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自宅サロン開業の為の準備と注意点

自宅サロンを開業するために必要な準備について解説します。整体院やエステ、アロマサロンなどを自宅で開業したい方は参考にしてください。

自宅サロンを開業するために「最低限必要なもの」、「できれば用意した方が良いもの」、逆に「これは置かない方が良いもの」の3つについて順に説明していきます。


自宅サロン経営のメリットとデメリット

整体院やサロンを独立開業するには、大きく分けて「出張整体をする(請け負いを含む)」「自宅の一室で開業する」「テナントや物件を契約して開業する」の3つがあります。
まずは「自宅の一室で開業する自宅サロン」について、大きくどんなメリットとデメリットがあるか、押さえておきましょう。

◆自宅サロンのメリット

整体院の独立開業にあたり、自宅サロンを選ぶ一番のメリットは「開業のハードルが低い」ことです。その理由は初期投資の少なさです。
一からテナントを探して契約すると、数十万円から数百万円の費用が掛かります。その費用に加えて物件探しの時間と労力もばかにはなりません。さらに開業してからの毎月の家賃負担。そして地味に負担となる通勤時間と交通費。
自宅サロンであればこれらの負担が”ゼロ”ですみます。これは本当に大きなメリットでしょう。さらにその気になれば今日、明日にでも開業できる身軽さもまた魅力です。
このように自宅サロンでは「開業のハードルが低い」ことが最大のメリットです。

◆自宅サロンのデメリット

開業ハードルの低い自宅サロンですが、デメリットもあります。その最大の課題は「プライベートとの切り分け」でしょう。
お金をもらって施術する以上、散らかったリビングで・・・というのは印象が悪く、リピート率が低下します。よほど有名ゴッドハンドであれば多少環境が悪くても許されるかもしれませんが、普通はNGです。ちゃんとしたそれなりの施術空間を自宅の中に確保しなくてはなりません。

さらに難しいのは、お客さんとの距離感です。自宅サロンに通うようになった「常連さん」とは、ともすれば友達の家に来るような感覚になりやすいものです。気楽に通ってもらえるという良い面もありますが、「友達みたいなものだから」と時間延長のサービスとか、施術が終わってもずっと帰ってくれないとか、そういう「なあなあの関係」に陥りやすいのも自宅サロンの宿命です。
プライベートを切り分け、「親しき中にも礼儀あり」を守るのは意外に難しい面もあります。

自宅サロン開業に最低限必要なもの

オリジナルカルテは是非用意したいもののひとつ

以上のようなメリットとデメリットを理解したうえで、実際に自宅サロンを開業するときに必要なもの揃えていきます。施術に必要な道具や設備、例えばベッドや専用器具などは当然必要なものとしてここでは省略しますが、それ以外にも「これは大事」というポイントがいくつかあります。

清潔なお手洗い

トイレはこまめに掃除をしてください。できればお客さんがくる直前に都度掃除をしたいものです。便座だけでなく、床や洗面台周りも必ず拭くようにします。
自宅サロンでお客さんが立ち入るのは、施術室とトイレです。他の部屋はドアさえ閉めておけば散らかっていても実際的な問題はありません。見えるところだけでもきれいに、そして日用品はなるべくおかないでスッキリと整頓しておきましょう。

専用カルテ(問診表)

はじめてあなたの自宅サロンに来たお客さんが行うことはカルテの記入です。カルテとは一般に「不調や病状の確認をするもの」という認識があるかもしれませんが、実はそれ以外にも大事な役割があります。
それは「あなたの院(サロン)のスタンスを伝える」ということです。カルテで何を訊くか。何を伝えるか。カルテを書き記しながらお客さんはあなたの院がどういうところかを感じ取ることができます。あなたの院のスタンスをはじめに知ってもらうことは、先々のお付合いを円滑にするだけでなく、クレームの予防にも役立ちます。

カルテは既成品がありますし、ネットでも入手することもできるでしょう。でも本当は自分で作ることが一番です。少し難しいかもしれませんが「何を訊きたいのか」「何を伝えたいのか」を考えながらあなたのオリジナルのカルテを用意しましょう。
※自分で作れないという方はこちらにてご相談承ります。

清潔なタオル・着替え

残念なことですが、施術に使うタオルや着替えを使いまわす整体院やサロンがあるようです。「バレなければいい」ということかもしれませんが、これは絶対にやめましょう。
お客さんの中には香水や汗の臭いに敏感な人がいます。いくら見た目きれいでも、そういうところから必ずばれます。例えばれなくても感染症などのリスクもありますから、お客さんの素肌に触れるものは必ず都度洗濯を心がけましょう。

アクセス案内

自宅サロンまでの行き方はGoogleマップなどで基本的に大丈夫ですが、人によっては方向音痴な方や地図を見るのが苦手という方も少なくありません。「近くに来たのにわからない」とぐるぐる回らせてしまってはお客さんにも申し訳ないし、こちらもスケジュールが狂ってしまいます。看板を大きく出せる専用サロンと違って自宅サロンはわかりにくいことが多いはずです。ですから専用サロンよりも丁寧なアクセス案内が自宅サロンには必要です。

具体的には

  • 「①○○駅の△番出口を右に進む→②二つ目の信号を左に曲がる→③・・・・」というような説明文を送る。

  • 手書きのわかりやすいマップ(の画像データ)を事前に送る

  • 実際の道順を歩いてみた風景を動画に撮り、事前に送る

などなど、相手の立場に立った丁寧なアクセス案内を用意しておくことも自宅サロンの大事なポイントです。

自宅サロン開業にできればあった方が良いもの

プライベートと仕事の境界線をどこで引くかが、自宅サロン開業の思案のしどころですね

次に、必ずしも必須ではないが、できれば用意した方が良いものをいくつか紹介しましょう。ポイントは自宅の中にもちゃんとした「施術の場」を作るということです。

施術専用スペース

ご自宅に部屋の余裕があるなら、施術専用の部屋を確保するのが理想です。なるべく玄関に近い部屋がいいですね。
余っている部屋がないというのでしたら、予約の入った時だけ一室を施術スペースにするほかありません。その際には、施術に関係のない小物などは違う部屋に移動させておくなどして、できるだけ生活感を排除することが大事です。
「生活の空きスペース」ではなく「プロの仕事場」にお招きするという意識を持ちましょう。

着替えスペース

施術着に着替えてもらうのでしたら、着替えスペースは必要です。施術者が部屋を出た上で、施術室で着替えてもらうということでもいいです。
あるいは(他の家族の人が入ってこないように注意して)洗面室などで着替えてもらってもいいでしょう。その際は洗面室もできるだけ生活感を無くしておきましょう。

待合い・受付スペース

もし連続で施術することを想定しているなら待合スペースが必要です。なぜなら施術中に次の予約の方がいらっしゃることがあるからです。まさか外で待たせたり、他の人を施術している横で待たせるわけにもいきませんから、一日に複数の予約を取るのならば待合スペースは必須になります。

防音・防臭グッズ

自宅サロンで地味に落とし穴になるのが音と匂いです。お洒落な内装空間でうっとりリゾート気分でオイルマッサージを受けている時に、奥の台所からサンマを焼く匂いがしては台無しです。
生活臭というものは住んでいる当人にはわかりにくくて、外から来た人は敏感に感じるところが厄介です。ですからできる限り生活臭、そして生活音には注意しましょう。ご家族と同居なら、施術中の臭いと音について協力をお願いしておいた方がよいですね。
また匂いも音も風に乗って伝わりますから、家の中の風向きにも気を配ることも大事です。

自宅サロンに置かない方が良いもの

個人サロンにおいて注意すべきは「お客さんの長居」です

整体院やサロン作りのポイントは「くつろぎ」です。心がくつろいでこそ身体も緩み、施術が行いやすくなるからです。また空間を気に入ってもらうことで「また来よう」というリピートにもつながりやすくなります。
しかし反面、過度のくつろぎはトラブルのもとになります。あまりに心地よいと「ずっとそこに居たい」と長居を招きます。いくら親しいお客さん、気安いお客さんでも、お客さんはお客さんですから気を使います。それは目に見えない疲れとなり、次の施術、翌日の施術に悪影響を及ぼすこともあるのです。くつろぎのバランスがポイントなのですね。

Wi-Fiサービス

施術中のお客さんがスマホやタブレットを使うことはありませんから、Wi-Fiサービスは必要ありません。しかし施術中にスマホの充電をできるようにしてあげるのは親切で良いでしょう。

漫画・テレビ

待合スペースに暇つぶしの漫画を置くのは少し考えものです。特に連載漫画などでしたら「続きが気になるから、施術が終わったら読んでもいい?」と余計な長居を招くこともあります。また漫画の貸し借りでトラブルになることもあるかもしれません。置くならばパラパラッと読む週刊誌程度が良いでしょう。テレビも長居になることがあるので、置かない方が良いですね。

灰皿

タバコは長居の原因になる可能性があるだけでなく、部屋や衣服に匂いがつくという決定的な欠陥があります。ですから自宅サロンでは完全禁煙にすべきでしょう。
もしあなたがスモーカーであるならば、少なくとも仕事前は吸わないこと。また施術室でも絶対に吸わないように徹底します。プロの自覚というものですね。

スイーツ、お茶菓子

たまたま頂き物のスイーツなどがあれば「よければ一緒に食べませんか」と提供したくなることもあるでしょうが、極力やめましょう。「スイーツを出したら気に入ってもらえてまた来てもらえるかも」という期待(計算?)も禁物です。一度出すとまた次回も期待され、いつのまにか「出すのが当然のサービス」になってしまうかもしれません。
どうしても差し上げたいスイーツなどがあれば、持ち帰り用に袋に入れてプレゼントしましょう。それでも十分喜んでもらえます。

ペット

毎日一緒に住んでいる飼い主は気が付きにくいものですが、ペットの臭いや毛などは、外から来た人にはすぐにわかるものです。もちろん動物が苦手な人はそれだけで「来るんじゃなかった」と思いますし、場合によっては動物アレルギーでトラブルになることもあるでしょう。
もし犬や猫などを飼っている家で自宅サロンを開業するならば、最低限施術スペースには普段からペットを入れないようにします。また予約の時点でペットを飼っていることを事前にお伝えしておくことも大事です。トラブルになってからでは遅いですから。
裏技としては、敢えてペットがいる自宅サロンとして売り出すことも一つです。猫を飼っている人ならばサロンに猫がいても気にならないかもしれないし、むしろ喜んでもらえるかもしれませんね。要はお客さんの事前了承があればよいのです。

気を付けたい!自宅サロン経営の落とし穴

人間関係のもつれが一番怖い

恋愛感情には最大限の注意を

自宅サロン経営で最も気を付けるべきことがあります。それは人間関係のトラブルです。
もしあなたが一人暮らしの自宅サロンにお客さんを呼ぶならば、その間は2人きりになります。例えばその状況でお客さんがあなたに恋愛感情などを抱いてしまうと、距離間のとり方がとても難しくなります。対処を間違って関係がこじれ、思わぬトラブルを招くこともあるかもしれません。密室でからだに触れる整体にはそのリスクが常につきまといます。
同性ならば大丈夫とも言い切れない時代です。最近は特にそういうことを隠さない時代になっていますから、異性ほどではないにしても、気を付けておくにこしたことはありません。「ちょっとおかしいな」と思ったら接し方や距離感に注意を払いましょう。

施術事故、クレームにも注意を

同じく密室で怖いのはクレームや施術事故です。問題ない施術をしたと思っていても、お客さんが「施術のせいで体調がおかしくなった」と訴えてきたら対処が難しくなります。特にこちらが悪いと決めつけ、話を聴いてくれないお客さんに当たってしまったら大変です。
スタッフが複数人いる整体院ならば共同で対応したり、ちゃんと施術をしたことを証言してもらえますが、個人サロンではそうもいきません。だからこそより一層の注意を払うべきなのです。

自宅サロンならではのリスク

恋愛感情のもつれ、施術のトラブル、クレームなどが起こった時、自宅サロンは決定的に不利な状況に追い込まれます。なぜならトラブル相手であるお客さんにあなたの自宅が知られているからです。相手はいつでも文句を言いに来れますし、そのつど対応をしなくてはなりません。嫌がらせやストーカー行為をする人もいるかもしれません。そうなると仕事も私生活も大きなストレスを抱えて過ごすことになります。
こういったトラブルが起こさないようにするには、以下のようにあらかじめ適切な対策をしておくことと、相手を見極める眼力をつけていくことが大事です。

◆対策1 なるべく密室にしない工夫をする
完全個室、完全プライベート空間と言えば聞こえはいいですが、対人関係のトラブルを招きやすいという側面もあります。ですから「すき間」を作っておくことが大事です。
例えば玄関や施術室のドアにストッパーをかけて、すき間を開けておくのもおすすめです。「外とつながっている感」が多少なりともトラブルを未然に防ぐ働きをすることもあります。
また初めて来院するお客さんにとっても、ドアにすき間があると「何かあったら逃げられる」という安心感を持つこともできます。あなたにとっても、万が一お客さんが暴力行為などに出た時にすぐに逃げ出せるという安心感があります。
すき間を確保し、完全密室にしないことに意味があるのです。

◆対策2 カルテと事前確認、仲裁者
不幸にもトラブルになった時には、自分の仕事の正当性を証明できるかどうかがポイントとなります。カルテはその証拠として無視できないアイテムです。どんな状態だったか。どんな施術をしたか。その結果どういう変化があったか。なるべく細かく書き留めていくことで、いざという時に大きな助けとなります。
また初回カウンセリングの際に、サロンのスタンスや責任範囲について説明し同意を得ておくことが理想的です。事前確認をちゃんとしておくことで、相手の理不尽なクレームを取り下げてもらうこともできます。
さらに念を入れるなら、仲裁者のあてをつけておきましょう。当事者同士の話し合いではどうしようもないことも、第3者に入ってもらうことでうまくまとまりやすいものです。「なにかあった時はお願いね」という仲裁者、あるいは相談相手の目星をつけておきましょう。

◆対策3 信頼できる人、その紹介だけを受け付ける
友人限定、紹介制のサロンにするのも一つの方法です。「同性は誰でもいいけれど、異性は友人とその家族に限る」というやり方もあります。
世の中のほとんどの人は分別のある善良な人たちですが、中にごく一部面倒な人がいます。そういう人に運悪く当たるというリスクを下げるために、友人限定や紹介限定にするのです。
もちろん限定をつけることで集客にとってはマイナスになりますが、初めての自宅サロン開業の時には、まず慣れるまで限定を付けてもいいかもしれません。一度ひどいトラブルに見舞われると、もうこの仕事が嫌になったりしますから慎重に行きましょう。

最後に。自宅サロンの将来設計について

以上のように自宅サロンはちゃんとした院やサロンを構えるよりも開業ハードルが低いという大きなメリットがある反面、お客さんとの距離感や自分の生活との切り分けという難しさがあります。また万が一のお客さんとのトラブルの際の対処を自力でしなくてはならないというのもデメリットです。この点よく考え、対策をしたうえで開業することが大切です。
しかしちゃんと経営すれば、自宅サロンはメリットの方がはるかに大きいものです。出張整体のように移動時間が必要ない。専門整体院やサロンのような家賃も発生しない。施術料はほとんどそのまま利益になりますから、比較的余裕のある経営が実現できます。それは将来の新しい展開に向けての資金づくりにも役立つでしょう。

このような理由で、今から独立開業したいという人には、私は自宅サロンを一押します。よほど財力がある。よほど大きな経営構想がある。そういう人ならば整体院やサロンの開業もいいですが、初めは小さく腕を磨きながら、ファンを増やしていくというほうが失敗も小さく、万が一失敗してもやり直しがきくというものです。

自宅サロンで色々な人の身体に触れ様々な話をしながら、自分はどんな整体師になっていきたいのかをじっくり考える。自宅サロンでそこから始めてみてはいかがでしょうか。

整体院開業・経営アカデミー
三宅弘晃



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