Audibleを本格的に聴き始めてから3ヶ月が経った。 ある程度多くの作品を聴いて(きちんと聴き終えたものは20作品ほどになった)特に面白かったものやおすすめしたいもの、反対にAudibleではなく紙の本が向いているなと感じたものがある。今回は記録も兼ね、ここまで聴いてきた作品をリストアップしレビューを添えてみる。核心的なネタバレは避ける。 SF個人的にAudibleに最も相性が良いと感じるフィクションのジャンルがSFだ。媒体に左右されず文字情報そのものに魅力が宿る作品が
安アパートに住んでいたときの話。 共用ポストに入るチラシの処理、かなり面倒臭い。興味のないフードデリバリーのプロモーション、絶対ここの住人に縁はないだろうという煌びやかな新築マンションの案内、どうせぼったくりな水道業者のマグネット。入れてくれるな。 一応管理会社の好意でそのスペースには共用のゴミ箱も設置してくれているので、郵便受けを開けるたび不要な中身をそちらへポイポイ移す作業をすればいいだけなのだが、それすらしたくない。 ある日たまらなくなって「チラシを入れないでくだ
(サムネイル:Light Phone Ⅲ 公式サイト」 みなさんはダムフォンをご存知だろうか。 物心ついた頃から身の回りにはネットワークが溢れ、中高生の頃にはスマートフォンに浸れるようになった私たちの世代(90年代〜00年代生まれ)。最近はSNSや動画共有サイトが無数に氾濫し、日々の可処分時間は手元の小さなスクリーンに吸われ続けている。 そんな状況の中で、欧米の若者世代を中心にデジタルデトックスを奨励する価値観が盛り上がりつつあるようだ。周囲の生活に目を向け、数多のイン
MBTI。みんな好きですよね。 友人同士の会話も同年代の同僚との世間話もマッチングアプリのプロフィール欄も、どこもかしこもMBTIの表明。「あー私HTMLだからそういうとこあるかもー」「あの子の彼氏絶対IAEAだよ」「君は話してる感じPTSDっぽい気がする」「はじめまして。22歳学生、ADSLです!」わけわからんぞ。 私はというと、自分の性格をズバッと言い当てられることに対して特にメリットを感じない(普段から自分の思想や性格については考え言語化をしているので、アルファベッ
とある日曜日。 私たちは新宿のカフェで落ち合うことになっていた。助走をつけるようにじわりと暑さの増す初夏の気候にあてられ、今日は絶対に冷たいお茶を飲もうと喉の形を準備して列車を降りる。友人から事前に面子は揃っている旨、連絡が届いたのでむしろのんびりと歩きながら地図アプリと睨めっこし遅れて店の前に到着。扉を開けると冷房の冷たさに混じってタバコの匂いが漂う、昔ながらの"喫茶店"という雰囲気が頬を撫でる。見るとひとつのテーブルに友人と、初めて会う女性とが談笑をして待っていた。
Audibleにて読了。 映画『オデッセイ』の原作『火星の人』でおなじみアンディ・ウィアーによるSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。とにかく愛とユーモアと好奇心にあふれた最高の作品だった。 作品の構造上、何も言えない(主人公が出くわしていく数々の発見を読者も同じタイミングでなぞった方が面白い)ので、とにかく読もう。これは先日読んで宇宙最強のSFとして個人的に殿堂入りした『三体』シリーズにも並ぶ面白さ。むしろSF初心者は本作の方がとっつきやすく、ストーリー自体も楽し
世の中には「それをしていること自体が快感だ」と言い切るかのごとく鬼のように何かを継続する、いわば「変態」がどの分野にもいる。 私が過去に携わってきたコミュニティで言えば、ギターを弾くことそのものが楽しいから発表機会のあるなしに関係なく毎日練習している奴、とか、アイデアを形にしないと気が済まないから毎日3DCGとUnity触ってる奴、とか、とにかく日常のツイートをしまくって累計15万件近くの投稿数がある奴、とか。 彼らは明らかに何もしていない私に比べてその技量が凄まじく高い
「映画を早送りで観るのはいかがなものか」という論争がある。 私は小さな頃から映像作家志望で、もちろん作品鑑賞は大きな趣味でありカルチャー丸ごと含めて映画が好きなので、ファスト映画問題が取り沙汰される2021年ころ以前よりこのトピックには関心があった。 2022年に出版されベストセラーとなった新書『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(稲田豊史著・光文社新書)も当時拝読し、改めてこの問題が抱えるキャッチーな時代性とディベータブルな話題
とある初夏の休日。友人を誘って漫画家・伊藤潤二氏の原画展『誘惑』に行ってきた。 場所は京王線芦花公園駅から徒歩で向かえる世田谷文学館。落ち着いた住宅エリアの中にある地域の文化施設という佇まいでとても居心地の良い立地だった。 館内はかなりの人でにぎわっており皆楽しそう。海外からのお客さんが半分という印象で、デカデカと富江の描かれたTシャツを着こなす「ガチ」ファンであろう欧米の方が微笑ましい。 想像以上に若いファンも多い。てっきり日本からの客は男性漫画ファンばかりだと思って
友人が鬱病を発症した。彼はいつも飄々として生意気で、我が道をゆくというような雰囲気だったから意外だなと思った。しかし鬱は「やまい」だ。本人の意思とか心持ちでどうにかなることはなく、来てしまったら来てしまうということなんだろう。 仕事をひと段落させある程度落ち着いて、そろそろ再起を図ろうという頃の友人からメッセージが届いた。「近所の寺で坐禅体験をやっていて興味があるんだけど、いかないか」と。どうやら古今東西の精神ケアを試したいらしく、その一環とのことだった。私は元来の宗教学的
私の人生を変えた本のひとつに社会哲学者エーリッヒ・フロムの思想書『愛するということ』がある。かいつまんで要約すると自立した人間同士の愛は習得可能な技術であり能動的であるとしている。愛は与えられる瞬間ではなく、与えている瞬間こそが幸福なのだと。 確かにそうだと思った。誰かを大切に思う瞬間は自分の心も穏やかで、どこか牧歌的な幸福に満ちていると思った。次に人を愛するときは、愛するという覚悟を持って、能動的に愛を与えることで自分の幸福度を上げるのだと決心した。 しかし実際にその機
Googleマップを散策していたら、面白いものを見つけた。 「MCJスタジオ」。千葉県市川市、東西線の原木中山駅近くにある音楽スタジオらしい。ここは住宅地の真ん中だが、スタジオなどあっただろうか。 調べてみるとどうやら旧統一教会関連の施設だそう。 駅から徒歩で行ける範囲だったので実際に行ってみた。 原木中山周辺は古くからの工業地帯とベッドタウン需要による住宅街が混在した独特の雰囲気がある。チェーン店等は駅前を中心にいくつかあり、総武線方面へゆけばより大規模な路面店も増
最近、耳で朗読を聴くAudibleにハマっている。 目で文字を追うのと違って全く疲れず、散歩中や家事中の耳のお供にぴったり。聴き放題契約に含まれるタイトルもなかなか幅広く、気になっていた本を片っ端から聴いていく生活を送っている。 そんな中、愛聴しているWebラジオ『ニュース!オモコロウォッチ』にてパーソナリティ・原宿さんが先日配信開始されたNetflixドラマ版『三体』について言及していた。かなり面白いらしいが「ドラマが途中で終わったので原作の続きがどこからなのかわからな
私は時折機会のある有償での創作系の取り組みを除けば、簡単な内容の事務系管理業務をリモートワークでこなし収入としている。雇用形態は契約社員で、給与は大卒初任給程度にボーナス無し、勤めてからもうすぐ3年目に入る。 正直、もう毎日出勤して働ける気がしないし仕事内容もこのままでよい。周りを見渡せば(といってもSNSのフォロワーが数十人程度の私の周りにはサンプルとなる同年代の母数が少ないが)どうやら平均的な正社員というのはもう少しお金を貰っているようである。 給与がいくらかを友人と
本日、LINEにこんな通知が届いた。 LINEのメッセージや動画はもちろん自前のファイルも合わせて1GBまで保存できる無料のクラウドストレージサービス「LINE Keep」が終了してしまうようだ。サーバー代とかを考えると致し方ないのだろう。 リリース当初は使用機会がなかったが、とあるケースにおいてこの機能が便利なことに気づいてからまぁまぁ使うようになった。それは「Macから音声ファイルをLINEで送信する」用途だ。 Mac版LINEでは左下のクリップマークからファイルの
シンガーソングライターで歌い手、こはならむの新曲『ひとりじゃないんだ』がかなりいい。曲は元ボカロPのGuiano氏。 静かなピアノと感情的な歌声のこはならむらしいサウンドで幕を開けたかと思いきや、重なっていく爽やかなブレイクビーツは最近K-POPを中心によく耳にする90年代リバイバルっぽい風味。続くBメロ以降はEDM調にアレンジされており、明確なサビが存在せずシンセリフだけのドロップへなだれ込んでいく大胆な構成だ(曲の最後でようやく「ららら」とシンセのリフを歌がなぞる)。