見出し画像

【ニュース】家族手当、誰のため?「未婚で家族養っている人は対象外」とされた福岡市の女性団体職員の不満…の見方


諸手当の新設や改廃のご相談をお受けする際、まず取り組まなければならないのは「何のため? 誰のため?」にそれを行いたいのかについて、担当者様と必要な議論を繰り返すことです。

既存の顧問先様は、検討段階からご相談頂く事が多いのでスムーズに議論を進めることができますし、日常的に頂戴している労務諸問題の根底にある原因の解消や、従業員満足の向上手段の構成要素の1つとして、必要に応じて、こちらから顧問先様にご提案させて頂く事もございます。

一方、新規先様から、「●●という手当を、●●という基準と支給額で新設したいので条文化して欲しい」と、既に決定された内容を、綻びやリスクのない規則条文に文言化することだけをご期待されてご依頼頂く事があります。
この場合でも、制度新設の趣旨や目的、解決すべき課題の定義が本当に正しいのか等から、十分な議論をお願いさせて頂く事にしております。

家族手当、誰のため? 「未婚で家族養っている人は対象外」とされた福岡市の女性団体職員の不満

YAHOOニュース 2024/5/9配信 西日本新聞


上記は本日付の記事ですが、この問題は家族手当改定時の議論が不十分であった事に起因していることが伺えます。

記事による支給基準が直接違法であるとまでは言えないとしても、2020年度のルール改定時に何らかの使用者側の目的があったのは確実で、その目的が果たして家族手当の支給基準の変更をもって対処すべきであったのかは甚だ疑問です。

2018年6月29日付の働き方解決関連法案可決成立により、同一労働同一賃金を目的とした2020年4月1日にパートタイム・有期雇用労働法(中小企業は2021年4月1日)、改正労働者派遣法が施行され、雇用流動化に向けて国が動き出した最中、夫婦共働きによるダブルインカムが主(約7割)となった背景を踏まえて、家族手当を縮小・廃止しようとする動きだったのであれば、時代の潮流に合ったものではあります。

但し、従業員満足を企業の成長に繋げるというサービス・プロフィット・チェーンの考え方を前提にしても、特定の労働者に強い不満を生む事は十分に想定できたにも関わらず、従業員の理解を得ずに荒唐な賃金制度改定を断行したことは失敗と言わざるをえず、当時の目的を実現するための効果的な手段は他にあったはずですし、家族手当だけにメスを入れなければならないとしても記事に記載されたような合理性に乏しい基準変更は通常行いません。

法的に有効か無効かは問題の本質ではなくて、せっかく手当を支給しているにも関わらず、それによって特定の労働者のモチベーションを下げるべくして下げてしまっているところにあります。

家族手当を制度改定した目的は定かではありませんが、仮に給与の性質について生活保障的な性格を弱めて、職務や成果型に移行したい場合でも、複数の諸手当を複合的に組み替える方法もあれば、支給基準側ではなくて、人事評価基準や目標管理制度側といった査定側を調整する方法もあります。

賃金や評価制度とは全く違うところに解決の糸口が見つかる事もあります。

「段取り八割、仕事二分」と言われますが、人事諸制度の改革でも考え方は同じで、インパクトに乏しい地味な下作業こそが真骨頂あり、そこを手抜きせずに様々な可能性に考えを巡らせながら手段を吟味し、下地を充実させた上に成り立つ手段を決定することが、最終的な仕事の出来栄えに繋がるものと考えます。

ドキュメント化というのは終盤の工程であり、前工程が充実していれば基本的にそんなに難しい仕事ではありません。

三浦 裕樹/MIURA,Yūki

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?