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原点回帰



この下書きを書き始めた今日は、甲子園決勝の日。
この時期になると毎年思う、結果がどう転んでも涙が出るほど何かに熱中している青春ってきっと一生忘れられないんだろうな。


どうせプロにはならない、早く帰って趣味に徹した方が幸せ、受験勉強に充てる方が自分のため。
昔から捻くれた考えをしていたから、高校の部活は1番楽な茶道部を選んだし、行かなさすぎてそれさえクビになった。

この歳になってやっと少し後悔している。
自分が無駄だと思っていたあの時間と苦楽を共にした友達は、彼らにとって今後の人生を大きく支えるものになるんだろうな。
幾つも年下の子が白球を全力で追う姿を見ると、自分が捨ててきた青春を取り戻させてくれる気分になる。



そんな私でも全力になれるライブハウス。
この文章を書いてて思ったけれど、きっと私はライブハウスに行くことで、無意識的に捨ててきた青春を取り戻そうとしているのかもしれない。



私なりの全力の青春が始まったのはたしか高一の時だった。
中学の頃は流行っていたボカロも聴きたいとも思わなかったし、好きな歌手を聴かれても迷うどころかその存在がいなかった。
サブスクのない時代、CDショップも行かないしYoutubeも見ない、音楽がある日常を知らないから別にそれが退屈とも思っていなかった。


高校入学、今思うとロック好きなあの子と出会った事が私の人生を変えた。
[Champagne]の頃から川上洋平を愛してやまない彼女がその熱を語る姿を見て、人をそんなに魅了するバンドとはどんなものなのか気になり、おすすめの曲やバンドをたくさん教えてもらい初めてYoutubeで曲を漁った。

圧倒された。

楽曲とはメロディと歌詞 音を奏でている楽器はあくまでバック という知識のなさから生まれる考えが覆された。
ギターを、ベースを、ドラムを奏でる人によって音は全然違うし、同じバンドなんて一つも存在しないことを実感した。
同じバンドでも、ハードやパンクロックにもバラードにもなり得ると知った。
歌詞のない間は各楽器のソロの時間、暇な間奏なんて存在しないと思った。


いろんなバンドを聴き漁り、イカついメロディギター、寄り添う優しい音、THE ORAL CIGARETTESのそのギャップにやられた。
一気に虜になった。
全部の曲を聴いた。
私の知らない過去も新情報も全部調べた。
生活の一部と化した。

MVを何度も見て、1番魅了されたエイミー。
ほとんど無彩色に近い映像だと全然気づかないくらい音による彩りで溢れていた。
あの声も歌詞もメロディもハモリもギターラインもベース音もリズムも全部に心を持っていかれた。



大学入学、私の学部は4年間呼ばれるあだ名を1人ずつ先輩に決められるという謎の伝統がある。
その場でバンド熱を語る気力もなく、趣味は音楽を聴く事というありきたりな自己紹介をし、好きなバンドと曲を聞かれるとオーラルのエイミーと答えた。
それから大学の先輩後輩、同級生にも今でもエイミーと呼ばれている自分。
付けられた当時とっても嬉しかった。
自分が大好きな曲の一部になれた気がした。

やまたくも常にギターを持ち、ロックミュージックをうたっていたあの頃の4人に魅了され音楽というものを知った私は、彼らがフェーズ2に入り方向性に少し変化が現れた頃からめっぽう聴かなくなってしまった。
大好きだと心から言えるものは別のバンドになってしまった。
それでも私に音楽を与えて、人生を変えた曲はエイミーだ。
もはや私自身になった曲だ。




2023.3.14

そんな私の人生を変えたオーラルと、今の私を作り憧れともなっているハルカミライの対バン。
それもまさかの名古屋で見れる。
発表された時テンションが上がるどころではなくもはや冷静、行かないという選択肢はなかった。
人生を変えた2つのバンドが、共に最高の夜をぶつけてくれると確信していた。


ZeppNagoyaの顔とも言えるボードにこの2バンドの名前が並ぶなんて考えたこともなかったし、感慨深く、写真に収めて早々と去る人の中あんなに見つめていたのは自分くらいだった。

オーラルの世界観溢れたステージ上で大好きなハルカミライが唄う姿、たまらなく幸せな光景。
セトリは申し分ないいつもの全力疾走ハルカミライ。
後半戦にはウルトラマリンにようやく聴けた光インザファミリー、からの名曲アストロビスタ。


眠れない夜に私



いつものように大好きなフレーズが4回続く2:42。



忘れないで欲しい
私も思ってるよ


そう口ずさもうと思っていたのに、
それしかないと当たり前に思っていたのに。


エイミー ここで今二人、

エイミー/THE ORAL CIGARETTES



聴こえてきた予想だにもしなかったフレーズ。
衝撃が脳を走る。
ギターもベースもドラムも消え、憧れる彼の歌だけが聴こえるように感じたあの瞬間、理解出来ぬまま涙だけが出てきた。

大好きなバンドが大好きな曲の一部に、私の大切な曲のフレーズをのせた。
やっとそれを理解できた頃には曲は終わっていたけれど、あの時のステージの4人の姿は写真みたいに切り取られ今でも脳にこびりついている。


自分にとってこの上ない重大な出来事が起こったあの感覚はたぶんもう味わうことはないと思う。
言葉にするのも難しいあの感覚。
もはや自分であるとさえ思っているエイミーを、憧れている人が口ずさんだ。
まるまる一曲歌うのではなく、大好きな曲の合間に不意に口ずさんだ。
いや私のために口ずさんだとすら感じてしまう。



私はあの日にあの場に行くべき人間だったのだ。
前日のMCがすごく盛り上がったと耳にし、初日に行けばよかったと後悔する必要はなかったのだ。
私こそ、オーラルのツアーでハルカミライがアストロビスタの合間にエイミーを口ずさむのを聴くべき人だった。

あの日あのフロアの中で、自分が1番衝撃を受け幸せになったと言える。
やっぱり私のために歌ったのだと思う。
自惚れんなとも言われそうだが、絶対にそうだと思わせて欲しい。
それほど大切で忘れられない数秒の出来事だった。


軽々しく生きててよかったと口にしたくないタイプだが、あの日は心から思った。
人生を変えたバンドと、今の人生を支えているバンドと、自分が同じ空間にいた、あの日を超える感情はもう得られることはないと思う。
私の人生に音楽が加わった原点を思い出した夜
今までいろんなライブに行ったけれど、この夜こそ私の原点かつ頂点だったんだな。


この世のバンドに魅せられている人は、それぞれ思い入れのある曲やライブがあるんだろう。
それらにみんな人生を救われて、生かされているなんて大袈裟ではないんだと思う。

あーやっぱり音楽ってすごい、
見えない力って本当にあるもんだな。
私に音楽を教えてくれたあの子は今何してるのかも知らないけれど、きっと強く生きているんだろうな。
人生に永遠の彩りをくれたこと、心から感謝してるよ〜〜


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