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バンドってひとりじゃ組めないんだよ


かっこいいあの人みたいに心の底の気持ちを歌にしたい。
可愛げなあの人みたいにギターを奏でたい。
イカしたあの人みたいにベースを弾きたい。
大好きなあの人みたいにドラムを叩きたい。

憧れる人たちがいる側に自分も立ってみたい。


あこがれの気持ちと多少のモテたいという心理で、ロックに魅力された人間は今度はそちら側にまわりたくなり、バンドを組むのだろう。

でもロックに生かされていても、バンドを組もうかなんて悩んだことすらない人間もいる。


だってバンドってひとりじゃできないから。



バンドを組むって大体高校の文化祭がキッカケ。
文化祭限定とはいえ、当時バンドを組んでいた同級生がたくさんいたことにかなり驚いた。
その驚きの矛先はみんな音楽好きなんだ、に対してではなくみんなって友達たくさんいるんだ、に対して。
大人しそうだと思っていた子も、仲がいいイメージがなかった3人も、みんな楽しそうにステージに立つ。



バンド好きなイメージがある子は全員バンドを組んでいた。
私の人生に音楽を教えてくれたあの子も、ツイッターで繋がってるだけの同級生も。

ロックはいつもそばにいてくれるけど、必ずしも人と人を繋げてくれるわけではないんだなと感じた。
自分はバンドを組むような人間ではなくて、ただのロック好きの人なんだと痛感した。


何でだろうね、生まれてからずっとこう。

別にいじめられた時期は一度もないし、中学高校どのクラスでも移動教室やお昼を共にする友達もできた。
たぶん人間関係に困ってるなんて誰にも思われた事ない気がする。



でもいつもそれだけの関係で留まってきた。
もっと仲良くしたい、遊びたいと思っていなかったわけではない。
なんでだろう、みんなそれだけの関係で終わってきた。


だから文化祭も一緒にまわる子はいなかった。
移動教室を共にする子は、部活の友達と過ごす。
部活を辞めていた私は毎年ひとり。
その日だけライブハウスと化す音楽室に一日中いて、ひとりでいることを誤魔化していた。
タイムテーブルが終了し体育館で文化祭の締めが行われるまでの時間は、トイレで暇を潰した。
そうすることしかできない自分の惨めさに悲しくなった。
みんなにとって私はただのクラスメイトで、もっと大事な友達がたくさんいる。
たぶん全員がそう思っていた。
別にそれは悪いことじゃないけれど、私が誰かの1番になることはない事実が胸を突き刺す。



いつの間にか時間が来て、まだ集合していなかったことに叱られたりもした。
いろんな感情で涙が出たけれど、暗い体育館の中誰にも見られてないはず。



沖縄とそこから近い島へ行く高校の修学旅行は、いつもお昼を一緒に食べるクラスの子と過ごした。
4泊5日というかなり長めの日程で、マリンスポーツや室内で工作体験したり、好きなものを自分で選んで過ごす日があった。
クラス関係なく、誰と過ごしてもいい日。
部活の友達、クラスの友達、カップルで過ごす子も多かった。

2人ペアでのレクが基本なせいでひとりでやり過ごせないし、さすがに島で一日中トイレに篭るなんて出来るわけがない。

修学旅行前に、明るいけど独特な性格で友達がさほど多そうじゃない子が一緒にレクをする人をツイッターで探しているのを見つけた。

かなり悩んだ。
あんまり話したこともないこの子に連絡をした時点で、友達がいないことを自分で自分にわからしめることになる。


その子の呟きを同級生はみんな見ている。
そんな子と一緒にいたくなかったわけではない。
でも当日その子と過ごした私も、一緒過ごす友達がいなかったことが事実として浮き彫りになることが情けなかった。


結局その子と過ごしたわけだけれど、大勢で船に乗り海を眺めるツアーを選んだから2人でやる作業なんてものもなく、何とかなった。
あまり話したこともないただの同級生から急にDMが来て、迷惑だっただろうな。
でももしその子がツイートしなかったら、あの日私はどうしていたのか。
まさか自分でもその子に連絡するだなんて思ってもいなかったけれど。
楽しそうな素振りしか見せず過ごしてくれたこと、あの子には本当に感謝している。




いろんな節目で自分の人間関係の狭さ、浅さを痛感する。
今も会うどころか連絡を取る小中学校高校の同級生なんてひとりもいない。
私が今どこに住んで何をして生きているか、知っているどころか考える人は誰もいないだろう。


クラス替えをしたら、卒業したら、私にもみんなのような友達ができるはずだと言い聞かせて生きてきた。
毎年言い聞かせていたら大学生になっていた。

ここまでくると私に問題があるのだろうかと考えたけれど、大学ではいい友達に巡り会えた。
私が思い描いていた、ともだち。


じゃあ今までは何だったんだろうな。
対人運がないだけだったのか。
やっぱり私に問題があったのかな。


もう5.6年以上前のこと。
今を楽しく生きていけている分、その時のことを悩む必要はないけれど解せないことはたくさんあって。
私の青春は空っぽのようなもの。
当時のいろんな出来事が私を強くしていることは間違いないけれど、もっとこうだったら、と思うことの方が多い。

どうしたら良かったのかな。
中学高校の話を振られた時、いつも冗談と自虐で乗り切るけれど毎回鼻の奥がツンとする。


いじめられてた過去を持っていたとしても、たった1人この先もずっと付き合える友人がいる方がずいぶん幸せなんじゃないかと、真面目に考えた事もある。
もちろんそういう人には私にはわからない葛藤と悩みがあることは承知しているけれど、誰の記憶にもいないしこの先登場する事もない、抜け落ちたように過ごして友達と言える人が本当に1人もいないのも結構つらいんだよ。



やっぱり私はバンドを組むような人間にはなれない。

ロックは私を生かしてくれるけれど、生きる意味がわからなかった私にはその立場に回れる日はこないと思う。


ロックはそばにいるようで実は遠い存在だ。
本当は私なんかが好きになったらいけなかったのかもしれない。





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