去った。SPDにとっては長期低迷の時代が始まった。シュレーダー改革の恩恵を最も強く受けたのは後任のメルケル氏である。前任者のつゆ払いなくして彼女の長期安定政権はなかったであろう。
こうした経緯を見てきたことから、今回の件でのシュレーダー氏の対応を残念に思う。頭脳が硬直し、認識を修正できなくなっているのだろうか。

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