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心を守り強くする哲学

ローマ五賢帝 マルクス・アウレーリウス

ストア派哲学が久々に読みたくなり、「自省録」を読み直しました。
マルクス・アウレーリウスは、ローマ皇帝で五賢帝の一人。「自省録」は、自分宛てに書き続けた短い散文をまとめた本です。2,100年前のローマ皇帝の素直な心を綴ったものが800円で読めるというのは、とても贅沢です。
マルクス・アウレーリウスは名門の家に生まれ、病弱であったものの、幼少のころからきわめて優れた資質を持ち、生来、誠実、真摯で、時の皇帝ハードリアーヌスも「最も真実なる者」と呼ばれ可愛がられたそうです。
平和を楽しむこと久しかったローマ帝国は、マルクス・アウレーリウスの時代になって多事多難なところに差しかかりました。即位早々、ゲルマン人たちの攪乱、戦争、地震等。子供も亡くし、平和主義でありながら戦争もし、国を治めたマルクス・アウレーリウスが何を考えていたか。
背景を考えながら読むとまた感慨深い本です。

ストア派哲学

マルクス・アウレーリウスの思想はストア派哲学。
ストア派は、紀元前三世紀前半にゼノンがアテネで興した哲学の一派。
人生の試練を切る抜けるのに必要な耐力を与えてくれる哲学。
わたしも日々の生活の中で、取り入れることも多く、助けられています。
特にこの哲学が威力を発揮するのが戦場や過酷な境地だとも言われています。「ストイック」の語源にもなっていますが、とても学びのある考え方です。

「自省録」の言葉

何よりもまず気を散らさぬこと。緊張しすぎぬこと、自由であること。人間として、市民として、死すべき存在として物事を見よ。そして君が心を傾けるべきもっとも手近な座右の銘のうちに、次の二つのものを用意するがよい。一つは、事物は魂に触れることなく外側に静かに立っており、わずらわしいのはただ内心の主観からくるものにすぎないということ。もう一つは、すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろうということ。そしてすでにどれだけ多くの変化を君自身見届けたことか、日々これに思いをひそめよ。
宇宙即変化。人生即主観。

「自省録」第四巻

このセンテンスは、ストア派、マルクス・アウレーリウスの思想を表しています。宇宙や世の中は変化する。自分も変化する。自分の変化とは生まれ、生きて、死ぬこと。自然を受けいること。そして、人生は主観であり、悩みの原因は、ただ主観であるということ。自分のコントロールできるものとできないものを切り分け、自分のコントロールできるものを理性でコントロールする。

君の全生涯を心に思い浮かべて気持ちをかき乱すな。どんな苦労が、どれほどの苦労が待っていることだろう、と心の中で推測するな。それよりも一つ一つ現在起こってくる事柄に際して自己に問うてみよ。「このことのなにが耐え難く忍び難いのか」と。まったくそれを告白するのを君は恥じるだろう。次に思い起こすがよい。君の重荷となるのは未来でもなく、過去でもなく、常に現在であることを。しかしこれもそれだけ切り離して考えてみれば小さなことになってしまう。またこれっぱかしのことに対応することができないような場合には、自分の心を大いに責めてやれば結局なんでもないことになってしまうものである。

「自省録」第八巻

マルクス・アウレーリウスが皇帝に即位したのは40歳のとき。
多くのものを背負いながら、書き留めた、今の私の同年代の言葉。
心がとても引き締まります。

ストア派哲学をどう取り入れるか

セネカやエピクテトス、マルクス・アウレーリウスの言葉は共感できる内容も多く、心の拠り所としています。ただ、それは生きるうえで自分の心を守るためという側面が大きいのかなとも思います。
ストア派の哲学を読むときは、少し孤独感を感じますが、時代背景と究極の境地に立たされた時に威力を発揮する哲学だからかもしれません。
自分が戦禍で生き抜くために、奴隷(エピクテトス)として生き抜くために心を守り強くなるために必要だった究極の境地の哲学。

このような哲学を通して今の時代をみると、大変な時代と言われますが、やはり幸せな時代だと思います。
それでも、情報が溢れ、変化が早く、予見性のない今の時代。心を守りたいとき、強くしたいとき、繰り返し読みたい本です。


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